20世紀少年 2 | Moose Nose ~スウェーデンから日本へ~

Moose Nose ~スウェーデンから日本へ~

8年のスウェーデン生活を終え、家族で日本に引っ越して来ました。

前回ブログで話した、20世紀少年で思い出したことがある。
それは2012年12月のある日。
相方が会社から帰ってきて、いきなりヒジを見せてきた。
よく見るとシャツが裂けている。
ちょっとやそっとの裂け具合ではない。
ビリッッッ!!!!!!!!
っと思いっきり裂けてしまっている。
どうしたのかと尋ねてみると、
会社でいきなり裂けたのだという。
「会社でいきなり裂けたって・・・どんな風にしたらそんな裂けるのよ
(・Θ・;)
と聞いたが、相方の返答は
「I don't know.」
であった。

その週の日曜日、部屋の掃除をしていた。
掃除機をかけていると、ブルーのチェックのシャツが無造作に床に横たわっていた。
あの、ヒジ裂けシャツである。
相方に、
「もうこのシャツ捨てていいよね?」
と聞いたところ、
「あ~ちょっと待って、まだ使えるかも!」
と相方。

使える・・・?何に・・・?

と思った私であったが、すぐにピンときた。
「あ、そっか!雑巾とかにも使えるもんね!!じゃあこのシャツ切ろうか~。」
と考えていた私に相方の衝撃的な一言。
「え!?ダメだよ!!切ったら着れないじゃん!!」

な、な、なんですと~~~~~!?!?

あんさん、こんなにも裂けとるシャツをまだ着るつもりとですか!?
マイナス15度の真冬のスウェーデンにこんなん着てたら、
気づいたらヒジが真っ黒、凍傷になっとるとですよ~~~
∑(゚Д゚)
どんだけ~~~~~~!?!?

決して高いシャツではない。
タグには「H&M」の文字。
決してオシャレなシャツではない。
ごく平凡のブルーのチェックシャツである。
ファッションに特に興味のない私の父親も同じようなものを持っている。
可もなく不可もない、そのくらいのレベルのシャツである。

「こんな裂けたの着るなんてみっともないよ!捨てなよ!」
と説得するも、相方は断固としてイエスと言わない。
「大丈夫、上にセーター着ればヒジ見えないから。」

そんな問題ではない。
私は日本でアパレル会社に勤めていた。
なので、見えないところにも気を遣う、という
気持ちが人一倍強い。
見えないからと言って、破れたシャツを着ることは、
私の中で最もタブーとすることであった。
人によっては、物を大切にする、と絶賛することだろう。
私もそこは見習うべきところだとは思う。
しかし、このシャツは既に長年大切に着られていたのだ。
じゃないといきなり裂けることはない。
長年着て、生地の劣化により起こったこと。
もう寿命なのである。
しかも、相方はそのシャツを会社に来ていこうとしているのだ。
いくらスーツじゃなくてもOK,デニムでもOKな会社でも、
同僚と顔を合わせ、上司とミーティングをする。
時にはお客様も接待する。
そんな場を、破れたシャツで過ごそうというのか・・・。
こいつはTPOという言葉を知らんのか・・・。

そんなこんなで説得を続けるも、相方は引き下がらない。
「ヒジ、縫えない???」
と聞いてくる始末。
「縫えないよ!!こんな裂けてたら修復不可能!!」
と私。
しかし、まだまだ相方は引き下がらない。

アップリケとかは?」


ア、アップリケ・・・!?
ひょ、ひょえ~~~~~~~~~~
(ノ゚ο゚)ノ

「アップリケ!?あんたキティーちゃんのアップリケでもつけるつもり!?」
そんな私の問いかけに、相方は慌てて答えた。
「違う違う!表現がまずかったな。なんかさ、同じような生地見つけてさ、
継ぎはぎみたいにしてさ!!ね!?わかる!?」

お前は昭和男児か!!

我が家にも、20世紀少年がいたのである!


「そんなんするんだったら、もうすぐセールなんだから、H&Mで同じようなシャツ買えばいいじゃん!50SEK(だいたい700円くらい)で売ってるよ、そんなシャツ!」
と突き放す私。
相方も、確かに・・・というような顔をしていたが、やはり捨てることに関しては断固として反対していた。

その後私は2週間ほど日本へ一時帰国
スウェーデンへ戻ると、新しいブルーのチェックシャツを着た相方が私を出迎えた。
ブランドは、相方の大好きなDiesel.
お値段だいたい500SEK程(だいたい7000円~8000円)。
H&Mの10倍である。
そして品質もデザインも10倍良い。

H&Mには良いものが無かったと相方は言った。
あのシャツはどうしたのかと私が尋ねると、
「あ~、あれね!あれ捨てた!」
とアッサリ答えた。
あの時あんなにも捨てることを拒んだ相方はなんだったのだろうか・・・。
あの時、必死に説得した私はなんだったのだろうか・・・。

とにもかくにも、相方が20世紀少年であることが判明された出来事であった。
しかし、「ともだち」になるほどでもない、昭和男児であることも判明された。
それでも尚、
「ケ~ン~ヂくん」
と言ってくる相方には少々注意を払わなければいけないと、私は思うのであった。