やってはいけない日本人的交渉パターン | 中尾 あきら 「和の道」

やってはいけない日本人的交渉パターン

カリフォルニアのオーガニックヴィーガンレストランVegiLiciousのオーナーシェフ、「あなたの人生が成幸する 世界最幸のヴィーガンバイブル」の著者 中尾あきら です。

今年日本に永久帰国するにあたり、11年続けてきた(建設を含め12年)愛しのVegiLiciousを売りに出していることをご存じの方も多いと思います。

そのなかで、とんでもないことが起こってしまいました、それも日本人によって😰😱

悪意があったのか、ただの軽い気持ちだったのか、交渉マナーを知らなかったのか分かりませんが、(相手が私たちだったから良かったものの)こんなことを海をまたいでアメリカ人相手に平気でやっていたら、「嘘つき」「二枚舌」「曖昧」「手の平返し」として日本人全体の信用を失ってしまいます。

なので、仮に悪意がないとしても、日本人が気づかないうちについやってしまいがちなパターンがまさに今回のようなことだと思いますので、紹介させていただきます。

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私たちは、遅くても4月末で店をたたみ、次の1カ月は帰国準備にあて、1回か2回国内旅行をして5月末か6月上旬にアメリカを引き払おうと計画し、昨年の終わりごろ、不動産店に買主募集を依頼しました。
反応は上々で多くの買主候補様が見に来てくださいました。そのなかで、日本人の方が「日本の買主の代わりに(代理人として)見に来ました」とお見えになり、料理も召し上がってたいそう氣に入ってくださり、写真もたくさん撮って日本の買主様に報告してくださいました。その日本の買主様はアメリカにレストランを開業することでビザの取得を目指しており、「それは私たちが辿ってきた道なので、全面的に応援します!」とお伝えしました。
1月初旬に私たちの公示価格と同額で「買付希望書」をくださいました。
ただ、私たちの経験から、実際にレストラン開業のために相応のお金を使ってから(今回のケースだと代金を支払ってから)しかビザの申請はできませんし、ビザの申請書類の準備と審査期間を考慮すると、今すぐ取引が成立しても彼女にビザが下りるのと私たちの退去希望時期が合うかどうか微妙ではないかと思い、彼女とZoomで面談しました。
もちろん、Zoomの画面でレストランのありとあらゆる場所をゆっくり丁寧にお見せしたところ、ますます気に入っていただけました。
懸念している「時期」について指摘すると、彼女は「もうアメリカに会社は作ってあるし、ロサンゼルスにマネージャーやスタッフ候補もいるし、仮に私のビザがすぐにおりなくても、Akiraさんたちにスタッフが教えてもらいながら、VegiLiciousから新しいレストランにグラデーションのように徐々に移行していけば、うまくいくと思いますよ♡」とノリノリでした。
それなら!ということで、私たちも「グラデーション期間」にお手伝いできることをリストにして差し上げ、6月中旬までお手伝いすることを申し出ました。
あとは彼女が3月初旬に訪米して現地を実際に見て正式契約するということになり、それまでに細かい条件やグラデーションのことは全部決めるはずでした。

それが、そこから急に彼女からの返事が遅くなりがちとなり、「それについてはもう少し考えさせてください」とか「お手伝いリストの〇〇と□□はやってほしいが、その他はいらない、だから値段は変わることになります」とか「レシピの二次使用(転売とかレストラン外での商品化)が認められないのはおかしい」とか、1ヵ月以上経ってから言いだしました。
一方で、「グラデーション期間」の会計(家賃、経費、仕入れ、売上等の按分)はどうしますか?スタッフはいつ頃から来ますか?引き渡し時期はいつにしますか?等の再三の問いかけには、とにかく忙しいので「しばらく待ってください」が続き、「明確な回答なし」のまま今月になってしまいました。

この2カ月の間に彼女に使った時間と労力、そして失われた機会(他にやや低い条件で申し込んできた買主様や、2月下旬に見に来た積極的な買主様たちは「3月初旬に先約の買主と契約する可能性が高いのでそれまでに公示価格かそれに極めて近い価格で申し込んでください」と私たちにリクエストされたため「そんな短期間で決められないので、ごめんなさい」とか「それまでに資金調達できないから、ごめんなさい」となってしまった…)を考えると、もう面倒なので、
値引きもします、引き渡し時期も1ヵ月遅らせます、と申し出たのですが、それも「出来ない(十分でない)」という返事で、
当初言っていた「3月初旬に訪米して決める」は一体どうなっているのか?と思っていたら、「忙しいので5月に現地に行って7月までに(買うか買わないかを)決めます」ともはや理解不能どころか意味不明な回答が返ってきました(絶句)

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つまり具体的な準備や計画が十分でないまま、「とりあえず物件を見つけておこう」というノリで私たちの物件を「キープ」して、細部や結論はできるだけ先延ばしにしよう、という日本人にありがちな発想だったのでしょう。

交渉は1回のZoom面談以外はすべて代理人の方を通してやっていたので、最後にその方に次のメッセージを送りました。

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このたびは、双方の認識や希望引き渡し時期に乖離があり、残念ながら合意にはいたりませんでした
、、、と本来なら一行で済ませた方がカンタン且つ気楽で良いのですが、この異国の地で18年間当地の人たちと密接に関わりながら真面目に生きてきた同胞の先輩として、△△さん(代理人の方)に申し上げます。

××さん(買主の方)がどういうお人なのか、今回のメールを拝見してよく分かりました。
悪意がないとしたら、
時系列を混同されているのか、
思い込みが激しかったのか、
ご自分たちの認識が書き換わっていらっしゃるのか分かりませんが、
いずれにしても、マナーやモラルに沿っているとは言えず、真摯な交渉の中においてはありえないことだと思います。

「7月までには決めたい」では大前提が無視されているので、最初から話にならなかったということです。
当方は、交渉の始めから引き渡し時期について明確に希望をお伝えし、時期のギャップを指摘しましたが、グラデーションのご提案をいただきましたので、ご協力を真剣に考え、練りに練ったお手伝いリストを迅速に差し上げましたが、お返事は「もう少しお待ちください」の繰り返しで、ごく最近になって交渉の中身のニュアンスが変わってきてしまいました。
交渉開始から2カ月近く経った今になってから、大幅に条件を変えたり、引き渡し時期どころか、やるかやらないか自体を決めることが7月になるなどと表明していただいても、失われた時間や機会を取り戻すことはできず、大変遺憾です。

もちろん、信じ続けた自分たちがアホなのだから自業自得ですし、勉強代です。

私たちが△△さん(代理人の方)にお伝えしたいのは、
こんにち私たち敗戦国の日本人が戦勝国アメリカで堂々とビジネスをでき信頼を得られているのも、私たちの先人達が苦労に苦労を重ねて血と汗と涙で信用を勝ち取ってきたからこそで、後からそこに乗っからせてもらった我々はそういった偉大なる先人達が築いた信用を損なうことなく、むしろ少しでもさらなるイメージアップに寄与するべく日々精進するものだと思います。

今日たまたまウチのレストランの常連様で、日系三世の方が戦中戦後のことを話してくれました。日米開戦後、西海岸の日系人が全員強制収容所に入れられたことはご存知かと思いますが、一世のおじい様は、収容所内でお亡くなりになり、二世のお父様は志願兵となって日本に赴いたそうです。そのまま進駐軍として日本に残り、そこでお母様と結婚されその方が生まれました。1966年にアメリカに帰国しシカゴに住まわれたそうですが、まだまだ差別は色濃く残っていたそうです。その差別を解消するためにアメリカにいる日系人だけでなく、日本にいる日本人もアメリカとビジネスをするなかで本当に努力して、何十年もかけて今のように差別がほぼなくなり、その方もUCI(当地の有名大学)の教授になれたそうです。ただ、中には不誠実であったり、嘘をついたり、約束を守らない日本人もいるので、そういう人たちのせいで「ジャップは卑怯、パールハーバーと同じだ」と言われ、悔しい思いをしたそうです。

私も貿易商社に7年ほど勤務しており、商社マン歴38年の部長から、いつも「正直であれ。前と違うことは言うな。できない約束はするな」と言われていましたし、たまに海外の交渉相手から「日本人は二枚舌を使う。曖昧な返事をする。交渉を引き延ばす。どんでん返しをする。お前は違うだろうな?」と言われたことがありました。

なので、こういう自己都合で交渉を長くしてひっくり返すパターンはしばらく忘れていましたが、今回のメールでよく分かりました。
今回の交渉相手が私たちで良かった。こんな交渉をアメリカ人相手にしていたら、その人とその周辺の人たちの中で日本人への信用は崩壊してしまいます。
いつも誠実であり嘘をつかず約束を守るという当たり前のことが、自分都合でできなくなってしまう人が、この国の人たちに日本人に対して悪いイメージを抱かせてしまうのですよ。

△△さん(代理人の方)がその片棒を担ぐことのないよう切に希望します。

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私たちがVegiLiciousで接したアメリカの方々に少しでも日本と日本人に対して良いイメージを持ってくださっていたら、とても嬉しいです。


お読みいただき、ありがとうございます。


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