わたモテにドハマリしてるのでだだ語り その1 | オーシャンズロデオ

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 谷川ニコの漫画『私がモテないのはお前らが悪い!』に今めちゃくちゃハマってます。

 

 もともと初期の頃から読んでいて、もこっちかわいいしギャグ面白いしたまに泣けるしで好きな作品だったのですが、そこまでハマっているわけではありませんでした。アニメ版は知りません。

 思い立ったときにページをチェックして更新されていれば見る、というスタンスで付き合っていたので読み逃すことも多々ありました。

 が、修学旅行編あたりからじわじわと路線が変わってきました。一言で言えば「ぼっちあるある漫画」だったのが「青春群像劇漫画」に変わったという感じで今もうめちゃくちゃ面白い。シニカルなギャグの魅力はそのままに、丁寧な作りのシナリオやキャラクターの心理を表す細かい描写を楽しめる漫画に変わりました。それぞれのキャラクターの変化を追っていく長編漫画としても楽しむことができるようにすらなってます。

 それで今まで買っていなかった単行本を全巻買って読み返したんですがまあこれが面白い。なので延々と早口で語りたくなり、この記事を書くことにいたしました。紹介やレビューではなくここはこーであれはあーでと喋りたいだけなので、わたモテ読んだ人向けです。

 

 まずはもこっちの修学旅行での変化から。単行本8巻です。

  

 

 

 ターニングポイントとなったのは『喪69 モテないし班決めする』でした。

 冒頭でもこっちは「ぼっちにとって班決めはつらいから早退しよう」と考えます。

 ここで描かれているもこっちの行動の本質は『班決めを避けるための早退を選んだ』ことではなく、「勝手に決めてくれるだろう」とか「いてもいなくても同じだろう」という、ぼっちはぼっちらしく『やりすごそう』としていること。

 そのあと担任のデリカシーのなさで大恥をかいたりといつもの展開になり、さらに班長を押しつけられることになりますが……ここでもこっちは修学旅行をやりすごそうとするのではなく自ら楽しもうと決心します。

 これはあんたすごいことです。今まで青春に憧れながらも「あんなんくだらんわ…」と見下すことで心の均衡を保ったり、青春に近づくための努力はしてもその内容が浅ましいものばかりだったり始める前から諦めてしまったりしていたもこっちが、ついにそのぬるま湯から出て、私も他の人と楽しもう、と真面目に考えました。これはえらいことです。あのもこっちが。「少しだけ頑張ってみよう」なんて思うなんて。

 その決心を胸に班のメンバーに声をかけたところ全員取り付く島もなく、いやーろくなやついねえわ……とギャグ漫画としてのオチがついているので、「アクション起こしたけど全然ダメでした」といういつものギャグとしても読めますが、重要なのは今回のアクションがいつものかっこつけやウケ狙いではなく、他の人を誘ってみんなみたいに楽しもうという目的だったこと。そして、見つけてもらうのが前提の受動的なアクションではなく、自分から声をかけるという能動的なアクションだったこと。この日の結果こそ微妙でしたが、これはもこっちの革新的な第一歩でした。

 実はもこっちはこれ以前にも自分から『真面目に』状況を改善しようとしたことがあったんですが(『喪26 モテないし部活を作る』)、その時はあまりに無計画だったのもあり見事に失敗に終わって心折れてます。その失敗にもめげず、今回また、もこっちは勇気を出しました。

 地味に良いのは声をかける際に行動予定表を握りしめている描写。

 こういうさりげない心理描写が、わざとらしくなくていいんですよね。

 

 次の『喪70 モテないし1人で買い物する』で、もこっちはめげずに班行動の予定表をがんばって書きます。

 現状、メンバーのうち1人は連絡がとれず、1人は他の班の友達と一緒に行くからと言い、一人はイヤホンも外さずなんでもいいよ…と言っているような状況です。今までのもこっちなら「ぼっちはぼっちらしくしろってことか……」とふてくされてもう修学旅行休みますと言ってもおかしくないのに、しっかり書き上げて提出します。

 さらには修学旅行用の私服まで買いにいきます。もこっちがんばってる……

 

 しかし店(イオンモール?)にはもこっちの苦手とする『同じ学校の生徒たち』がたくさん。

 いづらくなったもこっちが退避場所として選んだのはモール内の映画館。

映画館に逃げ込んで「学生がいなくなるまで待とう」「自分以外いなくなればいいのに」と考えますが、映画の内容にビビり、そしていつのまにか自分以外誰も客が誰もいなくなっていることに気づいてその映画館から逃げ出します。

 そして、あれだけ邪魔に思っていた学生たちを発見し、安堵のため息をつく……

 ただ目で状況を読んでいくだけだと『学生を避けるために映画行ったのに怖くて逃げて学生発見してホッとしてるバカなもこっち』とも映りますが、もこっちの心情変化を考えていくとこれはかなりきつい。もこっちは今まで「バカなやつらと付き合うことに価値なし。1人のほうが気楽」と強がっていた節がありますが、そのメッキがついに剥がれてしまうのがこの回です。

 もこっちの「一人映画ができるんだからもう自分以外いらないのに」という独白で強調されているように、この回において映画館とは『一人でいることを選択した世界』の暗喩になっています。

 上映中の時間経過のコマを見てみると、

 『誰もいない客席』と、

 『非常口のアップ』が映し出されています。

 誰もいない客席はもちろん『映画館=1人の世界』を表すものであり、非常口はその『1人の世界』から抜け出すためのものとして描かれているのは明白。

 そしてもこっちはどうしたのかというと、

『1人の世界』を目の当たりにし、

 非常口に駆け込んだ、というお話になってます。

 それを意識したうえでもう一度読むと、「まもなく上映が始まります」というアナウンスもまた違った意味に捉えることができて非常に怖い。

 

 そして学生たちを見つけた後、学生たちにこっそり混じり、まるで自分もそのグループの一員であるかのように振る舞うこの3コマ。

 特に大ゴマというわけでもなくもこっちのモノローグも出ませんし雰囲気も明るいのであっさりしたシーンなんですが、このシーンには先ほどの1人の世界への恐怖で映画館を飛び出すシーンよりもさらに深くもこっちの渇望が表れていて、じっくり読むと泣きそうになります。地味ながらかなりの名シーン。

「上の階に駄菓子屋あるみたいよ」という台詞も本当にさりげないんですが効果的。次のコマで駄菓子屋に着いておりもこっちもいるので、階の移動にすらくっついていったことがわかり、もこっちの恐怖がどれだけのものなのかがわかるようになってます。

 

 タイトルの『一人で買い物する』というのもただ単に状況を表しただけの言葉に見えますが、(まあこれは深読み入ってるかもしれませんが)勇気を出して頑張る、ということを表したタイトルに思えます。

 現状を変えるための努力というのはしんどいものです。現状を変えたいと思っているということは今きつい状況だということであり、そんなきつい状況で努力するというのはとてもつらい。そのうえ努力しても結果的にまったく報われないかもしれません。実際もこっちも(他の同級生がグループで買い物に来ている中)たった一人で修学旅行用の服を買うことに耐えられなくなり、一時は映画館に逃げ込んでしまいました。

 が、逃げ込んだ先の世界はもっとしんどいことに気づき、非常口に駆け込んで、なんとか一着だけ服を買うことができました。

『一人で買い物する』のを、もこっちはやりとげたんです。

 

 その頃になるともこっちの精神状態も回復してきていつもの見下し癖が出現、それに対するオチで話が終わるので、そのギャグで後味すっきり読み終わることができます。そう、わたモテは確実に路線変更してはいますがギャグを捨てているわけではないので(むしろギャグはひょっとしたら増えてる)、シリアス分が増えながらもつらいだけの漫画にはなってないんですよね。そこも好きなところ。ただこの『喪70 一人で買い物する』はわたモテ全話の中でも屈指のつらさを誇る回かと思います。

 前回の喪69が決心の回なら、この喪70は確信の回といったところで、2話あわせてもこっちのいじらしいがんばりが描写された読み応えのある濃い回でした。

 

 さていよいよ修学旅行の開始。

 班のメンバーたちとホテルの部屋をともにしますが……

「生ゴミやうんこと同居してるほうがマシなレベル」のストレスに晒されます。

 

 そして『喪74 モテないし班行動する』にてついにメンバー2人と行動を開始するもこっちですが、乳首つまんで殴られたことによりヤンキーの吉田さんにビビりまくり。

 ただでさえ相手2人はこっちと仲良くなる気がない輩で、地味なほうは何もかも他力本願だしヤンキーの方は殴ってくるしで楽しい修学旅行とはほど遠い状況です。

 それでももこっちはしっかりと班長らしく2人を各所に連れて行き、頭の悪い謝罪の仕方でさらに雰囲気を悪くさせながらも(読者にはギャグとして映るので暗くないのがいい)、清水寺に到着。

 そこでまた吉田さんを怒らせます。

 そしてラストのページで金閣寺に到着。

 そこでも吉田さんを怒らせて話のオチがつくのですが、この回はもこっちにとって初めての「努力が報われた」瞬間だったのではないかと思います。

 席に入りづらかったり罰ゲームの対象にされたり(とはちょっと違いますが)とひたすら苦痛の時間だった『喪71』の移動電車。話しかけても誰も返事してくれなかった『喪72』のホテルの部屋。そういったつらい状況をそれでも逃げずに向かい合って、頑張って考えた班の行動予定表どおりに2人を案内し、そして初めて、「おーたけーなー」「おーすげーきれいだな」と、メンバーが楽しんでいる姿を見ることができました。

 もこっちの心情がモノローグで書かれていないのでこれは想像ですが、ここの嬉しさは相当なものだったと思います。だからこそ気持ちが軽くなって、フッと肩の力が抜けて、自然と軽口が出てしまったのではないかと。吉田さんに対しての失言はこの回で2回出てきますが、上に貼ったシーンのとおり、もこっちが失言したのはどちらも吉田さんがもこっちのプランに感嘆の声を上げてくれた直後なので、もこっちの心はここでかなり動いたものに思います。その意味では吉田さんはもこっちの救世主でした。

 

 その後の『喪76 モテないし頂上を目指す』の回では緊張も取れて、まだちょっとどもってはいますがオドオドすることなく案内を続けます。

 心なしか表情もほぐれてきました。

 が、ここでもこっちの考えてきたプランが微妙な結果に。

 もこっちは初期からもともと人を楽しませるのが好きというかエンターテイナー気質なところがあって、逆に言えば、人からガッカリされるのを嫌う性格でした。だから面白いことを言おう、度肝を抜いてやろう、かっこいいところを見せてやろう、と息巻いて、結果いらんことをして醜態を晒し、最後には引かれておしまい……というのがもこっちの負のスパイラル。黒木さんのすごいところを見せてやろうと焦る思いから相手が引くようなことをやらかしてしまうのが黒木智子という人物の特徴のひとつです。

 

 その後、もこっちが案内したのは稲荷山登山コース。

 休憩中の2人を急かして出発させた時点でいつもの楽しませ癖が顔を出してしまっていましたが、ここでもこの上から目線っぷり。『喪74』の班行動は班長としてきちんと引率しようというもこっちなりのいじらしい頑張りでしたが、この回のもこっちの動機は完全にいつもの黒木さんのソレになっちゃってます。

 

 とにかく頂上からの景色を見せてどうだすげーだろしたいだけのもこっちは、もう疲れている2人に対して見え見えの挑発までして山を登らせようとします。

 するとその挑発に乗ってくれたのが吉田さん。そしてそれをバカらしく思いながらも帰ることなく最後まで付き合ってくれたのが田村さんでした。

 

 今まで…それこそ1巻の時点からもこっちは様々な人に対してかっこつけや楽しませの動機から色んなアクションを起こしてきました。

バスケ漫画みたいな汗かいてる~とギャグを飛ばせば理解されず…

 自己紹介でボケても誰にも突っ込まれず(あとからネモが拾ってくれましたが)…

 ヒーロー気分でゴキブリを潰せばドン引きされて机を離される…… 

 と、いい反応を得られることがまったくありませんでした。

 

 しかしここで初めてもこっちのかっこつけに対する「いい反応」が得られることとなりました。吉田さんに正面から思惑通りの反応をもらえたのです。

 

 そして頂上まで登りきったとき、その眺めの美しさに2人は感嘆します。

 喪74では「がんばっていい修学旅行にしよう」という殊勝な気持ちだけで案内してそのがんばりが報われたもこっちですが、この喪76ではそういうがんばりではなく、元来の自分の自然な性格(いらんプライドからくるかっこつけ気質)を見せた上で報われています。吉田さんはある意味もこっちと同じくらいのバカなので真っ向から乗っかってくれて、田村さんはもこっちのバカさを理解し享受したうえで笑顔を見せてくれています。そのスタンスは修学旅行後も変わらず、吉田さんはもこっちのバカさに反応してくれる人となり、田村さんはもこっちのバカさを許容してくれる人となります。

 本当の意味で報われた……というか、『自然なもこっちを受け入れてくれる人』が現れた瞬間だったかもしれません。そして、実際に言葉に出すのはずっと先になりますが、高校の『友達』ができた瞬間であったように思います。

 

 

『喪77 モテないし二日目の夜を迎える』になると、もうすでにもこっちは修学旅行を楽しんでいます。

 吉田さんにどつかれながらも、『班行動する』の時のように終始オドオドはしておらず、外に出るシーンでは3人での行動を素直に楽しむ姿が。

 青春を謳歌していることを実感し笑顔になるもこっち!

 これまでのもこっちはベタな青春に本当は憧れているくせにそれが実現できないものだからすっぱい葡萄理論で青春をバカにしていましたが、ここではその青春を味わえてます。本当によかったねもこっち……

 しかし途中で出くわしたのは例の担任。

 この担任はデリカシーはガチでありませんが結果としてもこっちのためになる行動をしていて、『喪50 モテないし夕暮れの教室で一人佇む』では勘違いとはいえ「見つけてもらうのを待ってるだけではだめよ」と、もこっちに対して非常に的確なアドバイスを送っていたりもするのである意味ではもこっちの救世主なんですが、デリカシーはガチで無いので、自意識過剰なもこっちにとっては悪夢のような存在。

 ここでも田村さんたちに「黒木をよろしくね」と声をかけるなどします。

 この声かけの是非はともかく、プライドが高いもこっちにとってはあまりに恥ずかしすぎる状況。

 そしていたたまれなくなったもこっちは2人を残して部屋を出ます。

 一人になるために向かったのは、廊下の先の非常口。

 非常口といえばそう、『喪70 モテないし一人で買い物する』に登場したキーアイテム。

 このホテルの非常口があの映画館の非常口と同じ役割を持っています。それはもこっちの独白で「2人の顔を見てられない」とか「恥ずかしい」ではなく、「一人になる」という言葉が繰り返し使われていることからも明白です。

 非常口を通って一人の世界に戻ってきてしまったもこっちですが、

「このまま何事もなく終わってほしくもある」と考えながらも、「ほんの少し修学旅行ならではのワクワクドキドキがあってもいいな…」と考えを改めます。

 そしてすぐに非常口から中に戻って扉を閉めます。なんの未練もなく。

 まあバターンと強く閉めたのは未練あるなしとかじゃなくてイチャイチャしてるクソカップルへの当てつけだろうとは思いますが、ともかくもこっちは買い物のときとは違い、今回の非常口にはただ休みにきただけで、そこに閉じこもる気はもうない、というのがわかります。

 象徴としてキーアイテムを出すだけではなく、それに対する関わり方の変化を見せることで心のあり方が変わったことをさりげなく表現しているとても綺麗なシーンに思います。

 

 すぐに戻ってきたどころか、さらにもこっちは自分達でも味わえる青春イベントを模索するという積極的な行動にすら出ます。

 そしてたどり着いたのがエロ番組用のテレビカード。

 それを自腹切って買って、『ワクワクドキドキの夜』を3人で楽しもうとするんです。

 この回のもこっちの状況を追っていくと、「純粋に楽しめている」→「自分はぼっちなのだという事実に引き戻される」→「ぼっち行動を選択する」→「すぐに戻り、また楽しもうとする」という変化になっており、もこっちの願いとそれを実現するための行動が揺るぎないものになったということを示す回だとわかります。まあエロ番組カードなんていうドン引かれる可能性のあるものを自信満々で提供するあたりはみんなと楽しむための努力というよりは元来のいらん提供気質が出ただけという感じもしますが、それでもみんなと一緒にワクワクドキドキしたいという気持ちから行動を起こしたというのが重要なところ。起承転結でいうところの『転』がそこであり、その変化の前フリである『承』が一人で食事を取りにいくシーンという構造になってます。

 面白いのがギャグ漫画として見ると起承転結にそれぞれ当てはまるシーンがまったく違ってくるということ。青春漫画としては前述のとおり『承:一人を選ぶ』→『転:みんなのところに戻ろうとする』→『結:戻る』という振り分けになりますが、ギャグ漫画として見ると、『承:みんなでエロ番組を見よう!』『転:それ使用禁止だぞ』→『結:殴られるオチ』という振り分けに変わってきます。

 起承転結がはっきりしているのは物語としての基本ながらも非常に大切なところで、しかもそれが同じ話なのに青春漫画用とギャグ用とどちらでも成立するように作られているというとんでもない構造。それはこの回だけではなく『モテないし班決めする』や『モテないし一人で買い物する』や『モテないし班行動する』でもそうなってます。今後もそういう二重構造の話がたくさん出てきます。

 読む人や読む時によってどこが『転(物語の重要な変化部分)』だったのかがまったく違ってくる。なので同じ話でも読むたびに別の楽しさがある。別の楽しさに気づく。わたモテのそういう作りに自分は惚れてしまったのかもしれません。

 そしてその楽しさを後押しするのが回を跨いだ伏線。

 この回で出てきた非常口のように回を跨いで再登場するキーアイテムがたまにあります。『喪99 モテないし友達の友達』と、現在の最新話『喪124 モテないし友達の関係』の両方に登場する真子のトイレの蛇口とかがそうですが、前の話を読み直していて「あっこの要素ここにも出てきてたのか……」と発見しその意味を理解する楽しさがあります。

 さらにさらに、この記事ではもこっちのことを中心に語ってきたので触れませんでしたが、各所に田村さんやうっちー等を主人公としたストーリーも並行して展開しているので、どのキャラクターに注目して読むかという点でも違う魅力が出てきます。まさに群像劇。 

 ほんと何回も読み直したくなる漫画です。 

 

 この回の非常口の扱いのように、感情描写が常にさりげない漫画です。もこっちが頑張りを決心するシーンやその努力が報われるシーンも、基本的に淡々と進むコマ割りの中に自然な形でぽつんと存在しています。青春漫画として重要なシーンを大ゴマにしたりといった演出がほとんどないので、感情を動かす漫画にありがちな押しつけ感やわざとらしさがほぼありません。

 大ゴマはむしろギャグとして重要なシーンにふんだんに使われることが多いので、『前提としてギャグ漫画だけどゆっくり読んでいくと青春漫画としても読める』という計算された作りになってます。文学賞モノの漫画です。

 ゆえに堅苦しさがなく、というかもともとはもともとは完全なギャグ漫画でありその路線もバリバリ生きているので、『喪75 モテないしおみやげを買う』や『喪80 モテないし修学旅行最後の夜』のようにほぼギャグに振り切った回もガンガン入ってくるのが読みやすくて嬉しいところ!

 

 もこっちの修学旅行編は巻を跨いで9巻にも続きがあるので、次は9巻についてひたすら語ってみようと思います。いや~こんなにただただ語りたくなる漫画は下手すりゃ初めてだわ……