19701211メキシコ・バハ・カリフォルニア州ティファナ

WBC世界フェザー級タイトルマッチ 

ビセンテ・サルディバルVS柴田国明

 

サルディバル:36勝(26KO)1敗※WBC王座7度防衛中

柴田:31(19KO)22

 

偉大なるサルディバルのリングインを拍手で迎える柴田。

この当時からリングマナーが良かったのだな。 

 

実に狭いリング。怪物サルディバルの前へ放り込まれる気持ちはいかばかりか。

会場の雰囲気も殺気立っている。

 

ただそんな中、ゴング前に睨みつける柴田に顔をそらし気味の王者。

 

1R、スタートから柴田は右を振るい、一気にコーナーへ詰めて連打を仕掛ける。

底抜けの勇気だ。

柴田は脇をよく絞り、コンパクトな連打。上体のウィービングも速く好調そう。

しばらくサルディバルも技術で対抗を試みたが、やはり前へ出てくる時の迫力は凄い。

相手の先制攻撃を受けたが、サルディバルも調子は悪くない。

 

10-9柴田(10点法、現代の採点基準で)

 

R、サウスポーサルディバルにいきなりの右を巧く使う柴田。

フェイントも実に巧みだ。

サルディバルの右を外して左フックで飛び込む。一瞬の動きのスピードは断然柴田。

サルディバルは技術優先の戦法。堅実なスタイルでスピードのある柴田と対峙する。

柴田の動きを止めるべく左ボディーを繰り出す。また右の使い方も巧い。

 

10-9サルディバル

 

3R、両者前足の陣取りが激しい。

柴田はいきなりの右に活路。また1Rに仕掛けたコンビを狙っている。

しかしサルディバルのパンチもコンパクトで打ち出しが早い。パンチ力も相当なものだ。

緊張感ある展開。

後半柴田の左フックが再三ヒット。これはサウスポーには有効。そしてサルディバルのコンビをウィービングで躱す。

 

10-9柴田

 

4R、サルディバル流れを変えるべく、やや大きなサークリング。

中盤~柴田は相手の打ち終わりに速いコンビを叩きこむ作戦。

前半溜めて後半仕掛けるパターン。

 

10-9サルディバル

 

5R、両者の技術レベルは高い。

お互いトップクラスの強打の持ち主だが、寸でのところで危険回避する様は緊張感と共に感動すら覚える。

後半仕掛けた柴田だが、サルディバルの時間が多かった。

 

10-9サルディバル

 

6R、前半柴田は定評のある上体の動きでサルディバルの右をかわすことに専念。

攻撃は連打よりも機を見て単発を上下に打ち分け。

そして後半、左フック好打から、コンビの機会を覗う

 

10-9柴田

 

7R、サルディバルはもう少しボディーを狙うべきだが、上へのパンチに執着。

堅実なガードをやや下げて打ち出しを更にスピードアップするが、動きの速い柴田を捉えきれない。

終盤サルディバルの力強いコンビが上下に入り、ポイントはサルディバル。

 

10-9サルディバル

 

8R、サルディバルはホームの利も有るのだろうが、徹底して技術で対抗。

このラウンド柴田は左ジャブを打ち始める。

そしてまたいきなりの右と速い動きで的を絞らせない。

 

10-9柴田

 

9R、サルディバルもまさにラティゴ()のような左も繰り出すが、動く柴田を捉えられない。

但し諦めずにパンチ繰り出すサルディバルへポイントが流れた?

 

10-9サルディバル

 

10R、柴田開始からやや攻めていく。

いきなりの右アッパーを放つなど手法を変えてくる。

また徹底したいきなりの右。まさに右ジャブだ。

そして意を決して左フックを叩き込み、サルディバルと打ち合い開始。

この打ち合いは、柴田のスピードと角度あるパンチが上回る。

そして前近代的かもしれないが、ダック2回でパンチ躱した後にまさにいきなりの右をつるべ打ち。

嫌がるそぶりのサルディバルも意地で打ち合うが、柴田のパンチに激しい出血。

ゴング前に左フックがアゴにクリーンヒット。

 

10-9柴田

 

11R、サルディバルも効いているはずだが、大歓声にまだパンチを繰り出す。

しかし柴田のスピードとは段違い。

柴田いきなりの右三発から左ジャブ連発と創造的な攻撃。

出血の激しいサルディバルへ左ジャブ多用。

ただサルディバルも意地で連打をヒット。回転力を強めて来る。

ただ逆に柴田が打ち返し、ゴング。凄い展開。

 

10-9柴田

 

12R、サルディバルも未だ迫力のあるボディー攻めで迫るが、柴田の集中力は途切れない。

そして柴田の右ストレートがかなり深く入り、更に追撃の右もヒット。

タフなサルディバルもたじろぐ。

顔面、トランクスも血だらけだ。

ポイント確信した柴田は、慎重にラウンドをやり過ごす。

10-9柴田

 

13R、ゴング応じる為に立ち上がったサルディバルだが、セコンドに棄権を勧められ、柴田の殊勲の王座奪取。

敵地という事を鑑みれば、ファイティング原田以上の殊勲と言っても良いかも?

サウスポーキラー。そしてメキシカンキラー(通算81)柴田の誕生だった。

 

この柴田の戦いはラテンの男たちを夢中にさせた。

沢山のセキやシバタが産まれたとか??

 

未だにメキシコでは「セキ」「シバタ」の名を覚えているオールドファンは多い。

具志堅がフローレスに王座を明け渡した際に

「これでサルディバルの借りを返した」との声も上がったらしい。

 

日本拳闘史上に燦然と輝く柴田の歴史的勝利だった。