1977年11月19日 米国カルフォルニア州 ロスアンゼルス スポーツアリーナ
WBA世界バンタム級タイトルマッチ
アルフォンソ・サモラVSホルヘ・ルハン
※メインはクエバスVSエスパダのWBA世界ウェルター級タイトルマッチ
サモラ:29勝(29KO)1敗 23歳 王座5度防衛中
ルハン:16勝(9KO)2敗 22歳
1R、スタート。当然ルハンは足を使いスタートするが、サモラも同様のステップでは負けていない。
お互い自身の的位置を変化させ、探り合う。
先手を繰り出したのは、ルハン。右から左フックの返し、ただガードの良いサモラはブロック。
細かいフェイントをかわす両者だが、勘が良いもの同士。なかなかクリーンヒットがない。
ただサモラがルハンの入り際に右アッパーを合わせる。やや浅いがタイミングは素晴らしい。
実にレベルの高いせめぎ合いが続く。
サモラまたも同じアッパーを出す。
ルハンの目の良さにミスブロー連発のサモラだが、右フック一発を入れる。このパンチをとってサモラ。
10-9サモラ(以降現代の採点基準にて)
2R、目の良いルハンはサモラの大振りを躱すが、サモラのタイミングは合っている。
構図的にはマタドール(ルハン)と猛牛(サモラ)という感じ。
ルハンも基本は防御だが、一太刀入れる事を励行。
当然パワーという観点では大きな差が有るが・・・。
サモラ心配になるほどの大振り。何故ルハンのボディーを狙わないのだろう。
10-9ルハン
3R、サモラついにスタートからルハンのボディーへパンチを集める。
ただし後続の顔面へのパンチの的中率が良くない。全身総動員し、パンチ放つだけにスタミナが心配。
気持ちコンパクトに振ると当たるのだが、またも大振り。これはサモラスタイルだし、あえて空振りを演出する意図も見受けるのだが・・・。
攻勢点でサモラに付けたいが、ルハンの防御へポイント。
10-9ルハン
4R、サモラのコンパクトに打つ左フックの精度は悪くない。
また非常に少ないが、右ストレートは当たるはず。
しかしルハンは軽業師のごとく良く動く。相手パンチ躱し後のパンチも放つので、防戦一方とならない。
ただ敵地でこのスタイルでポイントが来るのだろうか?
1977年のロスだぞ
10-9ルハン
5R、インターバルのルハンの顔は全くの無傷。(サモラはやや右目にブローの痕跡が)
サモラスタートから自身の距離には入っているが、ルハンの柔らかい上体に、暖簾に腕押し状態。
ただこのラウンドはクロスレンジで更にアグレッシブに攻めるサモラ。
ルハンのリターンを浴びながらも、右→左フックをアゴへヒット。
10-9サモラ
6R、サモラもパンチをやや置きにいくなど工夫をしている。悪くない。
徹底して右ガードを固め、サモラの左フック被弾を避けるルハンへその左も当てる。
ルハンは体が柔らかく耐久性が有る。また右ストレートはモーションが少なく最短ルートで突き刺してくる。
終盤サモラはコーナーからコーナーへ詰めて強打を振るう。
ミスも目立つが、この攻めで逆転ポイントを与えたい。
10-9サモラ
7R、サモラの防御も決して悪くないが、自身の攻撃。とくにワイルドな攻撃の後にルハンのコンパクト動作のパンチを食ってしまう。
ダイナモを回し続けるサモラに対し、省エネのルハン。
終始迎え打ちのルハンだが、後半自ら打って出て来る。
10-9ルハン
8R、前半諦めずにパンチ繰り出すサモラのアッパー気味の左フックがヒット。ルハンがロープへ後退するが、すぐにサイドへ。
詰め切れないサモラ。
ルハンの右クロス。力まず繰り出す本当にタイミングだけのパンチ。そしてその後、今度は前へ出てくるサモラへ右カウンター。
サモラが初めてたたらを踏む。
出てくるルハン。これも初めてのシーン。再三ルハンの左フックが入り、バランスを崩すサモラ。
ロープを背にするサモラの反撃パンチも強いが、勝負と見たルハンは下がらない。
ルハンパワーは無いが、さすがにこの攻めに削られるサモラ。旗色悪くなる一方だ。
いかにも疲れたの体でコーナーへ帰るサモラ。
10-9ルハン
9R、サモラは疲れを感じさせながらもスタイルは変えない。
やや脱力スタイルから放った右が当たるが、形勢逆転には至らず。
ルハンは憎たらしいほど冷静だ。
中盤からまたもモーションの少ない右を刺してくる。
サモラの左フックも当たったが、ペースを掴んでいるルハンには効かない。
後半ルハンのパンチに後退するサモラ。
10-9ルハン
10R、序盤自らの攻撃でバランスを崩しキャンバスへ倒れるサモラ。相当な疲労だ。
狡猾なルハンは防御に徹し、サモラの打ち終わりにリターン。
その後の攻撃でサモラを後退させ、頭ごと攻めるシーンも。
意地でサモラも左フックヒットし、その後右クロスを入れるが、ルハンは体の柔らかさを活かし流す。
攻め入るサモラへ本当に軽く返すパンチが倍増以上の威力でサモラへ入る。
最後はルハンのこれも軽く繰り出した右を食らったサモラが、ニュートラルコーナーへ座り込む。
そのまま屈辱のカウントを聞いたサモラ。
RING誌年間最高番狂わせにも選出されたルハンの勝利。
前哨戦にも敗れているルハン。サモラにとり安全パイな相手として選ばれていたが、相性が悪すぎた。
ルハンと同じパナマの同タイプペドロサを2Rで一閃している為、ワイルドパンチを繰り出し続け、最後は自滅してしまった。
メキシコのアイドルサモラが完全に輝きを失ってしまった一戦。
リング上で踊り喜ぶルハンに「爆竹?」のような音が聞こえる。
またリング上に物が投げ込まれる。これはふがいないサモラへ対する抗議なのか不明だが、1977年らしいシーンだ。
勝者ホルヘ・ルハン。来日して磯上修一に技巧の差を見せつけたが、磯上にとり最も苦手なタイプだった。
磯上の勝ち目が薄いのは明らかだが、まだ打ち合ってくれるピントール相手の方が見せ場を作れたかも?
日本でのルハンの評価は決して高くない。
ライバル王者(サラテ、ピントール)が強かった事とさほど強いとは思えないホルヘ・ソリスに王座を明け渡し、覚醒前のチャンドラーにも敗れ、5連敗を喫しているからだと思う。
村田がルハンへ挑んでいたら・・・との論調もあった。
但しこの連敗相手は、セルヒオ・パルマ、ルペ・ピントールらと一流どころ。
また敗れはしたが。同国のエウセビオ・ペドロサの持つ世界フェザー級王座へ挑み、実にレベルの高い攻防を演じた。
ペドロサもやる気満々リミッターを外した名勝負だった。
ホルヘ・ルハン:生涯戦績27勝(16KO)9敗
但し一見打たれモロそうだが、KO負けは一度もなく。危機回避能力に長けた技巧派だった。
サモラについては違う視点で今度記します。