古代中国では、月に住む兎は「玉兎」と呼ばれ、特別に崇められてきました。 月で不老不死の薬を杵(きね)と臼で搗(つ)く姿は、画像石や帛画(はくが)に数多く描かれています。 また、玉兎のそばにヒキガエルが描かれる例も多く、月の霊獣として重要な位置を占めています。

 

月は古代中国で「死んでは復活する天体」と理解されました。 一方、兎は繁殖力が非常に強く、生命力と子孫繁栄の象徴とされました。 兎の妊娠周期が月の満ち欠けとほぼ一致するため、 月=再生、兎=生命力 という象徴が自然に結びつきました。

 

 

魏の張華『博物志』には 「兎は月を望んで孕(はら)み、口から子を吐く」 と記され、兎は月の気を受けて妊娠する霊獣と考えられていました。 これは、兎が交尾せずとも月の光を受けて生命を宿すという、 月と兎の再生力を結びつけた象徴的理解です。

 

 

 

私はこれに加えて、夜空に輝く 兎座(Lepus) と、 そのすぐ上に位置する オリオン座 が、 「兎が杵(きね)で薬草を煎じる」という玉兎のイメージの起源になったと考えています。

日本ではオリオン座は「鼓星(つつみ)」と呼ばれ、杵の形に見立てられています。 またオリオン座は古代エジプトでオシリスの星座とされ、 再生・復活の象徴 として理解されていました。

 

 

兎の繁殖力=生命の循環 オリオン座=再生・復活 月=死と再生の循環

この三つが重なり、 兎(生命力)+オリオン(杵)+月(再生)=不老不死の象徴体系 が形成されたと考えられます。