昨年末、国が福島県双葉郡内に、汚染土壌などの中間貯蔵施設建設を依頼しました。
それに対して、福島県双葉町の井戸川克隆町長(65)が反対の立場を取っています。
「(野田首相の『収束宣言』を)現場を知る者としてとんでもないことと思う。私は認めるわけにはいかない。
(放射性物質の)除去もできず住む希望も持てない一番ひどい地域とされる双葉と大熊が事故の最大の被害者。
ここに(核廃棄物の中間貯蔵)施設を造れということを、誰にも言われたくない。
『放射能をどこかに持っていけ』と、加害者に声を大にして言いたい。
私たちに『日本は世界一の技術で絶対安全』と言い続けてきた『原子力ムラ』の全員が加害者であると思っています。
この人たちが罪を償うこともなく、中間貯蔵施設で新たな職場を造ろうとしている。
正月をこのような方たち(加害者)は、家族円満に我が家の畳の上で幸せに過ごすのでしょうね。
私たち避難民はできないのです。したくてもできないのです。わが家に帰れないのです。年賀状を喜んで見られないのです。」
中間貯蔵施設が出来れば、もう村に住む事はできなくなるのです。施設の設置を認める事は、村を捨てる事になるのです。
仮設住宅で暮らす双葉町住民の苦悩する生の声を「モーニングバード」から拾いました。
「施設を造るのには反対です。東電さんがやった事ですよね。私らは被害者ですよね。
東京が本社だったら東京にナンボでも東電のハコモノがあるじゃないですか。
そういう所に持って行って中間貯蔵施設でも造ってもらいたいのが本当の願いです。」
「一時帰宅した時に自宅周辺を線量計で測ったら25~30マイクロシーベルト以上ありました。
メーターを振り切ってしまいました。
もう住めないです。自分の家はぶん投げてどこか移住するしかないなと思ってますよ。
放射線量が高いんであれば、ふるさとに二度と帰れるわけはないんですから、有効活用してもらうしかないとは思うんだけれども。
だけれども悲しいですね。自分のふるさとにそんなものが出来るとは思わなかったです。」
「1号機が爆発したの見たんだ。女房と二人で。
俺たちは第一原発から3.5キロくらいの所にいるんだよ。
1月2日に町長が仮設にお忍びで来たの。
施設の設置は大熊町と双葉町しかねーんだ。そんなのよその県でも引き受ける所ないでしょ、って言ったの俺。
そしたら町長が、すごいな そんな事先に決めるのか、なんてな。」
「震災後、私は避難所などを9カ所引っ越ししましたから。
家があったって、借金払ってって ほとんど補償もないんですよ。家のローンもあと4年払わなきゃならないから。」
「我々が生きている間に、早く汚染土壌を処理して欲しいだけなんですよ。」
さらに、井戸川町長は続けます。
「世論が放射線量が濃いから住めないからともうあきらめていますけど、あきらめさせちゃいけないんです。
私の立場でいけば、町を守るためにはやっぱりあきらめない努力も必要なんですよ。
ただ、放射能と戦って今住みなさいという事は言いません。だから、一旦仮の町を作って技術の発達と発展を待っている。
私がもし受け入れれば、みんなの子孫に対して申し開きが出来ません。
とんでもない歴史を私が作る事になるんですよ。裁判でも何でも、私は断固として戦っていきます。」
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これは本当に難しい問題です。
誰だって自分のふるさとがゴミ捨て場になるのは耐えられない思いでしょう。
あきらめたくないけどそうしなければならないのか、と住民の間でも複雑に気持ちが揺れ動いています。
震災と原発の被害者が、何故さらに辛い目に合わなければならないのでしょう。
住民の苦悩も知らずに工程表だけは着々と進められています。
30年後に福島県外で最終処分場なんて決まるのでしょうか。
原発を推進するならば、こういった問題全てを解決できてからにして欲しいです。
住民の心の痛みを「原子力ムラ」の人たちにあじわってもらいたいです。