青森県の川原平遺跡から出土した土器には、矢の先端が三叉に表現された文様があります。この三叉の矢については、従来ほとんど的確な解説がありませんが、私は縄文人がそこに深い象徴的意味を込めていたと考えています。

 

 

 

 

古代の人々は形に非常に敏感であり、形そのものに力やエネルギーが宿ると捉えていたと考えられます。特にトーラス構造のエネルギーの流れや形態を、あらゆる方向から表現しようとしていたと私は見ています。

この三叉の矢は、トーラス構造におけるエネルギーの放出部分を象徴していると考えられます。トーラス構造を平面化した「八咫鏡の構造」の中心も三叉で表され、上側はエネルギーの流入、下側はエネルギーの解放を示します。川原平遺跡の土器に描かれた三叉の矢は、この「解き放たれるエネルギー」を表現したものと捉えられます。

 

 

また、この土器の矢の両側には半円状の形が付されていますが、これはトーラス構造を平面から見た際の左右の回転エネルギーを示していると考えられます。

 

 

諏訪大社の御柱の先端は鋭く尖っています。私はこれを「矢」の象徴と捉えています。守矢・洩矢の系譜に連なる「矢」の観念です。目処梃子を付けた上社の御柱が三叉状になることも、同じ象徴体系の中で理解できるでしょう。古代の人々は形象を自在に変換し、異なる祭祀・道具・宇宙観を同じ象徴構造で結びつけていました。

さらに、弓の両端に描かれた三本の横線は、縄文人が重視した「三本指」の象徴を表していると考えられます。矢の右側に描かれた正方形は、八咫鏡の中心にある潜象界・現象界の正方形とも響き合います。

 

 

 

以上のことから、この土器の弓矢文様は、トーラス構造のエネルギー循環を感覚的に表現したものと考えられます。特に八咫鏡の構造を理解した上で描かれた可能性が高いと見ています。トーラスは永遠の循環を象徴しますから、縄文人が食糧となる動物の命が絶えず巡り、永続的に捕獲できるよう願いを込めた祈りの図像であったと推察しています。

 

※ 矢の土器の写真は及川靖紀さんよりお借りしました。