※病み上がりの社長、布団争奪戦で敗北!
~ 飼い主@年上視点 ~
唐辛子と和がらしと塩を「死ぬほど入れる」って、あいつどういう思考回路してんの?
おまえの給料出してるの、俺なんだけど?
それに、俺がミカン唇に当てたら、真っ赤になって目を一瞬見開いてて可愛かったな。
夜、ベッドで思い出して笑ったら、「このひと、思い出し笑いしてる~」って聞こえて黙る。
なんだその面白がってる声は。
「なぁ。俺、病人。少しリラックスさせてくれよ」
目を閉じながら小声で言うと、
「ひとのごはん食べちゃったくせに、元気だったじゃん」
「……」
右足で隣人の左足を軽く蹴ると、「社長が秘書をイジメる~!」って言いながら笑ってる。
「社長を秘書がイジメてる、の間違いだろ」
「いや、社長が秘書を、であってる」
「いーや、社長を秘書が、であってる」
「社長が」
「秘書が」
思わず起き上がって、布団を思いっきり剝いでやる。
「さむっ!」
「社長をイジメるからだ」
ふふん、と可愛い顔を見下ろすと、急に俺にくっついてきた。
「!?」
驚いて体を離そうとしたら、
「はい、隙あり~(笑)」
楽しそうな声とともに、あっというまに俺の上から布団が消えた。
まだ部屋のライトを四隅だけつけてるから、見えるからねぇ。
「おい~!おまえ、どういう巻き取りかたしてんだよ!」
あまりの早業に、怒るより笑っちゃうほうが先にくる。
「か弱い白兎をサメに食べさせようとする飼い主なんて、風邪ひいてしまえ!」
げっ。こいつまだそんなこと言ってる(笑)
普通、自分で自分を「か弱い」とか言うかよ。
「うちの白兎は飼い主に、唐辛子と和がらしと塩を死ぬほど入れたものを食べさせようとしてたほど、賢くて強いんですけど……」
言いながら、そ~っとベッドの端に転がってるヤツの布団に手をかける。
「おりゃあっ!」
強く引っ張った瞬間「アハハハ(笑)」って大笑いし始めたからどうしたのかと思ったら、
「おりゃあ!って(笑)社長が微熱ですっかりおバカになった(笑)」だと?
ちょうどいい。そのあいだにクルクル~っと布団を巻き上げてやる。
…と思ったけど、こんなに綺麗に体ごと巻き取ってるから、何回転かするだろうと気づいてやめる。
今日は熱が下がったとはいえ、病み上がりだからな。
それを何回転もぐるぐるさせたら、ただでさえ細いウサギは目を回しかねない。
わざと反対側の端っこに行って、「さむ~!熱上がる~!」って、パジャマ姿で体をちぢこめて頼りなさげな声を出してみたら、「それ駄目!」って布団ごとやってきて、右隣に寝ると俺にも布団をかけてくれた。
(チョロすぎ!)
またもや笑いそうになるけど、どうにかこらえる。
「おまえ可愛すぎ(笑)」
ほんとに男かよって言ったら、ふくらはぎをガシガシ蹴ってきた。
「なんだよ、痛いだろ。熱下がっただけの病人に、酷いなおまえ」
「俺は男なんで、熱下がって元気な上司をベッドから蹴り落としてやろうと思って」
「なんつうウサギだよ。飼い主より強すぎんだろ(呆)」
俺も負けじと蹴り返すと、笑いながら蹴り返してくる。
ちょっとして「無駄に疲れるからやめよう?」って言ったら「うん」って返ってきて、けっこうホッとする。
俺はいいけど、疲れておまえの風邪が長引いたら大変だ。
「足、大丈夫?」
「うん、平気~」
「そうか。…ほんとに平気?」
顔を見ると、たまたま形のいい唇に目がとまった。
なんで熱が出たかなんて、明白すぎて考えるまでもない。
昨日の早朝、おまえのマグカップでおまえと一緒にほうじ茶飲んだからだ。
俺が朝起きて水飲むよりも前だから、既にそのときうつってたんだろう。
マグカップねぇ…。
(あれって間接とはいえ、キスはキスだよな~)
なんだろう。うちのウサギは唇が何かに似てる気がするんだけど、思い当たらない。
(……っ!?俺、何考えてんの?)
ふと気づいて我に返る。
目覚ましを見ると、夜の11時半過ぎだ。
「…11時半過ぎだけど、どうする?もうちょっとこのまま起きてる?それとも寝る?」
天井を見上げながら聞いたら、右腕が温かくなった。
「俺にくっついたらうつり返すかもしれないよ」
「明日は日曜だし、べつにいいもん」
「月曜は出社しないとまずいからダメだ」
「え~」
ったく、しょうがないな~。
「……からやめろ」
小さく呟くと、右腕を引き抜いて肩を抱き寄せる。
「へへ♪」
へへってなんだよ、へへって(笑)
こいつ可愛すぎるだろ。
ひとの胸で嬉しそうに笑って溜息つくな。
なに、1人で満足して安心しきってんだよ。
まぁいいんだけどさ。
ま~た俺、あした熱でちゃうのかなぁ…
(続く)