筑後中部魚市場レポート | 環学連通信

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筑後中部魚市場。
有明海一帯どころか、北部九州各地から魚介類の集まる私営では最大級の魚市場です。

2016年12月、この市場を見学させていただきました。












中はとても広く、朝5時から活気に溢れています。






有明海特有の魚達も見られます。
これはエツという、筑後川で産卵し有明海で育つ魚です。川では禁漁期間なので、禁漁期間のない海で捕獲されたものです。








こちらはハゼクチ。40cmを超える巨大なハゼです。1年魚のため、大型に出会えるのはこの時期だけです。





こちらは淡水のコイとフナ。筑後川産でしょうか。






モクズガニ。筑後川ではヤマタロウガニと呼ばれ、漁獲されています。







テングニシやエビ類





ボラの仲間のメナダも有明海ではアカメやヤスミと称され、食用にされます。









ドチザメやアカエイも並びます。柳川市などでは、煮付けでよく食べられる魚です。









しかし、これらの有明海産の魚介類市場のほんの僅かな一角にしかありません。





数多く並べられているのはタイラギの貝柱です。昔は有明海で大量に漁獲されており、今でも有明海沿岸では盛んに食されています。


しかしながら、このタイラギは全て有明海産ではありません。こちらは、岡山県産です。





そして一番多いのが韓国産。


有明海では2012年、立ち枯れ斃死(へいし)と呼ばれるタイラギの謎の大量死が起こりました。同年、サルボウガイ(赤貝)なども死滅が起こっています。

それ以来、有明海の漁獲資源は一向に回復せず、五年連続休漁が続いています。







こちらはシタビラメ。
柳川市の年配の方に「有明海の美味しい魚介類は何ですか?」と聞けば、皆口を揃えて「クッゾコ(シタビラメの地方名)」と答えます。

それだけ、地域の食文化に結びついた魚です。




市場の幅広い範囲がこのクッゾコ売り場になっていました。しかし、そのほとんどが瀬戸内海産なのだそうです。

瀬戸内海沿岸よりも、有明海沿岸の方が盛んに食用にされ価格も良いので多く輸出されているのだそうです。


有明海のシタビラメ類は貝類などの底生動物の減少に合わせて減少し、ほとんど漁獲されなくなってしまいました。











筑後中部魚市場には、他にも各地から食材が集まります。




こちらは高級魚のクエ。






カンパチ






養殖物のマダイだそうです。






なんと、こちらは琵琶湖産のワカサギ。









海外からも輸入されているようです。流石巨大な魚市場。

市場の半分は、このような遠方からの魚介類でした。














元筑後中部魚市場市場長の近藤潤三氏は「昔は有明海産の海産物が大半だった。でもいまは、酷い時には1列しか無かったりする。」と述べています。
長い間有明海を市場を通して見てきたからこそ分かる“有明海の異変”。それを近藤さんは私たちに語ってくださいました。

有明海の生態系の崩壊は、市場でも見て取れます。














追伸
それでも時たま鮮魚売り場に“地物”がいるのを見かけると嬉しくなります。故郷の海の味を当たり前に食べられる日がもう再び来ると信じて、今日も有明海再生に取り組みます(^^