フォーカルレデューサーは、焦点距離を短くしたいときに使用します。 
 

焦点距離を短くすることは、「倍率が下がる」「視野が広くなる」「明るくなる」ことを意味します。 
電視観望において、「倍率が下がる」は意味がありません(倍率を下げたければ、画面上で小さく表示すれば良いだけです)。 
「視野が広くなる」はメリットが大きく、観測対象が大きくて画面からはみ出す場合、画面の中に収めることができます。また、目的の天体を画面内に導入しやすくなります。 
「明るくなる」についてもメリットがあり、露光時間を短縮できたり、より暗い天体を観測できたりします。なぜ明るくなるのかというと、より広い範囲の光をセンサーに集めているからです。 

 フォーカルレデューサーにはさまざまなサイズのものがありますが、アメリカンサイズ(1.25インチ)のバレル先端にねじ込んで使用するタイプが手軽で使いやすいです。また、サイズが小さいため安価です。ただし、小さいためレンズの加工精度がシビアに反映されてしまう傾向があります。倍率は0.5倍~0.75倍ぐらいのものが販売されています。

フォーカルレデューサーは、センサーからの距離を適度に調節しないとピントが合いません(*1)。ピントが合う範囲内での調整になりますが、センサーからの距離が長くなるほど倍率が低くなります(*2)。 

 

今回は、アメリカンサイズの0.5倍フォーカルレデューサー2種類を比較してみたいと思います。両方ともアマゾン等で購入できます。 

SVBONY 補正レンズ 望遠鏡用アクセサリ 望遠鏡フォーカルレデューサー 0.5X M28.5X0.6 (1680円)
笠井トレーディング GSO 0.5x 1.25インチフォーカルレデューサー 31.7mm径 (2750円)

 光学製品としては安い部類ですが、①と②で価格が2倍ぐらい違います。①で十分な性能なら①を使いたいところです。僕は、まず①を購入して使用を開始しましたが、十分な結果が得られなかったため(後述)、②を追加で購入しました。 

なお、②は台湾GSO社品であり、「AstroStreet GSO 0.5x フォーカルレデューサー 1.25インチ(31.7mm)径 台湾製」も同じものと思われます。 

左が①、右が②です↓


 ①と②の外観を比べてみると、②の方がレンズ部分の面積が大きいことが分かります(全体の外寸は当然ですが1.25インチで同じサイズです)。また、レンズを通して方眼紙を拡大してみると、①は周辺部分が歪んて見えますが、②は周辺部まで方眼の目が垂直に交わって見えます。

 

①(左)より②(右)の方がレンズが大きいです↓

 

 

②は2枚玉とスペック表に明記されていますが、①は1枚レンズのようです。コーティング(*3)は①は片面、②は両面に施されているようです。 

コーティングの様子↓
 
レンズに蛍光灯の反射が2つずつ写っています。レンズの表面と裏面の反射光です。コーティング無しの場合、反射光は蛍光灯そのままの色(白色)ですが、コーティングされていると緑や赤に色づいて見えます。①はレンズ手前側の反射光が白く、コーティング無しのようです。②は両面にコーティングされていることが分かります。写真では分かりにくいですが、②の張り合わせ面は反射光が白く、コーティング無しのようです。

 

次に電視観望で使用してみます。レデューサーなし/①/②の比較です。(それぞれ撮影日が異なりますので、シーイングが異なっていることを前提に比較してください。)

 

レデューサーなし↓

 

①↓

 

②↓

 

①②ともに、「なし」と比較して視野は広くなっていますが、②の方が効果が大きく、スペック値どおり焦点距離が約0.5倍(視野が2倍)になっています。また①は像の周辺が歪んでいますが、②は周辺部まで星が点像に近いです。やはり、値段差による性能差があると言えそうです(あくまでも、僕の使用している機材との組み合わせで検証した結果です)。 

 

細かいことを言うと、②を撮影した日は満月で空が明るかったため、周辺部の空の色がわずかに暗くなっているのが分かります。フォーカルレデューサーを使用すると、周辺部の減光が起こることがよくあります。①を撮影した日は、空が暗かったため周辺減光の様子が分かりにくく、実力の程はよく分かりません。

 

フォーカルレデューサーを使用すると、視野が広くなり(0.5倍レデューサーの場合、視野の面積が4倍!)、天体の導入が格段に楽になります。メシエマラソンは時間との勝負ですので、フォーカルレデューサーを使用して挑みたいと思います。


 

*1 過去の記事: フォーカルレデューサーでピントが合わない件

 

*2 例えば、0.5倍として販売されているフォーカルレデューサーを使用した場合、センサーからある距離で0.5倍となり、それよりフォーカルレデューサーを近づけると0.7倍として機能するといった具合になります。0.5倍となる距離より遠ざけたると、ピントが合わなくなります。

 

*3 レンズに入ってきた光は、レンズ表面で一部が反射してしまうため、100%透過しません。そこで、反射を抑制するコーティング加工を施し、透過率を上げます。レンズが1枚増えると約10%の光が失われます。望遠鏡の口径面積が10%小さくなったのと同じことだと考えると、コーティングの果たす役割が大きいことが分かります。

レンズコーティングについて分かりやすく解説されているページ→https://global.canon/ja/technology/s_labo/light/003/03.html