古代出雲に伝わる八岐大蛇(やまたのおろち)の神話を、蛇信仰・神紋・製鉄文化の観点から考察。八つの頭や尾、赤い目やただれた腹の意味とは?縄文以来の蛇信仰や出雲王国との関連性を紐解きながら、「八千矛」の象徴とのつながりを探つてみます。
ネットのブログや書籍では、八つの頭と尾を持つ八岐大蛇は、しばしば「大蛇」や「竜」として描かれています。蛇や竜は水と深い関係があるため、島根県の斐伊川(ひいかわ)がモデルとされることが多いですが、それ以上の詳細が語られることは少なく、なぜ八つの頭と尾を持つのかも明確な説明は見当たりません。
八岐大蛇の外見については、血走った赤い目や、真っ赤にただれた腹を持つといった描写があります。ネットや書籍の情報を参考にしつつ、私自身の視点から考えてみました。
蛇や竜が水と深い関係を持つことから、八岐大蛇の舞台が出雲の斐伊川であるのも納得できます。さらに、出雲の国では古くから蛇や竜を神聖視し、神として祀っていました。縄文時代にまで遡る蛇信仰が出雲にも強く影響していたと考えられます。
全国各地で、樹木に藁蛇を巻いた形が見られますが、これは縄文時代から続いている蛇信仰の一端であり、特に出雲がその発祥地とされることもあります。
出雲では「八」や「三」が特別な数字として頻繁に使われてきました。例えば、大名持や少名彦の名に「八」が含まれていたり、さまざまな物事に「八」を付けて呼ばれています。
「岐(ちまた)」は道の分岐を意味し、「股(また)」と似た意味を持つ言葉として捉えることができます。八岐大蛇は八つの頭を持つため、「岐」を七つとする見解もありますが、立体的に見れば八つの「岐」が存在すると考えられます。
私はこの「八岐(やまた)」が、出雲王国八代目の王である「八千矛(大国主命)」の神紋を象徴していると考えています。
生前、大国主命は「八千矛」 という名前でした。
島根県に大国主命を祀っている神社があります。下の写真が「八千矛山大国主神社」です。赤い円で囲まれた神紋では、中心から八方に矛が広がって描かれており、その矛と矛の間が「岐(また)」、「股(また)」であると解釈できます。
下の図は上の神紋を簡略化して説明したもので、八つの「岐」、「股」が示されています。
「八岐大蛇」の「八」は上の図の中心から八つの直線を「八つの首」、「八つのしっぽ」、小さな〇を「八つの頭」と表現したと考えられます。
ですから「八千矛(大国主命)」の神紋をもとに「八岐大蛇」をあらわしたと思います。
八岐大蛇の赤く血走った目については、中国地方の砂鉄に「真砂砂鉄」と「赤目(あこめ)砂鉄」という二種類があることから、「赤目砂鉄」を象徴しているのではと考えています。
腹が真っ赤にただれている描写は、「野だたら」と呼ばれる製鉄法で、炉から流れ出る銑鉄の様子を表している可能性があります。
総じて、八岐大蛇(やまたのおろち)は大国主命を象徴する存在であり、広い意味では出雲王国そのものを表しているとも考えられます。
大国主命は国譲りをしたということになっていますが、この神話は、スサノオと大国主命、あるいはスサノオ勢力と出雲勢力の間で行われた戦いを象徴していると私は捉えています。




