『おや、昨日の方ですか? その態勢は戦いたいと捉えてよろしいですかね?』
ワンと視線の先でロイ達は武器に手をかけていた。
こちらはいつでも闘える。
いつでもかかって来いと。
『だが、もうこの船に用はありませんがそれでも戦いますか?』
ワンの背中から生える棘の蔦が君悪く踊っているように見える。
ワンの実力は相当なものだろう。
だが、無惨にも倒れた兵士や冒険者のことを思うと、ロイは今にも
鉛の弾をぶち込みたいところだった。
その一方、感情だけで動いては仲間まで危険にさらすことになる。
『ロイ、お前のやりたいようにやれ。』
耳打ちした声の主はガイだった。
ガイはロイが腰の銃に手をかけている上から強く手を握った。
ガイが手を離し、自らの腰の剣を抜くとロイの横に立つ。
ロイの口からこぼれた笑みは、仲間の信頼と絆をより一層輝かせた。
『いくぜ、ワン‼』
腰の銃を貫き、銃口をワンに向け構える。
ワンが指を鳴らすと、背中から生えた蔦が甲板に落ちた。
蔦は背中から生えていたのではなかった。
蔦は一つの集合体のようで、先ほどはワンの背中にくっついていたようだ。
この蔦の塊。たしか"雷葉"とか言ってたな。
この蔦の恐ろしさは先ほど目の前で起きた惨殺劇が脳裏に焼きついているため、その光景は鮮明に蘇る。
ワンがてを天高く振り上げると、雷葉がその体というか蔦をこちらに伸ばしてきた。
もし、雷葉のもつ鋭利な棘の生えたそれに触れれば、無事ではすまないだろう。
しかも、先ほどでは気づかなかったが蔦は意外にも速い速度で伸びてくる。
『きてくれ、ランプの精‼』
リネットから光が溢れると、ロイ達の前にいかにも何か出てきそうなランプが現れ、もくもくとした煙に包まれた緑の男が立ちはだかる。
緑の男は蔦を受け止めると、そのまま鍛えぬかれた腕でがっしりと掴んで放さない。
『エイミングショット‼』
ランプの精の陰からロイが銃弾を放つ。
ワンに向けて放った銃弾は立ちはだかったクィナに両断されてしまう。
クィナは巨大な鳥を出現させると、ワンとともに飛び乗る。
いつの間にか消えた雷葉に代わり、甲板の周りから巨大な脚が無数に伸びている。
脚に気を取られた隙にクィナ達の乗る鳥は、はるか上空まで浮上していた。
『血の臭いに誘われたみたいだ。こいつは小島並みの巨大な蛸 海嘯獣テンタクルス!』
リネットの指示もあり、甲板後方の脱出用ボートまで走った。
だが、無常にも連絡船サンメアリ号は真っ二つに折れ、海に引きづり込まれ始めた。
傾いた甲板を転がるロイ達の先に開いた巨大な口の中に、兵士や冒険者の死体が樽やら木片なんかと一緒に呑み込まれていく。
『グリフォン‼』
リネットの召喚した鷲の頭と獅子の体を持つ亜獣グリフォンはロイ達を背に乗せると羽をはばたかせ船から脱出する。
沈没していく船の支柱がへし折れ、グリフォンの進路の方に倒れてくる。
回避の術なく、支柱が直撃したグリフォンはロイ達諸共海に自由降下していった。
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