五重塔の心柱の頂にある「九輪(くりん)」は、胎蔵界曼荼羅に描かれる九尊の仏を象徴すると言われています。しかし、金剛界曼荼羅を象徴する構造は存在しないのか――そんな問いを抱きながら、素人ながら五重塔の構造を調べてみました。
胎蔵界曼荼羅は仏の慈悲を、金剛界曼荼羅は仏の智慧を表すとされ、両者を併せて「金胎両部曼荼羅」と呼び、寺院では並べて掲げることが多くあります。果たして五重塔の構造そのものに、金剛界曼荼羅の象徴が秘められているのではないでしょうか。
胎蔵界曼荼羅
五重塔は正四角形の平面を持ち、中心に心柱が立ち、五層の屋根が重なる構造です。基礎部分には「台輪(だいわ)」と呼ばれる枠があり、その上に力肘木、通肘木、雲斗・雲肘木などの部材が積み重ねられ、屋根が形成されていきます。
この構造を真上から見ると、九つの正方形が同心円状に配置されているように見え、金剛界曼荼羅における九つの「会(え)」――すなわち九つの仏の智慧の領域――と重なる印象を受けます。古代の人々は、金剛界曼荼羅の宇宙的構造を五重塔の建築に投影したのではないかと考えられます。
金剛界曼荼羅
さらに「台輪」の「台」という漢字は「ム」+「口」で構成され、「ム」は数字の「6」に、「口」は「〇(円)」に変換できます。漢字には「〇」は存在しないため、「口」がその象徴と見なされるのです。また「輪」は回転する渦を表し、循環とエネルギーの象徴でもあります。
このように、五重塔の基礎の骨組みと屋根の九つの区画(=金剛界曼荼羅の九会)は、回転する渦巻きのように仏舎利の智慧のエネルギーを放出する構造になっていると考えられます。そして、塔の頂にある九輪が象徴する胎蔵界曼荼羅の慈悲の力と融合することで、金胎両部の曼荼羅的エネルギーが空間に満ち、強い霊的パワーが放たれているのです。








