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Roy Ariel Smyth(ロイ・アリエル・スミス)も志願者の一人だった。
志願した者達を各地から乗せては、別の地へと更なる志願者を求め、船は進む。
志願する者にも条件のようなものが存在した。
志願するにあたり
手続きなく諸島外に出ないこと
成果を上げた際には、軍に報告の義務を負うこと(それによる報酬あり)
たとえ、絶命しても遺族側からの責任対象が軍へ向かないこと
旅立ちの都 ランドリート
フローリア諸島の外れにある島、ランドリード。
それと同じ名を持つ『ランドリードの都』は、諸島外からの船を受け入れている唯一の港であるボークボーデン港を中心として発展した都だ。
長い船旅を終え、漸くランドリードの都に辿りついた ロイは、長い船旅を終え、開放感に浸っていた。
船内の冒険者達が、ぞろぞろと港に降り、あっという間に人ごみの山と化した。
辺りを見渡すとロイよりも遥かに身体つきのいい大男や、やたら高級そうな装備で整えたものや、意外にもちらほら女の冒険者の姿もみえた。
そんな中、皆の視線が一点の方へ向いているのに気づき、ロイも同じ方向に体を向ける。
港沿いの高台にフローリアで活動しているアラセマ軍が集まっているのが見える。
すると、集団を引き連れ高台のおおよそ真ん中に男が立ち、話始めた。
大きく通る声で喋る男の名はラッシュであり、ランドリート島の南地区の大尉職を務める凄腕のようだ。
そのラッシュらからの軽い挨拶が済み、本題に入りかけた時だった。
ランドリートの都に耳を裂くような激しいサイレンが鳴り響く。
冒険者達にもざわめきが起こる。
『見ろ‼‼』冒険者集団の中のどこからか叫び声があがる。
どこを見ればいいのか見当のつかないロイだったが、辺りがラッシュ大尉達アラセマ軍のいる高台の上空を見ていることに気づいた。
都から北の方向の上空には、飛行種の亜獣が複数南下してきているのが見えた。
いきなりの亜獣の出現に冒険者達はただ呆然と立ち尽くすほかなかった。
ラッシュ大尉が大声で叫ぶ。
「この島の最北端にラースナウアという港町がある。まずは、そこまで行ってもらうことにする。」
「主に道は2本。」とおもむろに指を掲げた。
「一つは東から平原を通り、岩石地帯を抜け、海を渡るルート。二つ目は西の山々を越えて行くルートだ。」
「ルートは各々自由でかまわんが、半年以内に到着しないものには志願手続きを破棄し、死したものと判断する。」
手続きの破棄ということは、活動資金の援助が得られない他、船への乗船、ギルドへの参加も不可能となる。
それだけ言うと、ガッツポーズをして、兵を率いて町中へと向かって行った。
慌てた補佐官が補足説明をしたが、要は半年以内にラーナウアに到着すればいいということを堅苦しくたんたんと話された。
話が終わると冒険者達は飛行種を近くで一目見ようと都内に行くものや、いち早く宿屋に行くもの、旅の装備を整えに市場へ向かうものもいた。
「君はロイ君?」
立ち尽くしていたロイの肩をたたくものがいた。
振り返ると、冒険家顔負け男がロイの後ろに立っていた。
ロイは、軽く頷いた。
頷いたのを確認すると男が話始めた。
「私はオリオール。君のお父さんに護衛の依頼を請けたんだ。しばらくの間だけど、護衛させてもらうよ。よろしく!」
一瞬、頭の中が混乱したが、厄介な父親のことだ。
オリオールと名乗るこの男の言ってることは本当のことだろう。
「俺は同じ素人に守られる筋合いはないし、組む気もまったくないね。それに俺には、3ヶ月先に島に来てる故郷の仲間が都で待ってるはずだからな。」
手であしらうフリをして見せると、背を向け、その場を去ろうとした。
「言っとくが、私は素人じゃない。ランドリート島には何度も来てる。」
後ろから、驚くべき答えが帰ってきたので足を止める。
「じゃあ、なんで志願者船に乗ってたんだ。分かったぞ、お前。船乗りだろ?船乗りに護衛を任されるなんて、我ながら可哀想だ。」
興奮気味のロイは淡々と語る。
「私は船乗りではないよ。不法乗船をしただけさ。」
自らの発言で笑い出すオリオールであったが、ロイからすれば笑えない。
目の前に罪人がいて、冒険者たるものが見過ごせるわけがない。
「ふざけんな‼ でも、調度いい。周りの奴らも、もう先に行ったみたいだしよ。長い間、船で気分悪いんだよ。罪人船乗り野郎をとっとと捕まえて、アラセマ軍に突き出してやる。」
ロイはそのまま戦闘体制をとり、左足のバネを利用し、一気にオリオールの懐に入り、拳を打つ。
"さすがにあの人の息子ともなると、動きが違う"
だが、オリオールはロイの拳を外に払いのけ、さらに突き返した。
ロイは体制を素早く整えると、再びオリオールめがけ突っ込み、顔に向けて拳を打つ。
ヒットしたかに見えた一撃は空を裂き、そこにオリオールの姿はなかった。
俊敏は動きで回避したオリオールは、ロイの背後に回っていた。
「地烈!」
慌てて振り返ったロイの腹にオリオールの拳が刺さった。
ロイは、呻き声をあげながら、力なく、崩れ落ちた。
「しまった‼ ごめんよ。力を入れすぎたようだ。大丈夫かい?」
オリオールの顔が段々かすれていき、やがてロイの視界は真っ白になった。
ハッと目を覚ますと、ロイは酒場だろう場所の椅子に寝かされていた。
横には心配そうに顔を覗きこむオリオールと、肉を頬張るっている故郷の仲間の一人、Guy Gerald Wood(ガイ ジェラルド ウッド)がいた。
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