“愛里跨(ありか)の恋愛スイッチ小説(星之くん編54)” | 愛里跨の恋愛スイッチ小説ブログ

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54、紙一重の先




あれから……
なると心から交わった日から三ヶ月が過ぎた。
夜が少しずつ長くなり、外で仕事をしていると露が冷たく感じられる季節がくる。
朝晩の冷え込みがきつくなってきたなと時々感じるが、
撮影をするには最適で、今日も空気が澄んで過ごしやすい秋晴れだ。



俺達が熟していた映画の撮影スケジュールも問題なく終えて、
一週間前からそれぞれに、いつもの業務に戻っていった。
なるもその後、一層撮影に身が入っていて、
最近では男性モデルの撮影を自ら買って出て、
違った意味で俺をヤキモキさせている。
しかし濃厚な仕事があった日は、
あいつなりに安心させようとしているのか、
寝入っている俺のベッドにもぐりこんできて……まぁ、あとはご想像の通りだ。
愛憎相中というか、この複雑な思いをなんと表現べきだろうか。



なるとの関係をあんなに思い悩んだのに、
受け入れてしまえばこんなものなのかと我ながら呆れてしまう。
改めて冷静に考えれば、何時の世でも世界中でこういうことは密かにあった。
俺が知る限りでは、5000年以上前から世界各地で連綿してきたのだ。
だから現代においてもこんな愛情模様が起きても何ら不思議はないはず。
なのに、自分の人生上にそれがリアルに浮上すると、
やはり困惑するものだと思い知らされる。







そして……
今日は、朝から新たな撮影、編集を熟した。
俺よりも先に、それを実体験をし克服してきた人物、
尊敬する人物の一人、木音流偉さんと。
夕暮れ時、俺達は本日分のスケジュールを無事に終えて、
社内カフェで休憩を取ることにした。





流偉「久しぶりに新鮮でした。
  せのさんと一日撮影できるなんて」
星之「俺もですよ。いい仕事ができましたよ」
流偉「しかし、るなさんも思い切りましたね。
  男性モデル専属になるなんて」
星之「はい。でも、今までより断然良い作品になってるんで、 
  あいつにとっては良かったと思うんですよ」
流偉「そうなんですね。
  あぁ。うふふっ。そういうこと、なのですね……
  やっとお二人とも、ひと山を越えたんですね」
星之「えっ!そ、それは。
  参ったな。流偉さんには全てお見通し、なのかな」
流偉「はい。だって私は、経験者ですから。
  でも。本当に良かった。
  ずっとせのさんとるなさんが気になっていたんです。
  なかなか素直になれないお二人でしたしね。
  そんな貴方達が超えるには、あまりに困難な山ですもの」
星之「流偉さんも、そうだったんですか」
流偉「ええ。
  今なんて、取り越し苦労だったなって余裕をかましていますけどね。
  こんな気持ちになれるなら、もっと早く決断すればと良かったと思うくらい。
  ですけど、あの一歩の決断は簡単ではありませんから」
星之「そうですね。俺もそう思います」
流偉「せのさん、るなさんのこと、心配ではありませんか?」
星之「えっ。心配とは」
流偉「浮気されるかもとか」
星之「い、いや。それはありませんよ」
流偉「そうですか。私はありましたね」
星之「流偉さん」
流偉「涼希は、我が社だけでなく、
  その業界でも指折りの優秀なメイクアップアーティストです。
  今回の映画撮影でも彼が陣頭指揮を執っていたし、
  華麗な世界の住人の中には彼に憧れる人間も大勢いる。
  だから平凡ないちカメラマンである私なんて、
  忘れられるだろうって」
星之「そんな。
  涼希さんは心から流偉さんを愛していて、
  かけがえのない人と思っているはずです。
  流偉さんを裏切って浮気なんて、それこそ取り越し苦労ですよ」
流偉「それでも、絶対にないと否定はできないでしょ?」
星之「それは、そうですけど」
流偉「涼希を愛する心は誰にも負けない、それには自信があります。
  だけど、自分に自信がないというのもありますけど、
  やはり失うこと、傷つけることの恐怖を未だ拭えないのです」
星之「流偉さん」
流偉「天飛の自殺はもちろん、涼希の元カノによるDVも。
  相手が傷つくまで何もできなかった不甲斐ない私です。 
  もう二度と、あんな経験は本当に……したくないのです」
星之「流偉さん、大丈夫ですよ。
  今は俺やなるが傍にいます。
  一緒に受け止めて乗り越えていきましょう」
流偉「せのさん……そうですね。
  いつもありがとうございます」
星之「俺のほうこそです」
  


改めて知った流偉さんの心の声。
偉そうに言った俺も、感じる不安と恐怖は同じだ。
困難なことのほうが多い選択を自らの意思で臨んだのだから。
その逆風に抗うには、互いの相手への愛情を信じるしかないと、
俺と流偉さんはホットコーヒーを飲みながら話したのだ。









そして彩と美羽さんも、
俺となるのように、流偉さんと涼希さんのように、
悩みながらも少しずつ前へ前へと進んでいた。
彼女達も自然と関係が深まっているようで、
彩から夕食に誘われた時にその事実を知らされた。




星之「はーっ。彩。
  よくも恥ずかしげもなく淡々と、
  彼女との夜の営みを俺に暴露できるな」
彩 「え?
  星之だから恥ずかしげもなく淡々と報告できるんでしょ?」
星之「し、しかしだな。一応俺は君の」
彩 「元カレでしょ?
  だって、すごく嬉しいんだもの。
  あれだけ思い悩んでいたのに、
  今は天にも昇るような気持ちなの。
  夜だけ毎晩美羽さんがタクになってくれて、
  言葉もテクニックも本当にタクそのもので……ふふふっ」
星之「毎晩、しかもテクニックなんぞ……
  それ以上は勘弁してくれ。
  どう受け止めたらいいか分からん」
彩 「ふふふふっ。
  困らせるつもりで話しているわけじゃないんだけどね。
  美羽さんの中にタクは確かに居るわ。
  華月先生や玉貴先生が教えてくれたように。
  彼女は以前のように多重人格になることもなく、
  自分の行動も、言った言葉も覚えていて制御できてるの。
  これってすごい進歩でしょ?
  こんな朗報、私だけが味わうのってもったいないもの。
  だから誰でもない、星之には報告したくて」
星之「そ、そうか。
  それが本当なら喜ばしいことだな。
  その事実は華月先生に報告したのか?」
彩 「もちろん。
  先生達も喜んでいたわ。
  その日はたまたま流偉さんもオフィスにいて、
  彼も『本当に良かったね』と言ってくれたの。
  美羽さんとは、真賀塚天飛さんの一件もあったし、
  交代人格のタカトさんも、一番心を痛めていたから」
星之「そうだな。
  流偉さんは強い人だよ。
  あんな辛い経験をしても尚、
  美羽さんを受け入れて親身に接しているからな。

  本当に心から尊敬しているんだ。
  俺は茉に対して……彼のようにはできなかった」
彩 「あぁ……
  もしかしてまだ気に掛けてるの?彼女のこと」
星之「いや。もう終わったんだ。
  でも正直、未練がないと言ったら嘘になる。
  最終の統合治療の時、一瞬だけよからぬ願望が俺の中に過った。
  最後に残るのが美羽さんではなく、茉であってほしいと。
  そうなったら俺は迷わず、なるじゃなく茉を選ぶだろうとね」
彩 「星之」
星之「でもそれは華月先生や玉貴さん、神道社長の長年の努力や、
  流偉さんの想いまでも踏みにじってしまう。
  だから茉への想いは治療終了を機に吹っ切ったんだよ。
  それにこれで良かったと、今は素直に思っている。
  美羽さんの為にも、彩の為にも。
  それになると俺の為にもな」



彩は語る俺の顔色をじっと窺っていた。
そして目を瞑って頬に手を当てて少し考える素振りをした後、
何かを思いついたのか小さく頷き話し出した。
しかしその内容があまりに突飛すぎて、
俺は動揺を隠せずに身構える。



彩 「そうね……でも。
  もしもさ、もしもの話しだけど、
  これはここだけの話しなんだけど。
  美羽さんが星之と二人きりになった時だけ、
  茉さんになってもいいって申し出たら、星之はどう応える?
  その申し出を素直に受け入れる?」
星之「何を言ってるんだ。
  もしもの話しでもそんなことを軽々しく言うな」
彩 「軽々しくなんて言ってないよ。
  私は経験者だから言っているの」
星之「……」
彩 「心から愛した人を簡単には忘れられないもの。
  美羽さんの中にタクが生きているように、
  茉さんも生きているのよ。
  だから、星之にまだ少しでも想いが残っているなら、
  後悔しないように受け入れる選択肢はありだと思うの。
  美羽さんだって、茉さんから託されていることもあるはず。
  だからこの先、彼女の想いを伝えられるかもしれない」
星之「だとしてもだ。
  今それに答えるのは愚かだな」
彩 「でも。それでは、星之の茉への想いは……蔑ろに」
星之「蔑ろじゃない。
  今はもう、紙一重の先。
  終わったんだ、彩」
彩 「……」
星之「俺の知っている茉は出会った時から、
  対等に向き合うことのできない別世界の人だった。
  でも今の俺は自分の心が求めるままに、
  愛する者の心を、全てを鷲づかみできる。
  だから今更そんな提案をされても受け入れられないな。
  それに何より確かなのは、今の俺がそれを望んでいない。
  だから過去なんだ。
  茉という女性は……」
彩 「そう……それは、悲しいわね」
星之「そうかな。
  と偉そうに語る俺も、君にとっては過去の人だろ?
  それを同じだ」
彩 「ううん。星之はまだ過去じゃない。
  まだ現在進行形だもの」
星之「ふん。言ってろ」
彩 「ふふふっ」
星之「なぁ、彩」
彩 「ん?何?」
星之「ひとつ教えてほしいんだが、
  タクくんを心から愛し、美羽さんを同じように愛している君が、
  なぜ俺やなると四人恋愛をしようなんて思いついた?」
彩 「それは……」


暫く黙ったまま少し俯いた彩。
けれど俺に優しい微笑みを見せながら素直に答えてくれた。
しかしその答えがあまりにもいじらしく彼女らしいと感じて、
俺は思わず彼女の手を握る。



彩 「るなさんが星之のご両親から責められた時、
  彼は深々と頭を下げて『申し訳ございません』の一点張りだったの。
  心から星之を愛しているのに、悪い事をしたようにただひたすら謝って。
  私も傍に居て必死で取り繕ったのだけど、
  そんな現実を目の当たりにして、悲し過ぎて辛かった。
  るなさんが性転換したところで、
  お二人のお孫さんをるなさんが産むなんて、実際には不可能だわ」
星之「性転換……あいつ、そんなことまで考えて」
彩 「そうなの。私、るなさんから相談を受けていたの。
  あっ。暴露したこと、彼には言わないでね」
星之「ああ。言わないよ」
彩 「それで私なりに考えたの。
  星之のご両親、るなさんのご家族の前でだけ、
  私と星之、るなさんと美羽さんが恋人ってことにすれば、
  どちらも納得させられることができるかもってね」
星之「彩」
彩 「それなら実際に子供を産むことだって可能だし、
  私達ならお互いに信頼関係もできている。
  だから四人恋愛すれば、自然と親や家族を安心させられるでしょ。
  その上で本当に愛し合う人と結ばれたら、
  全てが円満になるんじゃないかって思ったの。
  でも現実には難しいわよね。
  るなさんを見ていて理屈じゃないって思った」
星之「それでゲーム?」
彩 「ええ。ゲームのキャラクター同士ならバーチャル恋愛もできるし、
  架空なんだからリアルと違って抵抗も少ないしね。
  それでゲーム内なら、るなさんも少しはその気になってれるかなと思って。
  ウエディングセレモニーという嬉しいシステムもあるから、
  そこで結婚式まで挙げちゃえば、一緒にいて楽しいって思えるかなと」
星之「……ん?
  ……っていうことは、メシアスさんは美羽さん、ってなるが?」
彩 「ん!?……あっ!」
星之「……くくくっ。
  いや、そうかなと薄々は感じてたけど。
  まったく彩らしい。
  彩は昔から嘘をつくのが下手だな」
彩 「くぅー。私ったら……もう、バカ!」
星之「いいんじゃないかな。
  そういう理由なら、なるも理解するさ。
  たださ、本当に四人恋愛するなら、
  そういう提案は決める前に相談しろよ、俺達にな」
彩 「星之ー」
星之「まぁ、それで俺の両親やなるの家族を簡単に説得できるとは思えんが。
  特になるの兄貴、陽立さんは一筋縄ではいかないからな。
  根岸さんがいくらかみ砕いて説明しても跳ね除けられたくらいだ」  
彩 「そう、なのね。
  やっぱり難しいわね」
星之「でも、ありがとう。
  俺達のこと、真剣に考えてくれて」
彩 「そんなに改まって言われると照れくさいでしょ」
星之「俺となるは大丈夫だから。
  受け入れた時から覚悟はできている。
  何が起きてもドンと来いだ」
彩 「そう。それならよかった。
  でも少しは考えてみてね、私のプラン」
星之「ふっ。そうだな。
  そういうことなら明日の夜、久しぶりに四人でゲームしよう。
  明日は仕事が早く終わるから、なるには俺から伝えておくよ。
  もちろん。メシアスさんが誰かは言わずにな」
彩 「やった!分かったわ。
  メシアスさんにも……じゃなく、美羽さんに今夜話すわね」
星之「ああ」




彩の提案は現実的な将来を考えるなら一理ある。
でも、親のため、兄貴のために俺達は生きているのではないと、
本能的に抵抗をする自分がいる。
それはきっとなるも同じで、
そうでなければ俺達は未だ結ばれてはいないだろう。
俺は彩を家に送った後、なるの待つ自宅へ車を走らせた。
玄関で出迎えてくれるあいつを思い切り抱きしめて、
温もりを早く感じたいと真から願いながら。
  





(続く)





この物語はフィクションです。
実在の人物や団体などとは関係ありません。
 
 


 

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