499 | 商船裏方日記

商船裏方日記

船の世界に入って数年。
失敗珍談は数知れず、それでもめげずにひたすら前進を続ける中年です。
そんな世界を中心に裏話を含めて紹介して行きます。

499(よんきゅうきゅう)と言う数字を御存知ですか?
我々船の業界(主に内航船)で良く聞く数字です。


答えは船の重さです。
ですので499とは499tの重さの船を意味します。


船の世界ではその船の重さが大変重要で、重さに依って義務付けられる装備が全く変わって来ます。
500トン以上なら有効直径250mm以上のレーダーを付けねばならない等、船舶設備施行規則に事細かに定義されています。


主に節目の数字が有りますが、主なところでは300t, 500t, 1000t, 3000t, 10000と言ったところでしょうか。


一方船主は船を大きく作りたい反面、お金はなるべくかけたく有りません。
たった1tの違いでレーダーを2台装備しなくてはいけなくなったり、勿論その他義務付け装備が増えてきて、船価も変わります。


なので、内航船では*99tと言う船重がざらにあります。
499tなんてヘンテコな数字になるのもそう言う理由からなんです。


一昨年ですが珍事が有りました。
先輩からの連絡で「南極!南極が確保してるレーダーを大至急こっちに融通してくれ!」と連絡。


こう言う緊急の社内融通の場合は、大抵社内発注漏れか現場で壊したか…
*レーダーてそんなに出るもんじゃないから受注生産なんです。
だから手配しそこねると大変です。



南極:「どうしたんです?まさか先輩が発注忘れたりなんかしたんですか?笑」
先輩:「ちゃうちゃう!大変な事になってん!設計重量2999tで計画通り進んでたはずやねん!それが…!」



まさか…
その数字でピンと来ました。
重査(船の重量を測る検査)をしたら設計重量を超えてしまってたんですね。
3000t以上になると、第二のレーダー搭載義務が発生するのです。



重査て、建造工程から行くとかなり後の方なんです…
つまり竣工がこのままだと出来ない!
てな騒ぎになりかけた事がありました。


結局は融通して無線局関係は何とかなりましたが、他も大変だったみたいです…



今でこそ珍事笑い事ですが、その時の設計者はさぞかし青ざめた事でしょうね。笑