日本の縄文土偶を観察すると、乳房が大きく膨らんだ造形が非常に少ないことに気づきます。 乳房は子どもの生命維持に欠かせない重要な器官であるため、本来であれば土偶に強調して表現されても不思議ではありません。 縄文時代の栄養状態が必ずしも良くなかったとしても、乳房を大きく造形することで「豊かな母性」への願望を表現することは可能だったはずです。
太陽十字(日がさ)
太陽十字(日かさ)
しかし実際には、縄文土偶は乳房よりも 頭部や身体全体の象形的な造形 に重点が置かれているように見えます。 特に板状土偶では、十字形の文様が非常に多く見られます。 私はこれを 「日がさ(太陽十字)」の象徴 と捉えています。 中央の円形を頭部=太陽の中心と理解し、四方に伸びる直線(太陽アーク)を手足として表現したのではないかと考えています。
また、日がさの二重の同心円は「卵」の象徴として読むことができます。 中心の黄身から生命が生まれるように、縄文人はこの部分を 生命誕生の核 として重視していた可能性があります。
体全体にⅭ形湾曲文(特に頭の上に多くあります)
頭の上にⅭ形湾曲文
頬にⅭ形湾曲文
さらに、土偶の頭部には「C形湾曲文」が多く見られます。 私はこの湾曲文を 胎児の姿 を象徴するものと考えています。 縄文人は、頭部を「生命が誕生する場所」「霊魂が宿る場所」と捉えていたのではないでしょうか。 肉体と霊魂は別の存在であり、この二つが融合することで人はこの世に生まれ出る―― そのような生命観が土偶の造形に反映されているように思われます。







