シェパードがいなくなってから、 施設の時間は、前と同じように流れていた。
朝になれば、スタッフが犬たちにごはんを配る。
昼には散歩。夜になると、また静かなケージの時間。
何も変わっていない。
でも、アレンの世界だけは少し変わっていた。
いつもシェパードがいた柵。
そこは、空っぽになった。
アレンは毎日、その場所を見てしまう。
もういないと分かっているのに。
それでもつい目で探してしまう。
ある日、新しく来た犬が、隣のケージに入ってきた。落ち着かず、ずっと吠えている。
怖いのだろう。
昔のアレンと同じだった。
アレンは少しだけ近づいた。
そして、静かにその犬を見た。吠える声は少しずつ小さくなった。
アレンは何もしていない。
ただ、そこにいるだけ。
その落ち着いた空気はシェパードが持っていたものに似ていた。
夕方。スタッフが小さく笑った。
「アレン、少し大人になったね。」

アレンは意味は分からない。
シェパードと一緒に見た空。
シェパードと歩いた散歩道。
それはまだちゃんと覚えている。
夜、 施設が静かになる。
アレンは丸くなって目を閉じる。
その時、夢の中で時々シェパードが出てくる。
一緒に歩いている夢。
隣で静かに座っている夢。
夢の中のシェパードはいつも同じ顔をしている。優しい目で。
まるで言っているみたいに。
「大丈夫だよ。」
アレンの物語は、まだ続く。
この施設でまだいくつもの出来事が待っている。
そしていつか、本当の運命に出会う日が来る。
でもそれは、まだ少し先の話。