みなさま、こんにちは!外出自粛の週末、なにをして時間を過ごしてますか。

 

自分は「ゴッドファーザー3部作」に進みました。3時間×3作=9時間強の作品ですが、SUITSの8シーズン×16エピソードに比べれば、長い感じもいたしません。本日は以下、レビューをしていきたいと思います。ネタバレします。

 

1. 基本情報

アメリカ映画 監督:フランシス・コッポラ  

第一部(1972)、第二部(1974)、第三部(1990)

イタリアンマフィアの一派であるコルリオーネファミリーの2代目マイケルが跡目を継いでから死ぬまでを描いた話です。「人にとって成功とはなにか」がテーマです。

 

 

2.登場人物

ヴィトー:父親(ファミリーのドン)

ソニー:長男  フレド:次男 マイケル:三男 コニー:末の妹 その他大勢

 

3.あらすじ

父親ドン・ヴィトーの人望でニューヨークに権勢のあったコルリオーネファミリーは抗争でヴィトーと長男ソニーを失い、成り行き上、大卒インテリで裏家業には無縁であった三男マイケルを跡目にします。マイケルは合理的な判断から、手段を択ばぬ敵の粛清をおこない、ファミリーを維持します(第一部)。

 

ドン・マイケルの権力は、外部から絶えず挑戦を受けることになります。マイケルは人望や実力を身につける前に敵を殺める権力を与えられてしまったので、火の粉を振り払うためにとれる手段はそれしかありません。寝室を機関掃射されたマイケルは相手の死を以て家族の安寧を得ようとしますが、妻には理解されません。マイケルは離婚され、ラストでは羨望から敵に情報を漏らしていた兄フレドを殺害し、金と権力だけが残ります(第二部)。

 

老境に差しかかったマイケルにはまだ20代の実子2人と妹、古くからの忠臣がいました。マイケルはバチカンに多額の寄進をし、残ったファミリーに合法的な会社を残そうとしました。しかし、そのバチカンに、人を殺めながら地位と権力を築き上げてきた人物たちがいて、マイケルは排除の標的とされてしまいます。自分や家族を守るために、マイケルはまた人を殺さなければならないのでした。愛娘であるメアリが狙撃に対する偶然の楯となり、結果的に彼女の犠牲でマイケルの命が守られてしまったとき、マイケルは違う人生が選べたことを悟ります。彼は生涯、自分の生き方を省みる機会もないままにシステムに踊らされていた人形だったのでした(第三部)。

 

 

4. 感想

 

人間、なまじ小器用で能力があると周囲が期待する役割を表向きは果たせてしまいます。そして、それが金や地位、権力などこの世でいわゆる「成功」と呼ばれているものを伴っているとしたら。あるいは、家族や人間関係、他者の生活の安定を巻き込むものだとしたら。断ることはなおさら困難なものとなるでしょう。若いマイケルは挑戦的なその立場を自ら受けて立ちます

 

しかし、マイケルが足を踏み入れた世界はそもそも、マイケルが生きる世界ではなかった、そこに悲運があったように思います。父親のドン・ヴィトーは、長男ソニーの仇はうたないことを敵に宣言したことで全面戦争を避けようとしたように、マイケルには見えない人の機微を知っていました。そのために彼は人徳を認められてファミリーは栄えたのですが、エリートであったマイケルにはその機微が分かりません。彼は逆らうものはすべからく死で償わせる、畏怖で統治する方法をとります。彼の、なぜ自分が愛されないのかという自問は澱となって奥底に沈殿していきます。彼はパート3で告解をし、神に赦されて初めて罪人は死を以て贖うばかりにはならない光を知るのです。

 

これがもし、家督を長男ソニーまたは妹のコニーが継いでいたら、マイケルほどの後悔と罪悪感に苛まれることはなかったのではないでしょうか。ソニーは血気盛んな男でコニーの夫がDVを働いたときには彼を半殺しの目に遭わせています。また、コニーはフレドを殺めたマイケルを赦して付き従い、マイケルの病床では敵の殺害を許可し、あまつさえ自分の名付け親を毒殺します。彼らにとって相手の排除は後悔のない行為となっているのです。

 

私たちはいつから、そしてどのような理由で自分や人の行動を正当化し、裁きをおこなうのでしょう。誰かが恥知らずにもおこなう行為を、かならずしも自分に許せるとは限りません。理屈を越えて私たちの規範として染み入った倫理観や価値観は人によって千差万別で、道徳とはきわめて個人的なおこないなのです。若い時分には自分が誰であるのか、何ができるのか分からないこともあって、周囲に流されるような決断をせざるを得ないときもあるでしょう。

 

マイケルには、父ヴィトーがもっていた人望に関わる判断のボーダーラインが見えていなかった、あるいは、彼の持っていた優しさはもっと一般人に近いところにあったにもかかわらず、ドンとしての務めを果たすためにはそれに蓋をして職務に見合うと思われる決断をしなければならなかった、それが問題であったように思います。戦時中に、普通の人が人間とは思われない冷酷な行動を結果としておこなったように。それがただ彼を冷酷な人間にしか見えないようにはたらき、人を遠ざけたように思います。

 

メアリの射殺によって彼の心は砕かれます。マイケルはまだもう一人の実子であるアンソニーも、跡目を継いだ三代目ヴィンセント、妹のコニーほかの人間に囲まれていたはずです。しかし、彼はもう、心を開くことはできませんでした。ラストの孤独な死は、彼自身、もうなにものにも自分を赦すことを許さなかったことを表していると思います。マイケルの孤独は決して状況が招いたものではなく、彼が自分を裁いた結果でした。

 

 

彼の最期に「人にとって成功とは何か」の答えがあると思います。すなわち、自分で自分の規範を探りあて、それに照らした良心に恥じない生き方ができた人が成功者なのだと伝えているように思います。

 

おわりに  

 

パートⅢのアルパチーノが、学生時代の英語の先生にそっくりで肩入れしました。