注意(はじめに必ずお読みください)
これは福岡県からきた小宮氏と、鳥取環境大学の見上氏、楠本氏による学生食堂での雑談をほとんどそのまま書き起こしたものです。あくまでも若者たちによる雑談ですので、専門的な解釈に誤りがあっても悪しからず……。
もう1度言います。雑談ですので悪しからず。
それでもいいという方は、どうぞ。
小宮氏と見上氏は一年ぶりの対面。見上氏と楠本氏は共に稲葉プロジェクトに取り組んでいます。小宮氏と楠本氏はこの前日初めて知り合ったばかりです。
前略
見上 田圃の方の水路はどこら辺を見られたのですか?
小宮 一応、あの辺の川も含めてぐるっと見て回りました。ドジョウもいまして、しかもバエ君から「田んぼを掘ってる時でも出てくる」と聞きました。
見上 そうなんですよ。あそこら辺の集落の田んぼは大分前に造成されたもので、再造成されたのは確か昭和30年代なんですけど、あの集落自体に水田が引かれたのは西暦で700年代半ばとかで。
小宮 古いっすね(汗)
見上 その当時の潅漑で、近くにある大池という池から水を引っ張ってくる途中に作られた水路は、全部瓦を組んである未舗装なので、それがずっとそのまま続いていて、ホタルとかすごい綺麗なんですよ。ただ、どうやらここら辺の環境委員さんに聞いたところ、来年度工事が入るとか入らないとかで……。
小宮 あー、なるほどですね(汗)
見上 まぁ、良くあるタイプですけど。
小宮 一気に居なくなっていくタイプですね。
見上 ここら辺の環境委員さん活発なんですけど、環境委員さんらが考える環境というのは農業がより効率的にできる環境というところなので「そうじゃないんですよ」とちょっと言ってみたりもするんですけど、なかなか分かっていただけない状況で……。
小宮 そうですね……。有明海の方も今、佐賀県とかの田んぼは圃場整備ラッシュですね。
見上 とくにこう、熊本の震災が追い打ちをかけて
----------対談前に買ったリアルゴールドがただの炭酸水だった問題----------
雑談なのでこういうハプニングもあります。この際全て載せます。
売店のおばさん 書かんね
(返金請求書を渡される)
楠本 80円のために向から連絡かかってくる(笑)
売店のおばさん 来るで(笑)
見上 いや返金はいいんで
(返金請求書を書きながら)
売店のおばさん いや返金のために書くんや、返金メモやから(笑)
楠本 これ(リアルゴールド)は飲んだらまずいんですかね?
売店のおばさん 別にいいよ、飲めるなら(笑)
楠本 飲んでみていい?
見上 香りはするのよ、でもどう考えても薄いから
楠本 もっと濃かったよなリアルゴールド
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見上 それで話を戻しますと例の震災の一件以降、圃場整備も始まって国土強靭化とかやってます。イギリスとかドイツとかアメリカみたいにグリーンインフラってのに力を入れた方がいいと思うんですけど……こっち、まあ土木の専門なのでそこら辺も言ってるんですけどね。どうも、経済経済で。もちろん経済も大切なんですけど、そこはなかなか分かってもらえない所がありますよね。問題が出てきて初めて「あぁどうする!」って、てんやわんやになって「だから事前に言ってたじゃないですか」というのが、ここ2年くらいで6件くらいあるんで……。大体、分野は違えどぶち当たる社会の問題点や課題ってのは一緒なんだなというのは、この前投稿(小宮氏のSNSへの書き込み)読ませてもらって身につまされるっていうね。
小宮 本当、そうですよね。まあ、自分らの活動ってのが実際に何か出来るかっていうと、結構なかなか進まないものばっかなので…。一応、以前のヤベガワモチどうのこうのは決着はついたんですよ。治水工事という変えられない目的に対して、二つの「船着き場を作りたいという要望」と「生物多様性を保全をしたいという要求」。まあ二次的なところは、落としどころを見つけられるということで治水工事はやるけれど、船着き場も作るし、ただ環境保全を考慮して導流堤やコンクリート護岸は削減して、なんとか落ち着いた感じなんですよ。それが現状での限度がなって。
見上 そうですね。環境保全というのは特に成果が目に見えて利益があるものではなかなかないので……未来への投資にに近いものはあるんですけど。順序でいうとおいてけぼりにされるところで。まあ、そうされ続けて今に至るんですけど(汗)
小宮 そうですね本当。
見上 建築においても、都市計画においても、同じようなことが繰り広げられてる……皆までは話しませんけど、小宮さんが経験してこられたようなことが農業問題でも農業教育問題でもそれぞれ起こってて。やっぱり予見してた通りの問題が起こるんですよ。
小宮 (苦笑)
見上 問題が起こると、手放しで「さあ、どうすればいい?」って話は聞きに来るんですけど。一度壊れてしまったものを元に戻すというのはほぼ出来ない分野の話じゃないですか、僕達っていうのは。なので後々から言われてもどうにも出来ないかなっていうのは悔しいところなんですけどね。だからいったじゃないかって。厭世観というか、諦めつつやってるような感じですよね……。
小宮 そうですよね……だからこそ、というかどういう活動をされているのか詳しく聞かせていただければ。
《稲葉プロジェクト》
見上 一番最初は思いつきなんですけど、農業高校生が大学にAO入試や推薦入試で入ると大学で出来ることが少ないからフラストレーションが溜まっちゃうんですよ。それで大学を辞めていったり不登校になったりしているってのは、自身でも経験ありますし周りでも多かった。じゃあ鳥取の地域活動を何かやってみようかとは皆考えてたんですよ。そこで今のリーダーをやってる畠山さんという女性の方が鳥取の耕作放棄地をちょっと再農地化してみようと言い出して市役所に電話をかけてみると、まだここら辺では耕作放棄地というのは問題として大きく出てないんです。ただ農業委員さんが頑張ってるからであって、農家の数は着々と減ってるんです。今の農地面積を保つために、その土地のお世話をする人をあっちから連れてきたり引っ張ってきたり上手いこと継ぎ接ぎしてたのが、とうとう去年度から足りなくなって、問題が出てきたんです。
まあ、それまでも環境大学があったのでちょっとでも相談しにきて頂いても良かったし、こちら側の学生も出てったら良かったのですが、農家さんは農家さんサイドで自分らで回せてるからいいと、問題を抱えたまま「俺たちでやる、大学は来なくていい」って締め出してやっちゃってましたし。学生は学生で出来ることはないし、授業で習った事だけを、言ったら自分の利益のため、自分が体験したいがためだけに、地域活動させてくれって地域に出て行こうとするもんですから、出ていった先で問題とかが起きて、なかなかこの大学が開学して20年来、せっかく環境大学が生山の地域にあるのにコラボして何かとか協力して何かとか出来てなかったんです。ただ、いよいよ農家さんサイドがダメになってきたというところで市役所がそこに介入して新規営農者を募集したんですよ。そこに環境大学が入ってきたことによって繋がった、まあ役所に繋げて頂いたみたいな所があるんです。
だから昨年度まで耕作を続けてきた土地なので、耕作放棄地を再生するほどの手間もいりませんし、土壌環境もとても良好な状態で引き渡してもらったので、今回のような農薬を使わないとかできたんですよ。とはいえ、前年度やってらっしゃったプロの農家さんの力を借りてここまで何とか漕ぎ着けたかなって、だからまだまだ自分たちの単独の力ではないとは思ってるんですけど。
まあ機械農業とか効率化とか、例えば最近で言ったらアプリを使用して衛星でデータを取得して農地の耕作状況を携帯で管理したり、本当AIが最近農業にも入ってきてるんです。ただ割かし大学生が地域に入って新しいタイプの農業というのは鳥取大学農学部とかでお家芸的にやられてたし、僕達が新しくやるならどうせなら目立ちたいし、そういうものに手を出すお金もないからということで、いっそ逆コースでちょっと差別化も図りつつ予算不足の言い訳にもなって、尚且つ作業自体も楽しく感じられるものにしようってなりました。そこで県立博物館や市役所、図書館とかに問い合せて郷土文献を漁りまして、昭和40年代以降の機械化農業が入ってくる前の鳥取東部の農業方法というのをやってみて感じたこととかを発信していけたら面白いんじゃないか。そういう利益を無視した活動って大学生にしか出来ないところがありますし、例えそこで学術的な発見とかが無かったとしても、そういう経験をしている大学生がいるということでメディアとかに取材して頂けますし、そこからちょっと機械化農業一辺倒というものにも一石を投じれたらなぁ、とかやらさてもらったんです……けど、まあ大変でしたね(笑)
小宮 なるほどですねw
見上 まず最初は地域の方々に、大学生という立場で農業をすることを受け入れてもらわないとダメなので、大掃除とか大池の掃除とか手伝ってニコニコしつつ「農地貸していただきますよろしくお願いします」って言うんですけど、やっぱりプロの農家さんと大学生というと農業にかけられる時間が違いますので「農業ってもんは明け方から見て回って、きちんと水位を観察してするもんだ!」って注意を受けるんですよ。そりゃまぁ農家さん視点からしてはその注意はいいんですけど、それをすると大学生がつまらなくなって出ていってしまうんですよ。出ていかないようにリーダーと僕とで……そうですねぇ、単純作業の間も愚痴とかを拾いながら、何とか作業を楽しくする工夫というのは随所にやってたんです。それはやっぱり農業に限らず色んなことに言えることで、各第一次産業って高齢化が進んで「若者が欲しい」って表向きには言ってるものの、若者が入ってくると「私たちの頃はこうだった」とかって……。その「私たちの頃はこうだった」って昨今3~40年の話のわけです。僕達が考えてる農業というのは100年前とか200年前とかまで含めてるんです。現在農業をされてる方々が今のやり方でやってきて、ちょっとその結果に曇が出始めたから、僕達がここら辺(100~200年前)まで視野に入れてやってみようと言ってるところに対して、経験としては僕らよりもずっと多いので聞かないとダメなんですけど、3~40年の機械化農業の視点で僕らに注意をされるんですよ。注意を受けると大学生も萎縮しますし、そういう問題が各分野であるんだろうなってのは実体験としてよく噛み締めましたね。
やっぱり機械を全部とっぱらってやってみると、例えば除草剤を使わないとかにしても中耕除草機っていういわゆる倒し車で、ずっと株と株の間を縦に行ったあとでまた横へ、それを一反やるんですよ。一反あたりの作業時間が大体6~7時間かかって、これって機会でやると30分ですから、もう計算するのも嫌になるぐらいの作業効率で(苦笑)
ただ、なんせ大人数が集まって共同作業をするので凄く会話が生まれるんです。3~40人でやってると定期的に揉め事が起こるんですけど、そういう揉め事とかお互いの不満が溜まる前に、2ヶ月に1回なり3ヶ月に1回なり飲み会みたいなものを田んぼの周りでやってガス抜きをするんですけど、そういうものが昔の文献に書いてあった農業の収穫の合間にやる集落の集まりだとかそういうものと合致するようになってきたんです。
自分たち(見上氏やリーダー達)は文献を頭に入れつつやったんですけど、他の3~40人は昔の農業はどういうものか調べずにこっちに入ってやっているのに、自然自然と昔やってた風習とかに近よっていくんですよ。それで地域の方々との会話がなくなると、やっぱり大学生のやり方が違うから「あそこの田んぼは何やっとるだ」とか文句を受けるので、そういう方々と一緒に集まって飲んだりしていると、それが夏祭りとかになって発展していくというか。宗教じゃないですけど、地域文化の成り立ちみたいなものも大分感じつつ、結構得るものは農産物以外にも多かったですね。
結局、僕が結論として考えたのは“日本の伝統的な農業方法”、特に水田においては、今考えられている農業ってのは出来るだけ小さい手間暇をかけて同じ収穫量を獲得する、言わばフロー、表に出ていくところだけを計算としてやっているので“ここ”を疎かにしがちですけど、日本の農業とか林業とか漁業とかにも言えるものは、その過程にも文化的にも凄く大切な所があって、その過程があるから収穫物とかも永続的、自給自足的にし獲得できるもの。だから農業生産品、例えばお米を生産して一反のお米が取れましたというのは、フローであってストックなのですよね。だから一反のお米が収穫されるまでにはこういう地域との関わりがあって、地域の子達を田んぼに呼んで一緒に作業して、その小さい子達が「お兄ちゃん達と田んぼやったら面白かったから僕も農業やってみたい」とかそんな意見を私も受けましたし、そういう小さいですし何の利益にもなってないような事ですけど、これが大切なんです。
例えばそこの長男さんが農業大学校へ進まれることになったんですけど、その長男さんがおそらくこの生山に戻ってきて僕らが居なくなった生山の農業を担っていくんだろうな、と考えるとその手間暇をかけた過程がなければそのうち時間を経るとここの収穫物も得れなくなる。こういうことは昔の人なら必然で分かったんですけど、最近は機械化農業で効率で収穫物を得ることだけを重視しすぎてるような気がする、林業も漁業とかもそうですけど。僕は1年間やってこの程度の気付きしかなかったんですけど(笑)
ただそこで改めて小宮さんとかが言ってらっしゃる漁業の課題点とかと共通するところを1年間で深く実感したので、まぁそこら辺も一度お会いしてお話出来たらなぁって。
小宮 ホントに……やっぱ大変っすね(汗)
見上 本当に、特に高度経済成長期以降の人達は自分がここまでやってきたという経験があるもので、なかなか考え方を変えてくれないんですよね(苦笑)
小宮 もう、言葉がないです(苦笑)
見上 でも、農業生産高とか漁業生産高で、例えば有明海で一番よかった時期というのは、機械化農業や漁業の効率化の時代に被ってますけど、その時代に現役だった漁師さんってその前の世代の漁業を体験してきた方、前時代の農業でやってこられた方が現役世代としてやっていた時代で上手くいっていた。だから本当はこの世代(機械化の前)の人に聞きたいんですけど、この世代の人はもう居なかったりご高齢でお話ができなかったりします。その時代の農村とか漁村とかが好きなんですけど。
もちろん、ここからここまでに来るまでに、経済的に仕方ない過程はあったと思うんです。ただ、その時代から今に至るまでに知らず知らずの内に失ってきたもの、効率化しなければならなかったから切り捨ててきたものものとかを、問題が浮上してきたからこれからの僕達の世代が拾い上げていく作業をしなければいけないんです。それをするためには効率化の時代の方から色々と情報を貰わないといけない、ただそこが上手くいかないから学生達が農業なんてやってられるかっていう話になりますし。コイt……コイツらじゃない(笑)
小宮 ハハハww
楠本 ワハハwww
見上 ww。ここにいらっしゃる方々は「学生なんかに任せてられる、最近の若者は!」って。
小宮 いやもう、分かりすぎますね(笑)
楠本 素が出てるぞwww
見上 ちょっとポロっと出るからね(汗)
見上 やっぱり除草剤を撒かずに倒し車でやるって言ったら「そんなもんは出来ん!」ってまず言われるんですよ。何でできないかというと「私たちは薬でやってきたし、親父たちがどれだけ苦労してきたかも知ってるからそんなものは出来ん」と言うんですけど、“親父たちの世代”は苦労はしてるけど出来てるわけなんですよ。でもその世代の苦労は知ってますけど、その時代の生きがいとか楽しみとか農業の醍醐味とかはこの世代は知らないわけなんです。知らないからこそ機械化農業を推し進めたというのもありますしね。だから本当はここの楽しみみたいなものが農業の本当の魅力であって、そこを売り出せば若者たちは入ってくるんですけど。僕達みたいなのは、それを探るための布石ですよね。これからの農業を考えるにあたって、ちょっとそのプロの農家さんたちが今収穫量や売上を考えると、環境大学という社会的地位を活かして大学生というアドバンテージを使って農業をやる。生産的な農業と並行して、僕達みたいな試作的な農業もやるべきで、今やらないと間に合わない時期なんですよ。だから何を言われても、農家さんから言われてもこの活動を続けないといけないなと思ってるんですけど、やっぱり1年間やって来てしんどいことっていっぱいありましたね。
小宮 今お話聞いて思ったのは、農業は持続可能なという面で人を育てないといけないじゃないですか。作物を作る農業に対して、漁業は相手が自然じゃないですか。漁業者の担い手を持続的に育てていくだけではなくて、生き物に関しても持続的に利用することを考えないといけないのに“人”だけでなく“生き物”についてすら考えてないので今の状況に陥ってると思うんですよ(苦笑)。今、問題の共通点は本当にわかります。
見上 農業の生産物自体は人工的なものなんですけど、生産物を得る過程で必要な水路環境とかそういうところまで頭が回っていないから、漁業と同じようにそこにいる生物のことを一切垣間見ずにやっていく。だから、悪いとは言いませんけど秋田や新潟の潅漑、干拓地でやっているような農業、あれって生産力は高いですけどそこに文化的なものがあるかといわれれば一切何も無いですし、何か土地に根ざした魅力があるかというと、無いわけですよ。だから海外からのより安くて質も味も似ている米が作られるとそこで生産されている大量の米の魅力が失われて、生産高が激減して、さあどうする?ってなって、今ようやく日本政府も東京オリンピックを前にした農業のブランド化とか言い始めましたけど、後付であっても潅漑用地で出来たお米になかなか物語付けはしにくいわけじゃないですか。そういう面で言えば鳥取というのはとても強いんですけど、鳥取の農家さんというのは秋田とか新潟の米には敵わないから僕達の世代で米はやめて宅地化するって言ってるんですよね。その土地を売って収入を得た方が子供たちに貯金をより残せるから。まぁ……気持ちは分からんでもないですけど、こういうものの見方でね、そういうのはちょっと如何なものかなと思うんですけど、よそ者、若者、馬鹿者って排他的な。そこら辺も含めて、地域に入って地域の人達に考えてもらいたいなって思って、僕これから生山に住もうっていうプロジェクトを立ち上げて、友達3人と築100年の古民家でシェアハウスをやろうと思ってるんです。それでも若者たちに対する田舎の方々の排他的な空気ってのは多くてですね。「そんなもんはいらん、私たちだけでやっていける」って言うんですよね。割とあたりが強かったりするんですよ。
小宮 いやぁ、もう、言い方悪いですけど衰退するべくして衰退してますよね。
見上 まさにそうですよね。今の農業ってのはこうなるべくしてなったものですし、これから起こってくる課題ってのは、今の農業のやり方をやってるから起こるべくして起こる問題です。おかしい言い方ですけど、問題に問題点は無いんですよ。問題は起こるべくして起こってますから。ただ問題解決をしようと政府とか農業委員とか言いますけど、問題を生んだ過程を一切考えないから結局問題解決にどれだけお金をかけようと「地域に人を呼ぼう!」といくら広告を大量に刷って、観光地化に大量にお金をかけたところで、根無し草みたいに、地域おこし協力隊みたいなことになってしまうわけなんですよ。
小宮 本当に、というか分かります(苦笑)
楠本 地域興すだけw
見上 地域に入ってやってる若者たちと地域の人達の間に一切接点がないですし、地域おこし協力隊としてやってた学生時代が終わってその人達が出ていくのは仕事がある都市部ですし。地域の方は「結局アイツらは出ていったじゃないか」って出ていった所だけを言うので、ここでやってるリーダー達は嫌になって出ていって結局元に戻るってサイクルをずーっと、もはや60年近くそれをやり続けて今に至るっていう。
小宮 いやぁ、問題の本質は変わらないなって。
楠本 本当に酷いっすからね。まぁ、でも生山ってのは地質が少し違うらしくて、農業のやり方も他の地域と違うってのもあって、しかも稲葉プロジェクトに参加してる人たちは他の地域で農業を齧ってきた人達だから、生山のやり方ってのを「えぇ、そんなんしない」みたいな感じで。
見上 あぁ、土質の話ね。生山ってのは粘土質なんですよ。もうそれはそれは長い間農業をやってきてるので、それがずーっと堆積して地下層が粘土質になってるんです。だから水はけが良くなくて、そのための潅漑で色んな工事を創意工夫しながらやってきたので、水の引き方一つとっても、外部から入ってきた人にとっては一見分かりにくいルールが山ほどあるんですよ。そういうルールというのは向こうの人達からしたら当たり前になっているので、僕達新しい農業者が入ってきても教えないじゃないですか。僕達ってのは農業高校出身ですけど、大阪とか滋賀とか岡山とかの農業をやるもんだと思って来るわけじゃないですか。そこで問題が起こってくると「農業高校なのにできてない、不真面目な連中だ」と言って一瞬にして偏った情報が集落全体に広がるわけなんですよ。そうなると集落の人からのあたりが強くなって「どうせ行っても嫌な事言われるなら行くのやめとこ」と活動人数が減る。それを減らさないために、地域の人達の悪口も止めないで農業をやるしかない。そうなるとさらに険悪なムードのなか農業をやるしかない。というぎりぎりなところでリーダーと一緒に舵取りをなんとかしてきたんですけども。
小宮 リーダー側がキツくないですか?いや、キツいっすよね(汗)
見上 ホントにねぇ。当時の役割では農業の工程計画をたてるリーダー、プロジェクト全体と地域との関わりを考えるリーダー(見上氏)の二人を用意してやる予定だったんですけど、色んな問題とか内部でのゴタゴタとか出てくると、前者が身内から出る愚痴を聞くリーダー、後者が外からの愚痴を聞くリーダー。お互いに、こっちのリーダーは直接外部からの攻撃を受けないから守られ、僕は直接的にものを言われますけど工程を考えてるのはこっちのリーダーだから僕は悪くないって思い込みながら頭を下げて一軒一軒の家を回って謝ったりするところで、二人が協力してなんとか今の形になったという
小宮 いやもう、凄いですね。そこよく気力持ちましたね(驚)
見上 あのねぇ、本当に嫌になりますね(笑)
楠本 たまーに叫んでるよ「もうやだァら!」って。それこそ森光と一緒にあそこら辺で(笑)
見上 たまに半泣きになりながら「いやあぁぁぁ、よし、頑張ろう」って、携帯で「もしもし見上です。この度の件は」みたいなことをやって回ってますけど、そうすると地域の目を気にして出来ることが少なくなる。そうすると中の奴らがリーダー達に文句を言う。リーダー達も個々の繋がりは同じ部活や同級生だからその関係が悪くなるのは避けたいから、ある一定は内部の無茶な要求も聞かないといけない。外部と内部のせめぎあい+α本来自分たちがやろうとしてたことと、現実として出来ること出来ないこと、この4者の間を上手いことバランスを取りながら出来るだけ中心でいようとするんですけど。まあよく問題が起こるんですよ。農業ってのは力が必要な面もありますし、先々を予測して計画的にやる必要もありますから、良くも悪くも色んな人間が集まってるわけですよ。そうすると、それぞれの得意で回ってるプロジェクトでありますけど、得意不得意って人間には当然ありますから、例えば力が強い奴の不得意な点、コミュニケーションが苦手だとかお年寄りたちの前でちょっとこれはって受け入れられない行動を取ってしまう奴とかがいて、それが運悪く地域の人達がいる前で吐露してしまうと、プロジェクト全体というか主に僕とリーダーのところに「それはどうなんだ」ってのがガッて来るわけですよ。
小宮 ……いやぁ、凄いっすね。ホント話聞いてて、内側のそれもそうですし、よく空中分解しなかったなと(汗)
見上 本当に思います。ガムテープで繋げた飛行機で飛んでるような気分でしたね(笑)
その2へ続く