家形埴輪の屋根の形が「舟」に見える──私はそう感じています。
しかし、書籍やネットではそのような解釈はほとんど見られません。
屋根や柱について長く思索を重ねてきましたが、今回は家形埴輪全体を総合的に考察してみたいと思います。
古代の人々は、屋根や柱に強い思いを込めていたと私は考えています。
インドネシアのトラジャ族の伝統的家屋「トンコナン」も舟形の屋根を持ち、そこからも古代人の思想がうかがえます。
トンコナンの室内は三つの部屋に分かれており、中央の部屋は祖霊との交信の場とされ、死者の遺体が安置されます。
高貴な人物の遺体は、正面の「精霊の戸口」から運び出されます。
この戸口には、十字架や三角の中央に直線が入った形が見られます。(下の写真)
十字架は再生・復活・変容の印であり、三角の中央の直線は「股(また)」──女性器外観の象徴とも解釈されます。
この屋根の形は舟を表しており、当時の人々にとって舟は長距離移動の重要な手段であり、愛され、大切にされていました。
その舟を、最も重要な建築要素である屋根に表現したのだと思います。
この舟は、川や海だけでなく、天空や冥界(死後の世界)をめぐるものとしても考えられていたと思われます。
家形埴輪には、六本の足を持つ高床式のものが多く見られます。
私はこれを、糞転がしの甲虫──スカラベの六本足を象徴していると考えています。
古代エジプトでは、この甲虫はケプリ神として崇拝されていました。
ケプリ神は朝日の神であり、再生の神です。
船や棺の中のミイラの胸、太陽などと深く関連し、壁画にも多く描かれています。
舟は単なる移動手段ではなく、死後の世界を渡り、霊魂を運び、現世に生まれ変わるための重要な乗り物だったのです。
つまり、舟とケプリ神は切っても切れない関係にあります。
家形埴輪は、六本柱と舟形の屋根を融合させた構造であり、まさにその思想を体現しているのではないでしょうか。
さらに、鰹木(右下の写真)が乗っている埴輪も見受けられます。
私は鰹木を、棺(ミイラ・死体・霊魂)やさなぎの象徴と捉えています。
それは、舟に乗って冥界をめぐり、再び現世に再生することを表しているのです。
以上のことから、家形埴輪は祖先の霊魂の拠り所であり、再生・復活・変容の願いを叶えるための重要な形として、古代の人々に尊ばれていたのだと私は考えています。






