古代エジプトの一般的な墓の上部や入り口には「魂の家(ソウルハウス)」が置かれていました。 この魂の家は当時の一般住宅を模した造形で、内部にはパン・肉・野菜・果物などの供物を置くための空間が設けられ、実物の供物が置かれる場合もあれば、レプリカや絵で象徴的に表される場合もありました。また、水やビールを注ぐための設備も備えられていました。

 

私は、この魂の家は日本における神棚や仏壇に相当する存在だと考えています。日本でも供物として水、お茶、ご飯、野菜、白米などを供える習慣があります。とくに魂の家に水を灌ぐ行為は、日本のお墓に水をかける行為と深く共鳴しているように感じられます。

 

 

一般的には、魂の家はカー(生命力)が供物のエネルギーを受け取ることで力を維持し、再生・復活の循環を保つための装置と理解されています。古代エジプトでは、死者が生き続けるためには食物と飲み物の供給が不可欠だと信じられていたためです。

 

しかし私は、カーだけでなくバー(人格・魂の可動的側面)もまた、この魂の家と外界を循環していたと考えています。魂の家には柱が設けられることが多く、古代エジプト人が柱を神の依代として重視していた可能性もあります。水を流す行為は、清浄・魔除け・再生・復活を象徴する重要な儀礼だったのかもしれません。

 

現代の日本では、神棚や仏壇への供物は形式的な行為になりつつありますが、古代においてはエジプトの魂の家と同じように、祖先や神々の力を受け取り、亡くなった霊魂の拠り所となり、再生・復活を支える場としての意識があったと考えられます。