毎回、原因はなんだったのかは分からない。
原因は、あたし達二人が、一緒に居る事だったのかもしれないと、今は思えたりする。
とにかく、彼の怒り方は、度を越えていた。
バカの一つ覚えのように「通帳とカードを置いていけ!」と始まり、あたしのお財布からお札だけを抜く。
まるで、無一文で放り出したいかのようだ。
あたしは、いつものように家を出る。
離れている間の彼の身体の心配など、あたしには無くなっていた。
それと同時に、あたしが居なくとも何でも無い事だろうと言う落胆もあった。
あたしは彼のマンションを出てすぐ近くのウイクリーマンションを1週間だけ借りた。
1週間と言うのは、最短1週間のウイクリーだと言うので、仕方なく借りた。
「暫く、放れてみて考えようよ」
そんな言葉を、出で行くとき、あたしは彼に言ったが、彼の返事はなかった。
自分でも何がしたいのか、どうしていいのか分からない。
「お前が勝手に来たんだろう」その言葉を言われ続けた事に、引っ掛かりがあった。
彼はどうして自分を認めないのだろう。
あたしを愛する事を何故拒むのだろう。
全てが答えの無い疑問だったのかもしれない。
ウイクリーマンションの部屋は、静かな夜だった。
テレビのない生活だったので、テレビを見る習慣もない。
音のない部屋で、あたしは、電気を点けたままベッドに横たわっていた。
辛くて一晩中泣いていた夜もあった。
その時は、彼はティシューを耳に入れて寝ていたわ。
大量の薬を飲んで、自殺を図った後も、何度も自分を消したかった。
「だからお前はダメなんだ」と、何度彼に言われ続けていただろう。
あたしの全てが嫌でたまらないこともあった。
何が悪いの?
どうして?
どうして?
彼が怒る原因が見つからない。
そのことを、どれだけ悩んだだろう。
考えてもあたしは分からないことだらけだった。
彼の元へ行く前に、てんかんの人は性格に問題があるからやめといたほうがいいよ。と言われたことを思い出していた。
彼の性格は、てんかんから来るものなのだろうか?
普通はこうなんじゃないか。と言う『普通』の基準があまりにも違い過ぎての事じゃないのか?
あたしは、自問自答しながらも、疲れて眠りについた。
ウイクリーマンションで1泊をした翌日。
あたしは、賭けをした。
もう、どうでもいいと思っていたからかもしれない。
それとも、すぐ来ると願っていたからかは、自分でも分からない。
彼に電話をすると、彼はすぐ電話に出た。
「もし、まだあたしとやる気持ちがあるのなら、迎えに来て」
彼は、無言で電話を切ると、すぐに部屋へと来た。
それは、明らかに彼が決断した行動だと思いたかった。
すぐに来た = あたしとまだやる気がある
そうとって良いのだと思っていた。
それがあたしには嬉しかった。
あたしは、彼を車椅子からベッドまで引っ張り、そのままキスをした。
彼は少し抵抗していたが、それを受け入れる。
彼のお迎えと共にあたしは帰宅することした。
既に、ウイクリーマンションの受け付けは終了してたし、1週間もレンタルの契約をしているので、カギを急いで返さなくても良いだろうと思い、特に拘らずにいた。
いろんな事を話し合い、また口論となり、また解決する。
多分、他の夫婦より少し多い喧嘩かもしれないけど、それでも、夫婦としてやっていくんだろう。
あたしは、そう解釈して「ご飯作るね」そう言って立ち上がると、彼は叫ぶ。
「ちょっと待てよ!俺は騙されているのか?」
台所に向おうとしたあたしの腕を掴み、
「ご飯なんて作らなくて良い!」
その彼の掴んだ手の力が余りにも痛くて、あたしは恐怖に包まれた。
今度は何なんだろう。
彼の怒りのスイッチが分からない。
ただ恐くて、次に出てくる彼の暴言を受け入れる覚悟をしていた…。