メモをさせない方法 | 悪態のプログラマ

悪態のプログラマ

とある職業プログラマの悪態を綴る。
入門書が書かないプログラミングのための知識、会社の研修が教えないシステム開発業界の裏話は、新人プログラマや、これからプログラマを目指す人たちへのメッセージでもある。

仕事柄、SE やプログラマに作業内容等の説明をする機会が多い。そんなとき、相手の様子を見ていると、全くメモをとらない人と、常にメモをし続ける人がいる。

話している相手が全くメモを取っていないと、内容を忘れはしないかと心配になる。そして、案の定、そういう人は後になってから質問に来たりする。

一方で、メモばかりしている人を見ると、本当に内容を理解しながら聞いているのかと心配になる。また、相手が下を向いてペンを動かしていると、話を続ける気にはならないので、書き終わるのを待つことになる。時間の無駄だ。

そして、いずれの場合も、メモすべきような重要なこととそうでないことの判断が出来ていないのだろうか、と不安になる。


説明する相手の人数が多い場合なら、メモしなくても済むように、事前に要点をまとめた資料を用意しておけばいいだろう。しかし、1人や2人に説明するだけの場合にわざわざ資料を作成するのは効率的ではない。

そういう場合、説明をしながら、相手の目の前で手書きの資料を書いていくことにしている。「出来た資料は最後に渡すので、メモを取る必要はない」と言っておけば、相手が無駄なメモをとることはなくなる。また、話の進行に合わせて、書いていけば、相手も内容を理解しやすいだろう。

もちろん、それは特別なことではない。学校の先生が黒板を使ってやっているのと同じである(※1)。オフィスでは、ホワイトボードが使われることが多いが、相手が1人か2人なら、紙のほうが便利だ。


といっても、これが意外と難しいのだ。相手がメモする時間を待つことはなくなるのだが、自分が書くことに手間を取られてしまい、話のテンポが悪くなってしまうのである。特に、手書きで文字を書くのは意外と時間が掛かる。なるべく図や記号を取り入れて、手早く情報を示せるようにしたいものだ。

そうした場合、我々の仕事では、UML(Unified Modeling Language)が役に立つ。UML と言えば、設計書の書式のように考えている人もいるが、個人的には、このように、コミュニケーションのために使うことのほうが多い。また、設計の過程で自分の考えをまとめるために、ちょこっと書いてみることもある。Martin Fowler 氏のいうところの「スケッチとしてのUML 」である(※2)。

自分のためのメモであれば、自己流の書き方でもかまわないのだが、他者と共有するような情報には、なるべく共通の表記法を使うほうがよい。UML もかなり普及してきたが、まだ使っていない人もいるようだ。言語(Language)は、使う人が増えるほど便利になる。UML に触れていない人には、気軽に取り入れてみてほしいと思う。スケッチとして UML を描くだけなら、それほど記法に厳密でなくてもいい。便利そうな記号を拝借するところから始めてもいいだろう。




※1
学校の授業では、先生が黒板に書く内容をひたすらノートに転記していたような気がする(今の授業がどうかは知らないが)。教師がレジュメを用意しないのは、書き写すという行為自体が、生徒が勉強する上で重要だからだろうか(例えば、手を動かすことで記憶しやすくするとか)?

※2
Martin Fowler 氏はブログの「UMLモード 」という記事の中で、スケッチとしてのUML、設計図としてのUML、プログラミング言語としてのUMLという3つのカテゴリを考えている。



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