「…さっきから、うるさいぞ。黙れ。」
エエ~。
文句を言いに来ただけか!?
しかし、ほかに頼む人もいない。
「すみませんが、この尿瓶を私にはめてくださいませんか?見ず知らずの方にこんなことをお願いするのも申し訳ないのですが。どうも体が思うように動きませんので。」
必死な俺は、一気に早口でまくし立てた。
男がかなり嫌そうな顔をしたのがわかった。
「お、お願いします…もう…限…界…」
本当に限界なのだ。
もう、あきらめようかな…
そう思ったとき、男は、ふうと溜息をつき、尿瓶を手に取った。
よかった…!
男は慣れない手つきで、尿瓶を装着してくれた。
「本当にありがとうございます。助かりました。このご恩は一生忘れません。」
放尿しながら、男の顔を見た。
む?
この男、どこかで見たことがあるような…?
聖衣も付けている。
聖闘士なのか。
「私は、ケフェウス座のダイダロスと申します。今は、アンドロメダ島で、後進の指導をしています。あなたも、聖闘士ですね?よかったら、お名前を…」
男が、ハッとしたように、俺の顔を見た。
やはり見たことがある。
この聖衣…フェニックス?
まさか…
「君は、鳳凰座の聖闘士なのか?瞬の兄ちゃんの…」
男が、手に俺の尿入り尿瓶を抱えたまま、俺のもとに跪く。
「あなたはアンドロメダ座の瞬の師なのですか。」
男の口調が丁寧語に変わった。
「いかにもそうだが。」
「そうでしたか…!俺はフェニックスの一輝。瞬の兄です。今まで、瞬を育ててくださり、ありがとうございました。瞬は昔と変わらぬ清らかな心のまま、強く、さらに美しくなって俺のもとへ帰ってきました。」
一輝が目に涙を浮かべながら俺に礼をすると、尿瓶の中の尿がちゃぷちゃぷと揺れた。
あぶないって!
こぼれるから!
てゆうか、美しくとか言ったか?