古代エジプトでは、夜空に輝く星 シリウス(上の写真で鳥居の上に輝く星がシリウスです) が非常に崇拝されていました。

古代エジプトといえば「太陽信仰」のイメージが強いものの、実際には星の動きも同じくらい重要視されていたのです。

 

シリウス

 

一般的に、シリウスは**イシス(再生の女神)**と結びつけられていました。

イシスは頭に「ティエト(イシス結び)」や玉座(椅子)の象徴を戴き、大きな翼を広げた姿で表されます。

彼女はファラオが死後に冥界へ入った際、魔術によって現世へ復活させる存在と考えられていました。

では、なぜシリウスがこれほど崇拝されたのでしょうか。

その理由は、一年の星の動きを追うことで明らかになります。

 

シリウスは夏の夜空には見えません。

しかし古代エジプトでは、**シリウスのヘリアカル・ライジング(太陽が昇る直前に初めて見える現象)**が

毎年ほぼ同じ時期に起こりました。

 

見える時期

 

• 7月頃(古代エジプト暦の新年)

その直後に起こること

 

• ナイル川の氾濫(=雨季の始まり)

エジプトは雨がほとんど降らないため、

「雨季」といっても日本のように雨が降るわけではありません。

エチオピア高原の雨季による上流の増水が、ナイルに押し寄せる時期を指します。

 

シリウスが重要だった理由

 

● 1. シリウスが見えるとナイルが増水する

ヘリアカル・ライジングは、ナイル氾濫の開始とほぼ一致していました。

 

● 2. 農業の始まりを告げる

氾濫 → 土壌が肥沃になる → 農耕開始

という生命のサイクルのスタートを知らせる星だったのです。

 

● 3. イシス女神の象徴

• シリウス=イシス

• オリオン=オシリス

という神話的対応があり、

シリウスは再生・復活の星として崇拝されました。

 

 

オリオン座との関係:冥界と復活の星

 

オリオン座も冬によく見える星で、夏にはほとんど見えません。

このことから、古代エジプト人は**夏に見えない時期を「冥界」**と捉えていたと考えられます。

 

そして、ナイル川の氾濫の頃、

太陽が昇る直前の東の空にオリオン(オシリス)が再び姿を現すことで、

人々はこれを復活の兆しとして崇拝したのでしょう。

 

 

オシリス

 

古代神話には「水から神が生まれる」というモチーフが多く見られます。

シリウスのヘリアカル・ライジングとナイルの氾濫(水)の一致は、

生命の誕生・存続の根源的な象徴として理解され、

シリウス崇拝の中心的な理由となったと考えられます。