~ 年上@視点 ~
ひとまず距離をとろう。
これ以上近づくと、君を守る立場と心が衝突する気がするから。
だから一歩下がった。
それと同時に、君が一瞬、戸惑ったと気づいた。
無意識のうちに君のあらゆることに気付くようになっていた自分に、初めて舌打ちしたかった。
君の笑顔は変わらないし、声の調子も同じだけど……
ごめん。今のは君を傷つけたのか。
(ヤバい!)
反射的に、慌てて言葉を付け足す。
誤解を解くための説明。正しさを補強するための理屈。
「君のためだ」という、最も安全な言葉。
間違ってないし、嘘じゃない。
でも。
君の視線は僅かに遠くなった。
踏み込まない距離と姿勢。いわゆる「大人の対応」ってやつ。
それらが全部今この瞬間に限っては、俺が最悪の選択をしたと示していた。
(……)
内心、ため息をつく。
君を守ろうとしたんじゃない。それは違う。
そうだな……。
俺は怖くなったんだ。自分の感情が君の無防備さを壊してしまうことに。
だから「理性」という名目で、とりあえず逃げた。
君は何も言わない。距離を保ったままそこにいる。
その静けさこそが、「俺は今、失敗した」という事実をこれ以上ないほど明確にしていた。
(……手遅れか?)
そう思ったときにはもう、関係は一段違う場所へ移動していた。
「俺は選べる側」だと思っていたが、どうやら俺は自分でそれを、僅か数センチの移動で崩壊させたらしい。
(続く)