~ 社長@年上視点 ~
おまえの寝顔は毎日見てるのに。
でも今夜は、隣に寝ているのに顔が見えない気がした。
なぜだかはわからない。
豆電球の光は、そこまでは届かないからかな。
顔の輪郭だけが、近づけばわかるぐらいか。
べつに言わなくていいのに、なんで言ったんだろう?
ちょっと後悔した。
「見てどうするんですか」
彼も戸惑ったのか丁寧語で答えてきて、返事するのに詰まりそうになる。
さっきまでいつもの口調だったのに。
ここは俺も合わせたほうがいいな、と判断する。
「見るだけだ」
「意味わかりません」
まぁね。
いきなり言われりゃ、そりゃそうだわな。
なんだろう。
いつもと同じ夜。同じような時間に寝て、同じに布団に入ってる。
でも……どういうわけか、隣が気になった。
理屈じゃないから説明できない。
ですますだと、俺も呼び方変えないといけないか。
「秘書殿とおまえ。どっちがいいんだ?」
そしたら「おまえのほうがいい」ってきた。
なぁ。おまえさ。この微妙ななんともいえない雰囲気というか空気で、夜で。
一緒にベッドで寝てて、「おまえ」を選ぶって、わかってんだろうな。
(ほんとは秘書殿のほうが良かったんだけどなぁ)
内心ちょっと溜息をつく。
秘書殿なら、無難に止まれるだろう。たぶん。
でも『おまえ』だと……保証はできないかもしれない。
こういうとき、言葉を知らない相手だったら楽なのにな、なんて思う。
俺の秘書は、日本語が出来すぎる。
布団がこすれる音がして、ウサギがこっちを向いた気がした。
「……社長も」
「なんだ?」
「起きてたんじゃないですか。俺が寝れないのと同じで」
「……寝れないのか?」
いつも俺の体に好き勝手に手足を乗せて凄い寝相で寝てるけど、今日は違うのか。
「何考えてたんですか」
で、聞くのそれ?
まったく、お前は答えにくいことを聞くよな。
「……今、横にいる隣人のことだ」
「……」
ふふ、そりゃ黙るだろう。
「俺……ですか」
おや、そうじゃなかったか。
「この感じで、他に何があるんだ?」
あ~あ。つい、言っちゃった。
そうした以上はもう、ごまかしも嘘もダメだなぁ。
(続く)