古代の壁画や土偶には、瞼のような形が数多く描かれています。 これは直線的なひし形ではなく、わずかに湾曲した柔らかな輪郭を持つ形で、古代エジプトの土製品には、この形の内部に人間が横たわる姿が表現された例もあります。私は、この瞼形意匠を、古代の人々が「さなぎ」として理解していた可能性が高いと考えています。

 

エジプトの土製品

 

舟形土器

 

舟形土器

 

甕棺墓は、この瞼形を立体化した構造であり、死者を包み込む容器として「再生の殻」を象徴していたと解釈できます。 また、中空土偶の胸や膝にも同様の瞼形が描かれ、舟形土器もこの形態に通じています。これらは、閉じた殻の内部で生命が変容するという観念を共有しているように見えます。

 

中空土偶

 

甕棺墓

 

瞼そのものが膨らみを持つことから、古代人はこの形を「生命を宿す器」として捉え、 天照大神や月読命の誕生神話における象徴的表現へと昇華させた可能性があります。 瞼形意匠は、死と再生、暗闇から光への転化を示す〈さなぎ〉の形として、古代信仰の根底に存在していたと考えられます。