20代後半のころ、外国人の多い職場にいた
私は海外育ちなので英語は普通に話せる
外国人たちはとても陽気で、仕事都帰りに恵比寿のアイリッシュパブでよく飲んだ
最高に楽しく懐かしい思い出だ
その中に、一人忘れることができない男性がいる マーカスだ
マーカスと初めて会った日のことを今も覚えている
その日マーカスはインタビュー(面談)で会社にやってきた
彼が扉を開けてオフィスに入ってきた瞬間作業をしていた私の手はとまった
「あの人だれ?」
すぐに同僚に聞く
同僚はにやっと笑って彼の履歴書を見せてくれた
外見はかっこいいとは程遠い もっとスタイルが良くてグッドルッキングな外国人男性は社内にたくさんいたけど、優しそうで愛らしいその笑顔に私はノックアウトされた
私があまりにも愛想よく対応するので初対面の彼は少しとまどっていた
彼は採用となり、それから私たちの2年間のストーリーが始まる
彼へのメールや彼宛の書類にはいつも可愛いイラストを付けたり、粋なメッセージをそえた
会社の飲み会でも彼の隣は誰にも譲らなかった
でも、彼はいつも「僕は結婚してるんだ、君を受け入れることはできないよ」とはぐらかされた
正直、それも楽しかった
私は別に彼と付き合ったり、結婚したりすることを望んだわけじゃない
私にも当時彼氏がいたし、なにかスペシャルな関係を求めたわけじゃなかった
手に入りそうで手に入らない、そんな距離が一番楽しい
恵比寿のインド料理店のトイレで私たちは初めてキスをした
そこまで1年ぐらいかかったかもしれない
「もう自分を抑えられない。好きだ」英語でそう言われた気がする
ずっと欲しかったものを手に入れた、そんな達成感があった
やがて私は結婚がきまり、そのことを知った彼は少し驚いた顔をしてそれからおめでとうといった
同僚が開いてくれた独身最後のパーティにも参加してくれた
ベッドで彼が最後に言った言葉は「君はとても美しい。そして、君はそれを知っている。だから、かなわない」
彼のことを思い出すことはほぼない
でもこうやって思い出してみると私が一番輝いていた時代を知っている人かもしれないと思った
若くてきれいで自信に満ち溢れていて、何があってもへこたれることがない、無限の力があると思えた
どんな男でも手に入ると思えた