私は、諏訪の習俗と古代エジプト文化の奥底には、深い共通性が存在していると感じています。この二つの文化の間に関連性を指摘する研究者はほとんどいませんが、特に「色彩」と「死生観」の象徴体系において顕著な共鳴があるように思われます。

 

 

 

 

諏訪大社の宮司や禰宜が着用する狩衣は、赤・緑・黒・白・黄などの単色で、紋様を持たないものが多いように見受けられます。とくに上位神職ほどこの傾向が強いと感じています。この色使いは、古代エジプトの壁画や神々の描写に見られる色彩と非常によく似ています。

 

アヌビス

 

イシス

 

オシリス

 

冥界の案内人であるアヌビスは、全身が黒く描かれ、首には金色のティエト(生命の結び目)をつけています。冥界の女神イシスは生命を復活させる力を持ち、赤い衣装と赤い鉢巻で表現されることが多いです。冥界の王オシリスは、再生と復活の象徴として白い衣装と緑色や濃い青の身体で描かれます。

 

ベンベン石

 

ツタンカーメン黄金マスク

 

また、古代エジプトの宗教建築においても色彩は重要な意味を持ちます。ピラミッドの頂上にはベンベン石が置かれ、かつては金箔で覆われていたため、太陽光を受けて黄金の輝きを放っていました。ピラミッド自体も現在より白く、強い光の象徴でした。ツタンカーメンの黄金のマスクに見られるように、金は神聖性と永遠性を表す重要な素材でした。

 

 

ミイラ

 

さらに、エジプトのミイラは薬剤によって黒色化し、身体を包む布は白色です。この「黒と白」の対比は、死と再生、闇と光の象徴として機能しています。

これらの古代エジプトの色彩体系と、諏訪大社の神職装束に見られる色使いは非常に近く、私は両者の間に深い象徴的共通性が存在していると考えています。色彩は単なる装飾ではなく、死生観・再生・神聖性を表す記号として機能しており、両文化の奥底に共通する古層の信仰構造があるのではないかと感じています。

 

※ 諏訪大社の写真はオマツリジャパンさまよりお借りしました。