私にはめちゃめちゃ美人の親友がいる
彼女とは中高一貫校で出会った
舞衣子は真っ白な肌と天然パーマの美少女だった
入学式の日にはすでにほかのクラスの男女が舞衣子を見るために列を作った
舞衣子と出会った人はみんな舞衣子を好きになった
私はそれまでわりと自分をかわいいと思ってきたけど、舞衣子に対しては周囲の対応が全然違うので本当の美人ってこんな扱いを受けるんだと、、、と驚いた
話したこともない先輩が告白したりして、話したこともないのに好きってなんだろうと思った
街行く学生やおじさんが勝手に写真を撮ったりした
舞衣子は可愛いだけのバカな女ではなかった
海外生活が長く自分の意見をしっかり持っていたし、聡明で明るく話し上手だった
私が人生で誰かに嫉妬したのは舞衣子だけだ
ただ可愛いだけならこんなに嫉妬していなかったと思う
私のことを可愛がってくれた男子も結局みんな舞衣子を好きだった
舞衣子は学校のアイドル的存在だった先輩と付き合っていた
でも、私は知っている
舞衣子が好きなのは中１からずっと同じクラスの藤井くんだ
藤井くんは頭の回転が速く、魅力的な男の子だった
藤井くんは誰にでも優しかったけど、ほかの男子と同じように舞衣子を好きにはならなかった
それがどうしてかわからない
舞衣子がモテるからあえて避けていたのか、はたまた単にタイプではなかったのか
クラスが変わっていつのころからか舞衣子は藤井くんの話をしなくなったけど、私は舞衣子が好きだったたった一人の人は藤井くんしかいないと今も思っている
あんなとてつもない美人でも思いがかなわないことがある
そしてもう一つ不思議なことが起きた
中3のときにある有名な政治家の孫が転校してきた
どんなコネを使ったか知らないが拓海は化け物級のおぼっちゃんだった
当時舞衣子が学級委員をしていたので転校生の面倒を見ていた
そんな拓海が私にラブレターをよこしたのだ
「初めて見た瞬間から好きでした」と
拓海からラブレターをもらったことに驚いたのではない
舞衣子を選ばなかったことに驚いたのだ
拓海と付き合うことはなかったけど、今も不思議でならない
みんながとびきりの美人を好きなわけじゃないんだ
恋はだからおもしろい
美人でなくてもロマンチックなことは次から次へと起こる
人が人を好きになるのは、偶然やドキドキや駆け引きや気まぐれがいくつも重なって起こるのだ