例えば、ユーザーを管理者とその他に分けた場合に、後者のことを指す場合がある。あるいは、システムを使ってサービスを提供する者と区別して、そのサービスを利用する者を指すことがある(例えば、ショッピングサイトで言えば、ショップの運営者と区別してショップの顧客を指す)。
他にも、パッケージソフト等では「最終消費者」のような意味で使うこともあるし、受託システム等を孫受けする場合に直接の(つまり二次の)発注者と区別して一次の受発注者を指すようなこともある。
あるいは、単に漠然と「コンピュータに詳しくない人」を意味する場合もある。
ほとんどの場合、文脈から意味が理解できるので困ることもないのだが、ちょっと気になったので、一般的な定義がどうなっているのか調べてみた。
まず、@ITの Insider's Computer Dictionary では、
広義には、製品やサービスなどを末端で消費する利用者のこと。コンピュータ関連では、コンピュータ自身をビジネスにしたり、第3者のコンピュータ環境を管理したりするのではなく、あくまでもコンピュータを道具として利用するユーザーのことを指す。
エンドユーザーのハードウェア/ソフトウェア環境やネットワーク環境などを管理する「管理者」と対比させ、「管理される側」という意味を込めて、エンドユーザーという言葉が使用されることもある。
となっている。あえて「第3者の」としているところをみると、自分(達)用のシステムを管理する人はエンドユーザーと呼ぶのだろう。実際、「@IT情報マネジメント用語事典」の「エンドユーザー・コンピューティング」の説明 では、システムアドミニストレータ(システム管理者)がエンドユーザーの代表として位置づけられている(上記の引用の最後が「こともある」となっているのは、そういう例をふまえてのことだろう)。
次に、日経パソコン用語事典2007(日経パソコンオンライン) をみると、
自分の業務を処理することを目的に、コンピューターを道具として使っているユーザーのこと。情報システム部門の担当者のように、社内の各部門の人々の要求に応えてコンピューターシステムを構築するユーザーと対比する場合に使う。
とある。@IT の記述に似ているが、「管理」ではなく「構築」という言葉が使われている。システムを「管理する人」は「構築する人」よりも「エンドユーザー寄り」だと思う(※1)が、そういう意味では、「管理者」の位置はもっと曖昧になってしまっている。
これらと全く毛色の違う説明をしているのは、三省堂「デイリー 新語辞典」(goo 辞書) だ。
末端の利用者。一般使用者。コンピューターでは自分ではプログラムは組まず,アプリケーション-プログラムだけを利用するユーザーをさす。
なんとも乱暴な説明である。プログラミングをする人でも、他者が作ったアプリケーションを使うだけなら、他のユーザーと同じだと思うのだが、この定義だとそうはならない。また、コンパイラのようなプログラマ向けのソフトウェアは、エンドユーザーを持たないということにもなってしまうだろう。更に、「エンドユーザープログラミング」、「エンドユーザー言語」といった言葉と矛盾してしまう。
とはいえ、「コンピュータに詳しくない人」といった曖昧になりがちな分類に対して、明確な基準を与えていることには潔さを感じる。例えば、同じシステム管理者の中でも、プログラムを組まない人はエンドユーザーだし、プログラムを組む人はエンドユーザーではないということになる。
他にもいくつか用語解説の類を調べてみたが、多様に使われている「エンドユーザー」という言葉を包括的に説明する記述は見つけられなかった。
考えてみれば、「ユーザー」という言葉自体が広い意味で使われるものである。ユーザーというのは、何かを「使う人」であり、その「何か」によって意味が変わるのは当然である。先に書いたように、ほとんどの場合、文脈から意味を判断できるので、特に難しく考えることもないのだろう。
ただ、「カスタマー(顧客)」とか「コンシューマー(消費者)」と表現した方が分かりやすいような場面では、あえて「ユーザー」という言葉を使う必要もないだろう。自分が使う場合には、注意したいと思う。
※1
というよりも、システムを「構築する人」はシステムの「ユーザー」ですらないような・・・。コンピュータ=ハードウェアのユーザーとしての話なのかも。
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