“愛里跨(ありか)の恋愛スイッチ小説(柚子葉ちゃん編17)” | 愛里跨の恋愛スイッチ小説ブログ

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17、運命共同体



冷たく静かな廊下に彼の惨い言葉が響き渡る。
私の肩を抱きしめながら交戦する杏樹さんの声が、
唯一今にも砕け散りそうな心を支えてくれていた。



貴義 「何も知らないようだから、奇特なあんたにも教えておいてやるよ。
   柚子葉って女はな、結婚詐欺師並みの嘘つきなんだよ。
   私は何も知りませんって顔で清楚な女を演じてさ、
   真実を嘘で固めて狙った男に軽々しく近寄ってくるんだよ。
   酒に溺れて金の亡者に成り下がった醜い母親の存在を隠して、
   結婚を迫ってくるような恐ろしい女なんだよ。
   この俺も危うく騙されるとこだったぜ。
   年食ったらこいつもあの鬼畜な母親のようになるんだからさ。
   あんたも気をつけたほうがいいぞ」
柚子葉「……」 
杏樹 「本当に失礼な人ね!」



そこへ……
勇敢な彼女の助っ人に入るように、
両手で握りしめていたスマホがブンブンと鳴りだす。
私は恐る恐る掌の中で光る画面に目をやった。
ここにも味方はいるぞと叫ぶように、
切れては鳴り、切れては鳴るスマートフォン。
映し出された『久々里萄真』の文字がくっきり見える。
条件反射のように私の両目からつーっと流れる一筋の涙。
そして薄暗い通路の先から聞こえてきた心地いい声と、
頼もしいシルエットが私の胸を更に熱くさせた。





萄真 「柚子葉!」
柚子葉「と、萄真さん」
杏樹 「えっ。あの人が、久々里萄真さん。
   柚子葉さんの想い人。
   (増川トレーナーの親友さん)」
柚子葉「か、彼は想い人なんかじゃ……
   (萄真さんが病院に居るってことはやっぱり。
   お兄さんもこの一件に関わってるってこと、よね)」



会えるはずのない人に会えた喜びから、無意識に近寄ろうとした私。
しかし桃奈に関わっているかもという不安と戸惑いが動きを奪い、
萄真さんの名前を呼びながら追いかけてくる女性と、
再び始まった貴義の暴言が私の足に絡まって動きを止めたのだ。



貴義 「ふふん。
   失礼な人とはね。
   それこそ失礼だろ。
   俺は親切心で忠告してるんだよ!
   天使のような顔の奥に人を不幸にする悪魔が、
   その女の中に住み着いているって。
   なぁ、柚子葉。
   俺、嘘は言ってないよな」
柚子葉「……」
貴義 「黙ってないで本当のこと言ってやれよ。
   私はこれまでたくさんの嘘で人を騙して生きてきました。ってさ」
柚子葉「(この人はずっとそう思ってたんだ。
   私と別れて何年経っても、ずっとそう思い続けていたんだ。
   あの日、たった一度あの場に遭遇しただけなのに。
   でも。
   それは私だって……
   私だってあの日、母が見せた醜態は衝撃的でおぞましかった。
   だから貴義に何を言われたって、何を思われたって仕方ない)」
杏樹 「元カレかなんか知らないけど、
   人が黙っていれば言いたい放題!
   柚子葉さん!
   この最低男に好き勝手言われてていいの!?
   こんな暴言を吐かれて悔しくないの!?
   私はそんな人間じゃないって胸張って言い返しなさいよ!」
柚子葉「杏樹さん」
杏樹 「私は知ってるわよ。
   柚子葉さんの良いところたくさん。
   ずっと傍で見てきたもの。
   どんなにしんどく辛くっても、
   たくさん傷を負って悲しくても、
   いつも優しく笑って私達仲間に語り掛けてくれてた。
   だから。
   私の大切な人を傷つけるのは絶対に許されないだから!」
   

杏樹さんの言葉と立ち向かう勇気。
すごく嬉しかった。
すごく有難かった。
手をぎゅっと握りしめて、両目いっぱいに涙を浮かべて反論する彼女に、
感極まったこの心は手を合わせる。
でも、気弱な私には彼女のように言い返す気力は残ってない。
居ないはずの母の存在が、
すぐに追いかけてきて治りかけの古傷に粗塩を押し当ててくるから。




柚子葉「ありがとう、杏樹さん。
   いつも一緒にいてくれて、本当に感謝してる。
   でも、ね。
   この人のいうこと。
   母の件は事実だから、私は否定できないんだ」
杏樹 「そこは全否定するのよ!
   それが事実でも、私は違うんだって否定するの!
   『貴方みたいなモラハラ男、こちらから願い下げ!
   私と肩を並べるだけでもおこがましいわ』って言い返すの!」
柚子葉「ど、どうして私のことを庇って」
杏樹 「大好きだからに決まってるでしょ」
柚子葉「杏樹さん」
杏樹 「私も貴女と同じ。
   親は子供を選べても、子供は何があっても親を選べないんだから」
柚子葉「(彼女が私と、同じ?)」
杏樹 「柚子葉さんは大切な仲間で運命共同体で、
   私にとってかけがえのない親友だからよ」
柚子葉「杏樹さん」
貴義 「勝手に二人で親友ごっこでもしてな。
   俺は今から警察に行って、傷害で被害届を出すんだよ。
   あの女も柚子葉おまえも、二度とうちに来ることのないようにな」
杏樹 「心配ご無用です!
   柚子葉さんは貴方達の怨恨問題に全く関係ないし、
   貴方みたいな野蛮な人のところへ何があったって行くもんですか!」




詰問するような鋭い貴義の声が静かな空間に響いて、
当然萄真さんと女性の耳にも届いている。
しかし彼は空気を読み取っていたのか、
絡む女性の腕を簡単に振りほどき、
威厳と落ち着きを湛えた表情を浮かべて私達に近寄ってきた。



萄真 「柚子葉。大丈夫か?」
柚子葉「萄真、さん」
萄真 「何度電話しても繋がらないから心配したよ」
柚子葉「で、電話?、って」
萄真 「俺は久々里といいます。
   柚子葉が、何かおたくにご迷惑をお掛けしましたか」
貴義 「は?なんだ、おまえ」
杏樹 「なんだって、柚子葉さんの頼もしい今カレに決まってるでしょ」
貴義 「こいつが、今カレ?」
杏樹 「そうよ!
   野蛮な貴方と違って彼はとても紳士なの。
   久々里さん、私は柚子葉さんの同期で馬木といいます。
   この人からいきなり話しかけられて、
   柚子葉さんにひどい事を言ってしつこく絡んでくるんです」
萄真 「そう。
   内容は聞こえていたから大体は把握した」
貴義 「ふーん。把握したね。
   そうか。柚子葉の今カレ。
   じゃあ、あんたも新たな被害者ってことだな。
   丁度いい。
   俺様は剛田。
   柚子葉の元カレやってたもんで、
   同じ女に騙された誼みであんたにも忠告しておいてやるよ。
   この女の悪行」
萄真 「はぁ。
   誼みって、貴方とは初めてお会いするし、
   元カレか何か知りませんけど、何の縁も感じませんよ。 
   柚子葉にも、もちろん俺にも」
貴義 「は?」
萄真 「それに知ってます。
   大切な彼女のことですから、貴方に忠告されなくても。
   柚子葉の甘いも辛いも酸っぱいも、
   良いところも悪いところも生い立ちも。
   それに多分、貴方が知らない柚子葉の細部の隅々まで」
柚子葉「と、萄真さん」
貴義 「お、おまえ……この俺様を舐めてるのか」
杏樹 「(久々里さんって、すごいな。
   さすが増川トレーナーの親友)」
貴義 「くっ……
   す、隅々までときたか。
   そ、そうか。
   だったらこいつのダチの三葉桃奈のことも知ってるよな。
   あの女とグルになって俺様を殺そうとしたことも」
萄真 「三葉桃奈。
   知ってますが二人は絶縁してます。
   だからもう彼女に関わることはないだろうし、柚子葉には全く関係ない」
貴義 「そんなわけないだろ。
   俺は桃奈から直接聞いたんだ。
   それにこうやって病院にいるってことは」
萄真 「病院に二人が居るのは俺と待ち合わせしていたからです。
   疑うなら三葉桃奈当人に確かめるといい。
   岡留柚子葉と久々里萄真から聞いたと言えば分かる」
貴義 「くっ……」
萄真 「申し訳ないが、時間がないので俺達は失礼します。
   柚子葉、馬木さん、行こうか」
柚子葉・杏樹 「は、はい」
貴義 「お、おい」



私と杏樹さんの手を取ってスマートに連れ出す萄真さん。
結局、貴義さんは何も言い返せず、
悔しさに耐えるように唇をかみしめていた。
しかし、一難去ってまた一難。
病院の玄関を出たところで、
萄真さんの名前を呼ぶ女性の声が聞こえる。
それは彼の後ろで一部始終を見ていた実蕗さんで、
その瞳は存在を忘れられた屈辱と押さえきれない嫉妬の情で血走っていた。



実蕗 「萄真、待ってったら!
   私を無視する気!?」
萄真 「あぁ。そうだった。
   厄介なのがもう一人いたな」
柚子葉「あっ。
   (あの女性。
   さっきエレベーターホールから萄真さんを追いかけてきた人)」
杏樹 「厄介?って。
   なんだか彼女、怖い。
   すごく睨んでて怒ってるように見えるのは、私だけでしょうか」
萄真 「いや。かなり怒ってる、ね」
柚子葉「萄真さん、あの方はどなた?」
萄真 「彼女は兄貴の嫁さんの実蕗さん。
   俺の義理の姉だ」
柚子葉「お義姉さん」
萄真 「さっきまで一緒に兄貴の病室にいたんだけど、
   君から電話をもらったからそそくさと出てきたってわけ」
柚子葉「病室って。
   お兄さん、どこかお悪いの?」
萄真 「詳しくは後で話す。
   とにかく一旦、安全な場所へ移動しよう。
   俺の車まで急ごう」
柚子葉「は、はぁ。
   (ということは、桃奈と貴義の心中事件とは無関係、かな)」
杏樹 「ははっ。
   なんだか複雑そう。
   兄嫁に狙われる弟。
   安全な場所って、なんだかサスペンスドラマみたい。
   なんつって」
実蕗 「萄真!なんで逃げるの!
   話はまだ終わってないわよ!
   私達の赤ちゃんのこと、必ず認知させるんだからねー!」
柚子葉「(赤ちゃんって今言った?
   私達の……赤ちゃん。
   お兄さんと実蕗さんの?
   それとも、彼女と……萄真さん)」


どんどん遠く小さくなる叫び声。
それでも彼女が萄真さんに伝えようとする言葉はしっかりと聞き取れた。
病院駐車場に停めてある萄真さんの車までたどり着いた私達は、
車に乗り込んでわびしい闇に包まれる病院を後にした。








杏樹 「しかし久々里さんの登場はグッドタイミングでしたよ。
   か弱い女性を守るナイトみたいで、
   かっこよくて感動しちゃいました、私。
   柚子葉さんはもっとだよね」
柚子葉「う、うん」
萄真 「それはそれは。
   お褒め頂き光栄です。
   お役に立てたみたいでよかった」
杏樹 「お世辞じゃなく本当ですよ。
   私、あのままだったらあいつに言い負かされてたかもだから」
柚子葉「杏樹さん、ありがとう。
   本当にごめんなさいね。
   私に付き合ったばかりにあんなひどいことを言われて」
杏樹 「ひどいことを言われたのは柚子葉さんでしょ。
   元カレだからって、昔の恨みを今晴らすことないのにさ。
   終わったことをうじうじいうなんて男らしくないよ」
柚子葉「そう、だよね」
杏樹 「それにしても柚子葉さんは本当に優しいっていうか、
   究極のお人好しっていうか」
柚子葉「あははっ」
杏樹 「あなたとずっと居て思ったんだけどね。
   柚子葉さん、二日目の特殊清掃実践の時と同じだよ」
柚子葉「えっ」
杏樹 「自分自身を抑圧するっていうか、
   なんだか私なんてどうでもいいって言ってるように見えるの。
   『自分の死』すら望んでいるような、
   自らブラックホールに飛び込んでいってる感じ」
萄真 「……」
柚子葉「あ、杏樹さん、それはね」
杏樹 「確かにうちの職場にも現場にもブラックホールはあったよ。
   飲み込まれてしまわないように毎日必死だもん。
   でもね、柚子葉さんは、
   自分の人生上でも負の空間にどっぷりと留まっちゃって、
   本当に見てて危なっかしいんだよね。
   他人事に思えないっていうか……
   だから!ほっとけないんだけどさ」
柚子葉「う、うん」





病院を出てからの萄真さんは何事もなかったように運転していて、
私と杏樹さんの話を黙って聞いている。
何故、あの病院に私達が居たのか。
どうして貴義から好き勝手に暴言を吐かれていたのか。
気になっているはずなのに何も聞いてくれない。
それに……
何度考えても分からないことがある。
私から萄真さんに電話していないのに、
彼は何故私達の居場所が分かったのか。
『偶然』と言ってしまえば簡単かもしれない。
でもこんなに幾つも偶然が重なるだろうか。
元カレがいて、萄真さんがいて、お兄さんの奥さんがいて。
やはり萄真さんのお兄さんも、
桃奈との件で関わっていて病院にいた。
そう考えたほうが実蕗さんといたことも納得がいく。
でもそうなら、彼女の最後の言葉、
『私達の赤ちゃん』はいったい何。
聞きたい。
萄真さんの口から本当のことを。
でも。
聞くのが怖い。
萄真さんの見えていない世界を知ってまた傷つくのが、
すごく怖い……



暫く車を走らせると萄真さんはあるレストランの駐車場に入り車を停めた。
そしてようやく微笑みを浮かべて言葉を発した。
まるで私の心の中にいろんな感情が渦巻いていることは勿論、
後部座席の杏樹さんの様子が少し前からおかしいということも、
すべてお見通しだよと言ってるように。




萄真 「着いたぞ」
杏樹 「ここは」
柚子葉「レストラン?」
杏樹 「そうね。
   確かに。
   あいつと戦ったら小腹が空いてきたわ」
柚子葉「萄真さん?」
萄真 「……さて。
   ホットコーヒーでも飲みながら、
   運命共同体の心中にあるすべてをぶちまけあおうか」
杏樹 「えっ」
柚子葉「萄真さん?」





この物語はフィクションです。


 

 

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