是川遺跡の合掌土偶の胸から腹部にかけて描かれた直線状の点列について考察します。 このような胸部から腹部へ伸びる直線は、他の縄文土偶にも頻繁に見られる表現です。私はこの直線が 妊娠と深く関係している と考えています。
この直線状の点列についてくわしく説明している人はほとんどいないと思います。
合掌土偶を見た人の印象は体全体がスマートですし、ロボットや男性的なイメージを持つ人が多いと思いますがこのお腹の直線の形態がとても重要です。
土偶の女神像には、痩せた体つきのものも多く存在します。お腹が大きく膨らんでいない、胸が強調されていないと「女神ではない」と考える人もいますが、私はそのようには捉えていません。むしろ、この直線こそが
妊娠を象徴する重要な記号 であると考えます。
妊娠すると、多くの女性の腹部には 黒い正中線が現れます。土偶の直線は、この妊娠時に目立つ正中線を表現したものではないでしょうか。
さらに、古代のアニミズム的世界観では、あらゆる物体に霊魂が宿ると考えられていました。母の胎内の胎児にも霊魂が宿ると信じられていたはずです。
その視点から見ると、この黒線は 霊魂が胎児へと降りてくる通路 を象徴しているとも解釈できます。
トーラス構造で考えると、ドーナツ型の中心軸はエネルギーが流れ、循環し、再生が起こる場所です。縄文人は、妊娠時に現れる正中線と、霊魂が胎児に宿る通路という観念を重ね合わせ、この直線を
再生・復活の中心軸 として表現したのではないかと考えています。
合掌土偶の胸から腹へ伸びる直線は、 妊娠の身体的現象 × 霊魂の通路 × トーラスの中心軸
という三つの象徴が融合した、縄文的宇宙観の核心を示す記号であるといえるでしょう。




