先日行われた寺地拳四朗、京口紘人統一戦。
4Rこの試合のハイライトというか日本拳闘史に語り継がれるべきシーンが訪れた。
ダウンを奪った拳四朗が仕留めにかかったが、京口のパンチに一転してピンチに陥る。
あわや形勢逆転かのシーンだった。
試合後京口はこのシーンの事はあまり記憶がないと語った。
4Rのダウン後は無意識で今まで培ってきたものが出たという事だろうが、このコメントを聞いてある試合を思い出した。
1976年12月11日米国ラスベガス(アラジンホテル)
アーニー・シェバースVSロイ・タイガー・ウイリアムス
世界へ挑む前のシェイバースとロイ・ウイリアムスとの対決。
196cmと長身のウイリアムスへシェイバースはボディー中心にパンチを集め前進。ペースを握る。
ただ9R後半にハプニング。
ウイリアムスのパンチに効いてしまい、右をつるべ打ちされる。
赤コーナーでなす術なくパンチを貰い続けるシェイバース。
現代ならストップ宣告が入っても不思議ではないシーンだった。
10R、ダメージを引きずるシェイバースへウイリアムスの右一閃でスタート。
このパンチでニュートラルコーナーへ飛んだシェイバースにウイリアムスは襲い掛かり、ヘビー級パンチを浴びせ続ける。
完全に立ったまま失神状態のシェイバースの口からマウスピースがこぼれ落ち、ぼろ雑巾の様に身体が揺れる。
現在なら完全にストップ宣告が入る(当時でも!)シーンだが、主審(バディ・バジリコ)は、当時許されていた「スタンディング8カウント」を入れ、試合続行。
千鳥足でよろめきながら試合に応じるシェイバース。
この姿を見て当然攻め入るウイリアムスへシェイバースの右ストレートが飛ぶ。
力感なく放たれたこのパンチ。完全に無意識に放たれたパンチだが、史上最強と謳われたシェイバースのパンチ。
今度はウイリアムスが効いてしまう。
ただこの好機にもシェイバースの足は定まっていないが、とにかく前進。
相手へ身体を預けながら前へ出る。
やや手応えのあるパンチと共にシェイバースの意識も戻り、ロープからコーナーへウイリアムスを追い込み、25~6連発のパンチを繰り出す。
たまらず主審がスタンディングカウントを入れる(ここも現代なら即ストップ)。
下した判断はなんと続行だが、その直後青コーナーで巨木(ウイリアムス)が倒れる。
このヘビー級の魅力が凝縮されたラウンドにけりが付いた(10R2:46KO)。
両者はこの一戦を機に明暗が分かれる。
勝者はその2戦後にアリの世界王座へ挑み名を売り、ホームズとも世界王座を争った。
一方敗者はこの一戦後、7連勝無敗を続けたが、終ぞ陽の目を浴びることは無かった。
ピンチに陥った際に日ごろの鍛錬がモノを言う。
地道で気の遠くなる反復練習が己を救う。
頑張れ若きボクサー達!