(前回のつづき)
今回は、現在入手しやすいアクロマート望遠鏡にはどんなものがあるか整理してみたいと思います。
口径別に一覧表にしてみました。

大きく分けて、3つのエリアに分けています。
赤:最初の1本におススメ!
入門者が望遠鏡を購入する場合、最初に観察するのは、月や惑星(木星、土星など)になるかと思います。
(星雲などの暗い対象(DSO)を狙う場合、眼視観望だともっと大きな口径が必要です。電視観望の場合は、青エリアの鏡筒が適しています。)
月や惑星の観察には、ある程度倍率を上げる必要があるので、焦点距離の長い望遠鏡が適しています。このエリアの望遠鏡が、最初の1本としておススメできます。
青:お手軽電視観望におススメ!
このエリアの望遠鏡は、高倍率には向いていませんが、短い焦点距離を活かして電視観望でお手軽にDSOを観察するのに最適です。本格的に電視観望をする場合は、自動追尾できる架台が別途必要です。
緑:購入は慎重に!
赤や青エリアの性能では満足できないユーザー向けのエリアです。ただし、本稿でも述べてきたように、アクロマート望遠鏡は決して高性能ではありません。赤や青エリアの商品に比べて高価なので、中途半端な投資をした後で「アポクロマートを買っておけばよかった」とならないよう注意が必要です。望遠鏡の性能と自分がやりたいことを比較して、大丈夫かどうか慎重に判断してください。大口径を選択する場合は、コスト面で有利な反射望遠鏡も検討する余地があります。
それでは、口径別に、どのような機種があるのかレビューしていきます。
■口径8cm未満
入門用天体望遠鏡のほとんどがアクロマート鏡ですので、口径8cm未満の製品は無数にあります。全て、初心者向けなので架台がセットになっています。
代表的なモデルを表にまとめました。
中でもおススメは、スペースアイ700です。
おススメポイント1
架台に微動ハンドルが搭載されています、しかも全周微動!このクラスの望遠鏡で見るものと言えば、まずは月、そして慣れてきたら土星や木星だと思います。これらは高倍率での観望が楽しい対象ですが、高倍率での観望では微動ハンドルが必須です。倍率を高めれば高めるほど、すぐに対象が視野から外れてしまうことになるので、100倍以上で微動ハンドルなしで導入/追尾するのは至難の業です。
おススメポイント2
接眼レンズ(アイピース)がアメリカンサイズです。観望に慣れてきたら、アイピースを買い足して倍率を変更することができます。付属の天頂プリズムもアメリカンサイズなので、活用の幅が広がります。
おススメポイント3
架台と望遠鏡の接続が、アリガタ/アリミゾ式です。事実上、業界標準の接続方式なので、今後、架台だけ買い替える、鏡筒だけ買い替える、という選択肢が可能です。
おススメポイント4
のぞき穴タイプとしても使用できる光学ファインダーが搭載されています。光学ファインダーの調整は慣れるまで難しいため敬遠されがちですが、今後ステップアップしていくと必ずマスターしなければならないので、最初から手に入れておくのは悪いことではないでしょう。しかも、このファインダーは脚部分にのぞき穴が搭載されていますので、慣れないうちはファインダーの調整は行わずのぞき穴を使うことができます。
おススメポイント5
鏡筒、三脚が一つにまとまるキャリングケースが付属しています。観測時の持ち運びに便利なのは容易に想像できますが、家で保管する際にも役立ちます。僕は頻繁に使うので出しっぱなしですが、通常は押し入れ等に片付けると思います。その際は、キャリングケースに入れた上で、乾燥剤などを入れて、レンズにカビが生えないように注意するとよいでしょう。
おススメポイント6
架台に簡易ウェッジが搭載されていて、赤道儀として使用できます。星を追尾するのに便利ですし、赤道儀の扱い方を習得することが可能です。
おススメポイント7
実売価格で約22,000円です。これだけの内容でこの価格は、他の入門用望遠鏡と比較しても非常に安いと言えます。
実は僕が一番最初に購入した望遠鏡がスペースアイ700の旧モデルでした。付属のアイピースで月のクレーターはもちろん、木星の縞模様や土星の環もしっかり見えました。決してビクセンの回し者ではありませんが、客観的に見て最もおススメできると思います。
同じビクセンでモバイルポルタA70Lfという商品もあり、こちらは口径が1センチ大きく、架台もしっかりしていて本格的なフリーストップ式なのですが、スペースアイ700よりも1万5千円程度高い割に得られるものが少ない気がします。むしろ、最初の1台は安価なものにしておいて、性能に不満が出てきたら、その不足部分を補えるような機種にステップアップする方が、金銭的な無駄が少ないでしょう(”モバイル”ポルタは、積載可能重量が低く、将来的に活用しにくい架台です。将来的な活用を考えるなら、後述のポルタIIの方が適しています。)。
また、スペースアイ700も決して安くはありませんので、最初の1台として購入するのは躊躇するかもしれません。この場合は、中途半端に投資せず、いっそのことケンコー SKY WALKER SW-0またはSW-50Aからはじめることをお勧めします(SW-0とSW-50Aは、鏡筒部分は全く同じで(表面に印刷されているロゴなどは異なりますが)、付属品が異なるだけです。付属品の内容でお好みの方を選択されるとよいでしょう。)。そして、より上位機種が欲しくなった場合は、その時の要求項目に応じた機種にステップアップされるといいと思います。
セレストロンからは、スマホを使って望遠鏡が向いている位置が分かるナビゲーション機能が付いたモデルが発売されています。入門者は、僕がそうであったように、自分が観察したい星がどこにあるのか探すのに苦労します。ナビゲーション機能のために「セレストロン StarSenseExplorer LT70AZ」を選択するというのもアリだと思います。また、表には記載していませんが、入門用としては、国立天文台望遠鏡キットやコルキットスピカから入るのもアリだと思います。これらのモデルは、光学性能については粗悪品でないことが多くの方が発信されているレビューから分かりますし、自分で組み立てる楽しみもあり、望遠鏡の仕組みを深く理解することもできます。
■口径8cm
長焦点モデルは、激戦区で多数のモデルがあります。
「ビクセン ポルタII AE81M, A80Mf(廃番)」は、上で登場した「モバイルポルタA70Lf」とは異なり、セットの架台が搭載可能重量5kgの「ポルタII」です。このポルタIIは、上級者の間でも人気のフリーストップ経緯台ですので、末永く活用できるでしょう。
「スコープテック アトラス80」と「タカハシ/スターベース STARBASE80」は、架台部分は同じ仕様であり(色は異なりますが)、鏡筒部分は、焦点距離が1000mm(F12.5)、800mm(F10)と異なります。どちらか迷う場合は、この動画(https://www.youtube.com/watch?v=e7CooSJ7K_s([PR] タカハシの天体望遠鏡「スターベース80」で天体観測をはじめよう!))が参考になるでしょう。
「セレストロン StarSenseExplorer LT80AZ」はLT70AZと同じく、望遠鏡が向いている位置が分かるナビゲーション機能が付いた特徴的なモデルです。
それぞれに特徴的な部分がありますので、自分に合ったモデルを選択しやすいのではないでしょうか。
単焦点モデルの「セレストロン トラベルスコープ80」「スカイウォッチャー STARQUEST80」は、双方ともお手軽電視観望でDSOの観察に活用されている事例がブログ等で発信されていますので、この目的のためなら問題なく活用できるでしょう。
■口径9cm
2026年7月3日に発売されたばかりのスカイエクスプローラーSE90AIIが唯一の製品です。架台セット品に加えて、鏡筒のみでも販売されていますので、すでに架台を持っている人や、使いたい架台がある人にも最適です。
口径8cmと比較して、わずか1cmの違いですが、集光力は約27%アップになります。F10とF値も大きめで、惑星等の高倍率観望に最適なスペックです。
■口径10c~12cm未満
「ビクセン A105Mii」は、アクロマート界の絶対王者だと思っています。ビクセン品質、Made in Japan、F値も大きく、高倍率用のアクロマート鏡としては最高品質なのではないでしょうか。
「セレストロン StarSenseExplorer DX102AZ」は、上でも登場しているLT70AZ、LT80AZと同じ、望遠鏡が向いている位置が分かるナビゲーション機能が付いたモデルです。LT70AZ、LT80AZと違う点があり、架台側にスマホを取り付けるようになっていて、その上アリガタ/アリミゾに対応しているので、鏡筒を交換してもナビゲーション機能を活用できます。
「ケンコー SE102」は、F値が小さいのでDSOの観望に向いています。口径もそこそこ大きいので、バローレンズを追加することで、高倍率での月、惑星の観望も可能です(ただし、①A105Miiのように元からF値の大きい鏡筒と比較すると像のシャープさの点では不利です)。
■口径12cm
「ケンコー SE120」は、残念ながら今年の春ごろに生産終了となってしまいましたが、SE102の大口径版で、DSO用として最適な1本です。
「ケンコー SE120L」は、笠井トレーディング シュワルツ120(Schwarz120、その名の通り黒色、約20年前に販売されていた模様)、ミードLX70-120(数年前まで販売されていた模様)、セレストロンomni XLT120(現在も販売中)と主力メーカーから販売されていた/されている製品と恐らく同じもので、Synta社からのOEM供給品と思われます。このように名称を変えて各社から販売されている鏡筒ですので、それなりに性能は安定していると考えていいのではないでしょうか。20年にわたり生産されているモデルなので、設計が古いのでは?とも考えられますが、アクロマートレンズの技術は100年以上前に完成しているので、そのような懸念はないでしょう。高倍率用としては、もっとF値が大きくてもいいのですが(収差を低減するという意味でも有利)、そうすると約1mある鏡筒がさらに長くなるので、運用上の制約が大きくなってしまいます。
僕はSE120、SE120L両方を持っていて、低倍率(DSO)用、高倍率(月、惑星)用で使い分けています。自分で使用しているぐらいですので、コスパも良くおススメの鏡筒です。
■口径15cm
スカイウォッチャー STARTRAVEL150(BK150750)/EVOSTAR150(BK15012)
上記の「ケンコー SE120、SE120L」と製造元が同じ兄弟機種、大口径バージョンです。市販されているアクロマートの中では、最大の口径のものと思われます。かつて(約20年前)、笠井トレーディングSchwarz150S、Schwarz150として販売されていたものと恐らく同じものです。
口径が大きい分、高解像度が期待できます。ただし、特に長焦点の方(EVOSTAR150(BK15012))はかなり巨大な鏡筒なので、架台や収納場所、運用面でそれなりの準備が必要です。
*12cm、15cmの大口径アクロマート望遠鏡については、こちらの記事もご覧ください。
(夏休みの自由研究 おわり)
【参考文献】
https://www.kenko-tokina.co.jp(株式会社ケンコー・トキナー)
https://takahashijapan.jp/(株式会社高橋製作所)
https://www.vixen.co.jp/(株式会社 ビクセン)
https://celestron.jp/(セレストロン日本公式ストア)
https://scopetech.co.jp/(株式会社スコープテック)
https://www.skywatcher.jp/(Sky-Watcher)
https://www.starbase.co.jp/(株式会社高橋製作所 スターベース東京)
https://neovch.blog.fc2.com/blog-entry-308.html(天文ななめ上:現在の望遠鏡ラインナップをまとめてみた ~アクロマート屈折編~)
https://www.youtube.com/watch?v=e7CooSJ7K_s([PR] タカハシの天体望遠鏡「スターベース80」で天体観測をはじめよう!)
https://www.youtube.com/watch?v=t6rtCc8jeCs&t=288s(アクロマートで星雲を撮る(あぷらなーと))
天文アマチュアのための屈折望遠鏡光学入門(吉田正太郎 著、誠文堂新光社、ISBN978-4-416-62150-9)
光学機器大全(吉田正太郎 著、誠文堂新光社、ISBN978-4-416-62320-6)
天体望遠鏡 徹底ガイドブック:光学系分析と実写テスト(西條善弘 著、誠文堂新光社、ISBN978-4-416-20812-0)
デジタル天体写真のための天体望遠鏡ガイド:望遠鏡選び・セッティング撮影方法がわかる(西條善弘 著、誠文堂新光社、ISBN978-4-416-21273-8)
