年が明け,誕生日が来て私は6歳になった。
いろんな子に「もうすぐ誕生日やねん!」と言っていたこともあり
誕生日当日は何人かの友達が家までプレゼントを持ってきてくれた。
中には「弟くんと使って」と,弟の分まであったりもした。
それらを母は取り上げ
「なんで余計なことしゃべるんや! あれほど余計なこと言うなって言ったやろ!」
と怒鳴った。
誕生日を言うことは母にとっては余計なことだったのか?
そうぼんやりと思った。
「これは誰にもらってん」と訊かれ,答えられずにいると母は友達の家に一軒ずつ電話をかけ始めた。
「すみません,うちの子がプレゼントを催促したみたいで・・・」
小さな子どもだったけれど,催促の意味は何となくわかった。
違う,サイソクなんかしてない。
そう言っても信じてもらえなかった。
母が電話で話をしている間に,きっと電話を切ったあとも「これは誰からや」と
訊かれるに違いないと予測し,寝室に隠れ,ふすまの戸を反対側から手で押さえつけた。
母が入ってこられないように。
わずか6歳の女の子が大人にかなうわけないってことは充分わかっていた。
それでも,そうせずにいられなかった。
些細な反抗だったのかもしれない。
そのあとの出来事は,母に何かをされたのかも,プレゼントはどうなったのかも,
嘘みたいに何も覚えていない。