〜ケンジの苦悩〜

仕事に追われる毎日

生命の危険さえありそうなほどの暑さの
この時間に

「契約の件で急ぎのお話がある」
などと言われて
炎天下の中
出て行くなんてどうかしてるな…
でもこれも営業職の性なんだろうか

雪の結晶オレハ…イッタイナニヲヤッテルンダ雪の結晶

毎日毎日
休みも返上して働く有様

家族からも
「たまには仕事以外で出かけてきたら?」
と言われても
やることもなければ
やりたいこともない

雪の結晶オレハ…イッタイドウシタライインダ雪の結晶
雪の結晶コノママハタラキツヅケタラ…雪の結晶
雪の結晶オレハドウナルンダ雪の結晶

駅に向かう
スクランブル交差点のど真ん中で
思わずたたずんでしまった


雪の結晶ダレカ…オレヲタスケテクレ雪の結晶
暗闇の中に吸い込まれそうになった
その瞬間
けたたましい車のクラクションで
我にかえった




仕事を終えオフィスに戻ると
「お疲れさん!」
同期のサトシに声をかけられる
「おう!」
無愛想に応えると
「お前のチームすごいな。
今回もまたトップだろう。
流石だな。
やっぱできるオトコは違うね」

「別に…ただ毎日の仕事をこなしてるだけさ」

「またまた。そんなこと言っちゃって」
ジロリと目だけ動かして
サトシを睨んでやった
が…
そこは空気が読めないオトコ

「だってよ…
お前結婚してて子どももいて、しかも
最近家まで買って。
おまけにペットまで飼ってさ。
いいよなー
仕事もトップ取れて
温かい家庭持ってて
できるヤツのところには
全部条件が揃うもんなんだな」

サトシの止まらないマシンガントークに
ただ盛大なため息がでた

「そんな顔すんなよ
幸せしかないじゃんと思ったら
羨ましかっただけ」

と言われたので

「お前さ…幸せしかないって言うけど
そればっかりじゃないぜ
オレなら独身って肩書で好きな女と暮らして
いいとこ取りしてる
お前の方がよっぽど羨ましいぞ」
と言ってやった
「まー確かに。縛られるものはないから
いつでも乗り換え自由だけどな
でもマナミははっきりしたヤツだからな
別れるなんて言ったら
どうなるかと思うと恐ろしいぜ。」 
と悪態をつくサトシに
「だったらオトコとしてケジメつけろよ」
と言い放ちオレは仕事を片付けはじめた

「今日の懇親会さ…経理課と合同らしいな」
と嬉しそうにするサトシに
オレは手もとめず
だからどうだっていうんだ…
なんて思ってると
「経理課イチ可愛いって有名な子がいるけど 
その子来ないんだってさ。
テンションあがんねえよ」
とこれまたどうでもいいこたえが
かえってきて
さらに盛大なため息がでた
ところで支社長が登場すると
さすがのサトシも空気をよんで
自分の席に戻っていった


思いのほか早く仕事が片付いたので
久々にJeanbeamへ向かった
「いらっしゃい」
愛想いいんだか悪いんだかわからない
マスターだが居心地は悪くない
この店でこんな早い時間から
酒をのむのは珍しいと見えたのか
「今日早いですね」

「ええ。今日懇親会なんで
さっと仕事をあげて
0次会ってとこです」

開店したばかりで誰もいない店内
「仕事相変わらず忙しいですか」

「そうですね。忙しいのは確かです。 
やればやるだけ成果がでるので
結果的に自分で忙しくしてる
のかもしれません」

「たまにはガス抜きが必要ですよ
いい仕事をしようと思ったら
まずは休息です」

「そうですね。
でも休んだところで正直何していいのか
わからなくて…」
たわいもない話をしながら
酒をあおり
時計をみると

「ではケンジさんに宿題です。
まずは人生を楽しむこと
まあ近々あるでしょうね
生きてるって実感するような出来事が。
そして
心身ともに満たされるでしょう」

帰り支度をはじめながら
「そうなればいいですけど…
あっ、チェックお願いします」


「ありがとうございます。
お気をつけて」

「はーい」

「人生は1回限りなので
自分の時間も大切にしないとダメですよ」

「前向きになってみます」
と店を後にしながら

雪の結晶ソンナニウマクイクカヨ雪の結晶
とため息がでた

2話に続く

ソウルライフアドバイザー
霊感タロット
Aria♪