保護施設に来てから、
アレンはずっと不安だった。
知らない匂い。
知らない声。
たくさんの犬たち。
夜になると、遠くから犬の鳴き声が聞こえた。
アレンは小さく体を丸めて、静かに目を閉じるしかなかった。
そんな毎日の中で、アレンにできたたった一匹の友達。
大きな体の、優しいシェパード。
最初は怖かった。
アレンの何倍も大きな体だったから。
でも、そのシェパードは一度もアレンを怖がらせることはなかった。
ただ静かに隣に座り、時々、優しく鼻を近づけてくれた。
それから二匹は、いつも同じ場所に座るようになった。
朝、スタッフさんが来ると並んで外を眺めた。
昼は同じタイミングで眠り、
夜も同じ方向を向いて座っていた。

言葉はなくても、
アレンにはわかっていた。
「この子は友達だ。」
保護施設での毎日は、
少しだけ怖くなくなっていた。
でも、ある日の朝。
施設のドアが開き、スタッフさんと知らない人が入ってきた。
その人たちは、シェパードの前でしゃがんだ。
「この子にします。」
スタッフさんは優しく言った。
「今日から新しいお家だよ。」
シェパードは、ゆっくり尻尾を振った。
リードがつけられた。
アレンは、少し離れたところからその様子を見ていた。
何が起きているのか、アレンにはよくわからなかった。
でもシェパードが施設の出口に向かって歩き出した時。
アレンの体は自然に立ち上がっていた。
小さく、かすれた声で鳴いた。
「クゥン…」
シェパードは足を止めた。
そして、ゆっくり振り返った。
しばらく、アレンの方を見ていた。
何も言えないけれど、
まるでこう言っているみたいだった。
「大丈夫。」
「アレンにも、きっと来るよ。」
「優しい人が。」
シェパードはもう一度
小さく尻尾を振った。
そして、ドアの向こうへ消えていった。
ドアが閉まったあとも、
アレンはしばらくその場所に立っていた。
いつも隣にいた場所は、空っぽだった。
その日、アレンは少しだけ寂しかった。
でも、アレンの心の中には初めてできた友達の記憶が残っていた。
優しかったシェパード。
そして、
いつか来るかもしれない
新しい出会い。