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「そういえば会社の近くに家借りるとか言ってたけど、どうなったの?」
私は電車の中で彼に訊ねてみる。
以前彼は言っていた。
『ゆくゆくは会社の近くに家を借りるつもりだから、その時は一緒に住もう』と。
すると途端に渋い顔をする彼。
「今、実家の固定資産税も払ってるんだぜ。他に借りたら支払いが二重になるからなー。」
その続きは聞かずとも分かる。
“二重に払うのが損だから、新しく家借りたくない”
つまり同棲するつもりはない、と脳内変換された。
この人は一生実家から出ないつもりなんだろうか…。
私は彼の言葉があったから上京してきたのに。
地元を捨てて、覚悟を決めてー。
固定資産税?なんだそれ。
私との同棲は固定資産税なんかに負けるのか。
すうっと心が冷えていくのを感じた。
この人はずっとケチなまま。
いつも通りやるやる詐欺の詐欺師。
行こうと言ってた遠出デート。
払うと言っていた私のマンション代。
一緒に住もうと言ってた愛の巣。
彼の言葉は半分以上が嘘だった。
乱れた感情のまま、その日はまだ日が高かったのでデートを続けていた。
着いた先は脱出ゲームが集まったビル。
さっきの脱出ゲームが面白かったのと、脱出出来なかった悔しさからこのビルに来たのだ。
結局ゲームはやらずにカフェでお茶をするだけになったけれど…。
詳しい理由は忘れたが、おそらく1ゲームの料金がそこそこするから断念したんだろう。
私も少し疲れていたので、休憩したかった。
そのお店はファーストフード店のようにレジに行って注文するスタイルだった。
その時も彼は自分が食べたいものを一つだけ買って、一人で勝手にバクバクと私の目の前で食べ続けていた。
半分ほど食べ終わった頃「少しちょうだい」と言ったら「早く言えよ。無理して食べてたのに。」と彼。
(いや、もうどこからつっこんだらいいか分からないよ…)
これを読んでいるあなたは友達といる時に、一人でふらっとお店に入って一人だけ注文して飲み食いしますか?
おそらく殆どの日本国民がしない。
世界の人だってしない。
家族であっても、一緒に出かけたなら一緒にお店を決めて一緒に食事をする。
それが普通だと思っていた。
彼は珍人類なのか。それとも人間ですらないのか…。
“彼氏さんは優しい人ですね”
いつだったか彼とのことを占い師に観てもらった事があったな。
その優しさというものを、いつの日からか感じなくなってしまった。
彼と付き合って二年半。
ついにこの日、私の心が死亡した。