遮光器土偶の手の指について考察します。一般には「二本指で握った形/左上の遮光器土偶の指」と想像されることが多いのですが、私は 四本の指で握った形 を表現したものと考えています。鳥類の指は多くが四本であり、図像化された鳥の足が三本で描かれることが多いのは、表現上の簡略化によるものと見られます。

 

左がカラスの指 右がフクロウの指

 

私は遮光器土偶を フクロウをモチーフとした像と捉えています。そのため、まずフクロウの指の構造を確認する必要があります。フクロウの足の指は第4指(趾)の可動域が広く「可変文趾足」といわれ、枝や獲物、平面に立つ時に第4指(趾)の位置を変えます。この四本の指を枝に巻きつけるときには指は「✖」の形をつくります。

 

 

 

この「✖」形は古代において 再生・復活 を象徴する形であり、十字(+)と同様に神聖視されてきました。遮光器土偶の握った指の形は、このフクロウの「✖」形と響き合うと考えています。

 

 

 


 

さらに、この握り手の形はアイヌ文様の モレウ(渦巻文様)とも共鳴します。左右対称の渦が結びつく構造はトーラス構造の左回りの渦、右回りの渦と共鳴し、より強い

再生・復活の象徴 を形成していると考えられます。遮光器土偶の指の形はモレウの形に似ていないと思われますが土遇で指の形を渦巻に表現するのは難しくこのような形に表現したと考えています。

 

 

この指の形を重要視する研究者は多くありません。しかし、縄文人はこの形に強いこだわりを持っていたと私は考えています。なぜなら、土偶の胸部、耳、頭頂の束ね髪など、身体の各部に同様の形が繰り返し表現されているからです。こんなに多くの所に指の形を表現している事はこの形を非常に重要視していると考えてもいいと思います。

 

 

 

モレウ文様(渦巻文様)との共鳴を考えると、縄文人はアイヌ文化と深い精神的連続性を持っていた可能性があります。アイヌがフクロウを守護神として崇めたように、縄文人にもフクロウを特別視した時期 があったと推測されます。縄文人は新しいエネルギーが生まれ出るには渦巻が必要であり、この渦巻の重要性を認識していたと思います。また枝に止まる時のフクロウの指の形から✖と渦巻でまさにトーラス構造の中心のエネルギーの流れと共鳴していることを感覚的に察知し、この指の握った形を体のいろいろな部分に表現したと私は考えています。

 

※ 『生き物解説』「フクロウの体の秘密をさぐれ!~夜のハンターのすごい工夫~」さんから写真をお借りしました