“愛里跨(ありか)の恋愛スイッチ小説(柚子葉ちゃん編33)” | 愛里跨の恋愛スイッチ小説ブログ

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33、フェアゲーム



柚子葉「本当に……それだけ?」
萄真 「えっ」
柚子葉「今の萄真の心に居るのは、
   萄真が本当に愛しているのは、
   私じゃなく、ミヤコワスレさんなの?」
萄真 「それは違うよ!」
柑太 「おい。萄真!」




私と萄真さんは怒鳴る声に驚いて、
慌てて振り返りリビングを見る。
そこには約束の時間通りにやってきた、
怒り心頭の柑太さんと困惑する杏樹さんが立っていた。
萄真さんの姿を見て顔を真っ赤にして憤然する柑太さんを
杏樹さんは後ろから心配そうに見つめている。
項垂れ心の闇を見せていた萄真さんも、
彼らの到着にようやく正気を取り戻し、
いつもの穏やかな彼に戻って話し始める。
私は心が引き裂かれるような後悔の念を抱えながらも、
このままではいけないとその場を取り繕った。



萄真 「い、いらっしゃい、二人とも。
   ごめん。取り込んでたから気がつかなくて」
柑太 「インターフォンを押しても反応ないし、
   何度電話しても、玄関で声かけても、
   まったく返事がないから心配して上がってくれば。  
   なんだよ、おまえ」
柚子葉「柑太さん……
   杏樹さん、来てくれて、ありがとうね」
杏樹 「柚子葉さん。大丈夫?」
柚子葉「えっ」
杏樹 「泣いてるから」
柚子葉「こ、これは違うの。
   引っ越しの片づけ中に目に、ほこりが入ってしまって、
   萄真に取ってもらってたから。
   なかなか目が開けられなくて、ほんとに困っちゃった」
柑太 「誤魔化さなくていいよ、柚子葉さん。
   こいつの態度とさっきの会話で、
   何があったか、大まかなことは把握したから」
柚子葉「柑太、さん」
柑太 「萄真。なんてざまだよ」
萄真 「柑太」
柑太 「今日は何の日だよ。
   何のために僕たちが来てんだよ!」
萄真 「……」


柑太さんはローテーブルの上に持っていたコンビニ袋を置いた。
そしてつかつかと萄真さんに歩み寄ると、
力強く彼の胸倉を掴み、睨みつけながら言葉を続ける。


柑太 「おまえ、僕には吹っ切れたのかって、
   偉そうにほざいてたけど蓋を開けてみればこれかよ。
   柚子葉さんと出会って完全に吹っ切れたって、
   あれだけ啖呵切っといて、なんだこの醜態」
萄真 「柑太、俺は」
柑太 「まだみやこさんのこと、引きずってるのか」
萄真 「……」
柑太 「おい、萄真。
   何で黙るんだよ。
   “雄弁は銀、沈黙は金”ってか」
萄真 「……」
柑太 「何とか言えよ。
   納得いく説明してみろよ!」
杏樹 「増川さん。
   ここは冷静にならないとですよ。
   貴方がエキサイトしてしまったら、
   柚子葉さんがもっと悲しみます。
   みんなで座って話しましょ。ねっ」
柑太 「おまえを信じてここに居る柚子葉さんを、
   おまえが泣かせてどうするんだよ!」
柚子葉「柑太さん、違うの!
   萄真を悲しませてるのは私なの。
   断りもなく彼の私物の入った箱を開けて、
   大切なノートを見てしまったから。
   萄真の想い出にずかずか入り込んじゃった私が悪いの」
杏樹 「柚子葉さん」
柑太 「それでもだよ。
   こいつが生半可な思いでいちゃいけないんだ。
   萄真とみやこさんは恋人でもなければ親友でもない。
   深い関係でも何でもないんだから。
   彼女に関することを、
   柚子葉さんに隠す必要なんて何一つないんだよ」
柚子葉「えっ。
    (じゃあ。萄真が私に見せたあの表現は……)
   柑太さん。ノートのこと、知ってるの?」
柑太 「知ってるよ。
   6月、仕事で萄真の工房に行ったら、
   こいつの様子がおかしいから問い質したんだ。
   その時にノートを見せてもらった。
   だから彼女の素性もここに至る経緯も知ってる」
柚子葉「そう、だったの」
柑太 「後に会社で調べたら同一人物だって分かった。
   遺族の依頼で彼女のアパートの特殊清掃をしたのはリヴだから」
柚子葉「えっ」
柑太 「さっきのおまえの態度を見てはっきり分かった。
   萄真。僕にまだ隠してることがあるだろ」
萄真 「柑太」
柑太 「何もなかったなんて、ほんとは嘘だろ。
   おまえだって、元カレや柚子葉さんのお母さんの一件で、
   彼女のプライベートにずかずか入り込んでるんだ。
   だから柚子葉さんだって、これに関して入り込む権利はある」
柚子葉「柑太さん」
柑太 「愛する人と一緒に住むってのはそういうことだ。
   愛して守り抜くと決めたなら、自分が傷ついても隠すな」
萄真 「……」




萄真さんは抵抗する言葉もなく、観念したように目を閉じた。
悔しさに涙ぐみ、耐えるように唇を噛み締める柑太さん。
莫逆の友だからこそ、お互いの感情をさらけ出しぶつけられる。
そう感じ取った杏樹さんは、ゆっくり二人に近づくと、
間に立って穏やかな微笑みを湛えながら話し出す。


涼子3



杏樹 「この辺で手を放してあげたらどうです?増川さん。
   久々里さんにもきっと、思うところがあるんですよ」
柑太 「馬木」
杏樹 「完全部外者の私が言うのも烏滸がましいですけど、
   愛する人を守るために、
   何かの気持ちを隠すのもありだと思うんです。
   元カノとの過去や未練ある思いを吹っ切るための足掻きは、
   男性からすればみっともないって思うかもしれない。
   けれどそれを今カノに見せるのも、時にはいいものです」
柚子葉「杏樹さん。
   (彼女は私と違ってしっかりしてる。
   柑太さんのことで不安もあるはずなのに、
   大好きな彼を、彼を取り巻く私達を冷静に見てる。
   それなのに私は萄真の一挙一動に一喜一憂して。
   人として未熟なのにミヤコワスレさんと張り合うとか、
   萄真の傍にずっと居るからとか、どれだけ驕り高ぶってるの)」  
杏樹 「みんな、恋の歴史ってあって白歴史もあれば、
   恥ずかしくなるような黒歴史もあるじゃないですか。
   それぞれにその恋に思うところがあって思い出もあって、
   すったもんだして今の自分があるんですよ。
   私はほんの少ししか久々里さんと過ごしていないけど、
   柚子葉さんを全身全霊で愛してるんだなって感じましたよ。
   ちょっとだけ淡い過去が蘇ったくらいで、
   柚子葉さんを愛する気持ち、簡単には揺るがないでしょ?」
萄真 「馬木さん」
柑太 「ふっ。よく見てるよな、馬木は」
杏樹 「はい。見てますよー。
   増川さんのこともしっかりとねー」
柑太 「なんか。
   馬木と付き合いだしたら僕、完全に尻に敷かれそうだよな」
杏樹 「そうなると光栄です」
萄真 「ありがとう。馬木さん。
   ごめんね。招待しておいてお恥ずかしいところを見せてしまった」
杏樹 「大丈夫ですよ。
   醜態、いくらでも見せてください。
   そしてスッキリしましょうよ。
   私、こういう男の友情って大好きだし、
   日頃は見せない男性の弱い部分って、
   かなり母性本能をくすぐられるんですよ」
萄真 「そう、なんだ」
杏樹 「はい。ねっ、柚子葉さん」
柚子葉「うん。そうね……
   私もそう思う」
萄真 「柚子葉。取り乱してごめん。
   困らせたり泣かせるつもりはなかったんだ。
   変な気を遣わせてしまって、
   箱を仕舞い忘れてた俺が悪かった」
柚子葉「萄真。
   私こそ、本当にごめんなさい」
萄真 「もう気にしないで。
   君がノートを見たこと怒ってないから。
   それにこれは、君に話すいい機会なのかもしれない」
柚子葉「うん」
萄真 「柑太も、すまなかった」
柑太 「大学時代からの腐れ縁だからな、僕達は。
   こんなことは今始まったことじゃなく日常茶飯事。
   殴ってでもおまえを引き戻すのは僕の役目だろうが」
萄真 「柚子葉にもおまえにも、

   完全に気持ちの整理がついたら話すつもりだった」
柑太 「そう思ってるならいい。
   けどさ。言えよ、そういうこと。
   隠すなよ、僕には」
萄真 「うん。そうだな」
杏樹 「ねえ、これも何かの掲示かもしれないから、
   みんなで飲みながら黒歴史を暴露し合いませんか?
   これからの私達のために」
柑太 「えっ」
柚子葉「うん。いいと思う」
杏樹 「お互いを知ればこれから先、
   それが原因で揉めることはなくなるでしょ。
   黒歴史を知って嫌いになったり、人間見たーなんて幻滅したら、
   それこそ本気で愛してるって言えないと思うんです。
   題して“黒歴史フェアゲーム”。
   どう思います?」
柚子葉「うん。私は賛成よ」
萄真 「俺も構わないよ。
   まだ柚子葉や柑太に話していないこともあるし、
   君にも一緒に聞いてほしいから」
杏樹 「分かりました。
   柚子葉さんと久々里さんはOKですね。
   では。増川さんは?」
柑太 「黒歴史だろ?僕、そういうのはちょっと」
杏樹 「んー。それが嫌なら増川さんには……
   私の質問に答えてもらうっていうのはどうでしょう。
   パスなしで必ず質問に答えなきゃいけないの。
   黒歴史の暴露と杏樹の質問コーナー、どっちがいいですか?」
柑太 「えーっ。なんで僕だけ質問攻め?
   なんか不公平じゃない?」
萄真 「柑太の黒歴史なら俺が知ってるから、
   こいつが答えない時は代わりに話そうか?」
杏樹 「わぁ!それいいですね!」
柑太 「僕はやだよ!全然フェアじゃない。
   なんだよ、これ。新種の拷問かよ」
柚子葉「柑太さん、どうするの?」
柑太 「柚子葉さんまで」
杏樹 「増川さん。さぁ、どっち?」
萄真 「どうするんだ?柑太」
柑太 「三人で寄ってたかってー。
   うぅ……それじゃあ、
   杏樹の質問コーナーで、お願いします」
杏樹 「やった!」
柑太 「くっそぉー。なんでこうなるんだよ」
萄真 「いいじゃないか。
   お互いを知るためだろ」


柑太さんは体中の力が抜けたように項垂れる。
その姿を見た萄真さんは安堵の微笑みを漏らした。


柑太 「なぁ、萄真」
萄真 「ん?なんだよ」
柑太 「腹減った。
   そろそろ始めない?」
萄真 「そうだな、始めるか」
柚子葉「すぐ食事の支度するからね」
杏樹 「私も手伝うよ」
柚子葉「うん。お願い」
柑太 「おっちゃん堂の焼き鳥も大量に買ってきた。
   ついでにレモン酎ハイとたこわさも」
萄真 「おっ。焼き鳥いいねー。大皿出すよ」
柑太 「お二人さーん、
   先に小皿と割り箸くれない?」
柚子葉・杏樹「はい!喜んでっ!」
柑太 「あははははっ!
   あの二人、どことなく思考似てない?」
萄真 「そうみたいだな」



杏樹さんのお陰で、張りつめていた場の空気が一変し、
いつもの明るく楽しい雰囲気に戻った私達。
学生時代を思わせるのような彼らの姿を眺めながら、
私と杏樹さんは山芋鉄板と手巻き寿司を作る。

萄真さんは冷蔵庫から瓶ビール二本をだし、

栓を抜くと柑太さんに手渡した。






萄真 「今日は飲むだろ?」
柑太 「ああ。そのつもりでタクってここに来たから」
萄真 「そうか。なんなら、二人泊まってもいいぞ」
柑太 「そうしたいところだけど、明日も仕事だろ。
   今期の研修生が全員合格して、
   配属も決まったから一応肩の荷は下りたけど、
   今まで放置してた業務が山積みなんだ。
   それに、柚子葉さんの試験準備もあるしな」
萄真 「そうか。
   馬木さん、いい子だな。
   柚子葉のこともしっかり守ってくれてるし、
   さっきも、彼女が完全に場の空気を変えてくれた」
柑太 「そうだな。
   会社でもそうなんだ。
   馬木はいつもC班のムードメーカー的存在で、
   周囲の感情の変化や動きをよく見てる。
   二日間、無断欠勤してた子が居たんだけど、
   社長と僕に緊急の話しがあるって昨夜電話してきてさ。
   その子を引っ張って本社まで来たんだけど、
   修了試験をみんなと一緒に受けさせてほしいって、
   夏梅社長に直談判したんだ」
萄真 「へー。なかなかやるね」
柑太 「僕は勿論、夏梅社長も驚いてたけど、
   彼女はすごいって思った。
   さすが、一流ホテルで、
   コンシェルジュとして勤務していただけのことはある」
萄真 「そうか。優秀な子なんだ。
   おまえ、馬木さんのこと」
柑太 「うん。真剣に考えてるよ。
   彼女となら乗り越えられるかもしれない」
萄真 「そっか」







30分後、ようやくリビングのテーブル上に料理と飲み物が並び、
私の引っ越し祝いと杏樹さんの合格祝いが始まった。
それぞれグラスを持ち乾杯した後、
能弁な杏樹さんのルール説明が始まる。


杏樹 「えー。それでは皆様!
   馬木杏樹プレゼンツ、第一回、黒歴史フェアゲームを始めます」
柚子葉「うふふふふっ。
   (研修中、C班のみんなでやってたやつね)
   杏樹さん、サイコー」
柑太 「第一回!?ってことは二回目があるのか」
杏樹 「それはどうでしょう」
萄真 「プレゼンツって贈呈もありってこと」
杏樹 「はい。それもご期待ください。
   まずルールを説明します。
   久々里・増川ペアVS岡留・馬木ペアの男女対抗戦です。
   暴露する黒歴史の内容は自分基準で結構です。
   基本パスなし、話しの途中で遮るのもなしです。
   遮った人はペナルティとして、
   遮られた人から提案された罰ゲームをしてもらいます」
柑太 「えーっ!」
杏樹 「但し、アクシデントでトークができなくなってしまった場合は、
   ペアで代弁することができます。
   じゃんけんで負けた人からトークを開始します。
   何かご質問は?」
萄真・柑太「ないよ」
柚子葉「私もないよ」
杏樹 「それでは!
   久々里さんは柚子葉さんとじゃんけんしてくださいね」
萄真 「分かった」
杏樹 「増川さん、私とじゃんけんしましょ」
柑太 「いいよ。じゃあ、行くぞ。
   最初はグー!いんじゃんほい!」
杏樹 「ちょ、ちょっと待ってください。
   『いんじゃんほい』って何ですか」
柑太 「じゃんけんの掛け声だろ」
杏樹 「どこの方言です?」
柑太 「大阪。だと思う。
   子供の頃にいとこたちと遊んでた時、
   よく言ってたんだ、けど」
杏樹 「増川さんったら……くくくくっ」
柑太 「えっ。なんで笑ってんの」
杏樹 「だって……」
柑太 「えっ?えっ!?何かおかしい!?
   おい、萄真。ペアだろ。助けろよ」



私と萄真さんは顔を見合わせて堪えていた笑いを噴き出す。
気を取り直してお互い向かい合い、
「最初はグー。じゃんけん、ぽん!」とじゃんけんをした。
大人になってほとんど、じゃんけんなんてすることがなかったから、
なんだか新鮮で、すごく懐かしかった。
萄真さんはグーを出し、私はパーを出した。
結果、負けた萄真さんが先行になり、
やってしまったというような表情で頭を抱える。
無邪気な子供のように笑い合う私達を、
優しい目で見つめた彼は、
覚悟を決めたのか姿勢を正した。


萄真 「1番、久々里萄真。トーク、始めます」
柑太 「途中でめげるなよ」
杏樹 「久々里さん、頑張れ」
柚子葉「(萄真……)」


彼の様相は恐ろしく厳粛だ。
それはまるで自分の心を覗き込み、
鉄槌を下すような表情にも見える。
さっきまで笑っていた私達三人も、
そのひどく神妙な顔に自然と姿勢を正された。
萄真さんは大きく深呼吸をし、
記憶を辿りながら落ち着いた声で、
自らの来し方を語り始める。


萄真 「2011年6月23日。
   暦の上では仲夏で、
   もうそろそろ梅雨明けしてもいいだろうと世間がぼやいていた。
   なのにその日は早朝から大雨で、
   上着を羽織らないと震えるくらい寒い日だった」




(続く)




この物語はフィクションです。
 

 


 

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