蛙は古代において、単なる生き物以上の意味を持ち、再生・変容・魂の象徴として崇められてきました。中国の神話や日本の信仰、陰陽道の思想、そして太陽ピラー現象を通して、蛙が「北」と「月」に結び付けられる象徴性を探ります。

 

 

 

 

中国の神話には、兎と蛙が月で不老長寿の薬を作っている場面があります。蛙は古代より、諏訪大社の「蛙狩神事」や『鳥獣人物戯画』、土偶や土器などに描かれ、神聖視されてきました。その存在は、月や北方の象徴として捉えられることが多くあります。

 

 

蛙は一度に500個以上の卵を産み、卵からオタマジャクシになり、やがて手足が生えて水中から陸へと移動し、水陸両生の生活を送ります。この変容の過程は生命の進化や変容を象徴し、古代人に深い印象を与えたと考えられます。

 

 

 

 

 

古代中国では、北方には玄武(亀と蛇が融合した神獣)が配置され、蛇や亀の多くが冬眠するように、蛙もまた穴の中で冬眠します。暗い土中の穴は夜を想起させ、土自体が「母なる大地」とみなされていた古代において、暖かくなると穴から蛙が出てくる様子は、人間の誕生や再生と相似して捉えられたのではないでしょうか。

 

 

 

 

古代人は、〇(球体)に尾ひれがついた形状を「魂」や「霊魂」の象徴と考えていました。オタマジャクシや蛇の姿はその形に通じ、蛙は成長に伴い何度も姿を変える生き物です。蛇も脱皮を重ねる存在であり、両者は「再生」や「復活」「変容」の象徴として崇敬された可能性があります。

 

 

「太陽柱(サンピラー)」(上の写真)もまた、〇の尾ひれのような形をしており、魂や神の顕現と見立てられたと考えられます。この自然現象は、−15℃~−20℃以下で、特に早朝や夕方に現れることが多く、温暖な南方ではほとんど見られません。日本では北海道など北方で多く観察されるため、蛙と北方が結びつけられ、「魂・神は北から訪れる」という信仰につながったとも考えられます。

 

 

また、地球の磁力線は南から北へ向かう流れを持ちます。日本の多くの神社の本殿が北にあることからも、北を「魂が宿る方角」とする思想が広く浸透していたことがうかがえます。

 

 

蛙は夜になると鳴き交尾を始めます。昼間の鳴き声は外敵を招くため、月夜との交尾には生存戦略の意味合いだけでなく、古代人にとって「月と命の再生」の神聖な象徴でもあったのではないでしょうか。

 

 

太陽と雨(水)は古代において極めて重要な自然要素でした。北方に位置する北極星と、その近くにある北斗七星(ひしゃくの形)は水を象徴し、蛙は「北の水の精霊」としての側面も帯びていた可能性があります。

 

 

 

 

 

水神である龍神の存在とも照らし合わせれば、蛙は水の民の精霊と見なされ、人々の命や再生を司る存在として信仰されていたのかもしれません。