~ 年上@視点 ~

 

違和感は、感情ではなく判断に出た。

 

「今」この瞬間は距離を取るべきだ。

そう思ったのに、体が動かなかった。

 

理由は……

 

べつに君が何かしたわけじゃない。

いつもどおりの表情・声で、ただ俺を見ただけ。

 

――それなのに。

 

なぜかその瞬間、俺の中で「線を引く」という選択肢が消えていた。

 

好意だと断定するにはまだ早く。

この感情に名前をつけるのはもう少し先でいい。

 

そうやってこれまで何度も見て見ぬふりをし、気付かないようにして抑えてきた。

それなのに今回は……。

 

君は俺の想定よりも、ずっとずっと、相当近い場所にいる。

しかも言い訳できないことに、「俺が」君を「そこに置いた」のだ。

 

ずっとずっと、君を守っているつもりだった。

なぜなら君は寝食を軽く考えていて、しかも本当はとても繊細で傷つきやすい面があるから。

だから普段のときは、寝るときは無理にでも寝かせて、食べるときはできるだけ一口でも食べるようにさせて。

生きていくこと自体を維持できるように導いてきた。

 

そうやって俺なりに、危うい部分から少しでも君を遠ざけているつもりだった。

だがそれと同時に知らぬまに、「俺から離れられない位置」に君を立たせていたらしい。

 

視線が絡む。逸らさないというより、逸らせることができなかった。

そのことに胸の奥が、わずかに軋む。

 

(まずいな)

 

こうなってもまだそう思える余地があることに気付いて、苦笑を隠すのに苦労する。

感情にのまれてないし、自制も判断も残ってる。

でも、次にまた同じ状況が来たら。同じように「戻れる」とは限らない――

 

その予感は次の瞬間、確信へと変わった。

うすうす気づいてはいたんだから、そうしてきた自分のツケだ。自業自得。

 

君が俺にとって「失ってはいけない側」に移動していたことを、ついに頭が認めてしまった。

そればっかりはどうしようもないわけで。……心はもっと遥か以前に、気付いていた。

 

でも、まだそれだけ。

それだけ……。

 

うん、それだけ。

 

……とにかく、「まだ」今は。

 

 

 

 

(続く)