予備校時代の終わり? | 教育研究所ARCS - 独断的教育論 -

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教育現場のプロ3人衆による本音トーク

大学受験業界の超大手、代ゼミが校舎の約7割を閉鎖。こんなニュースが先週飛び込んできました。自分自身、高校生を教える塾で働いていることもあって、顛末と今後の展開には強く興味を持っています。


インターネットではいろいろな人が代ゼミ凋落の理由を書いていますね。中でも多いのは「少子化による生徒の減少」「不況の影響」というもの。これはどこの塾・予備校も条件は同じです。子供の数は減り続け、特に大学入試に関しては定員割れの学校が大量に生まれている現状ですから、全体としてみれば入試は易化しています。そして、ここ二十年の不況から、生徒の現役志向・安全志向が高まった結果、浪人生を大量に受け入れることを前提としたスタイルに陰りが出てきたというのです。実際に生徒達を教えていても、「現役」「国立」は半ば合い言葉のようになっていて、一昔前のように、「行きたいところに行くためには一浪・二浪は覚悟」という生徒は非常に少なくなっています。


それに加えて、予備校の授業スタイルが時代遅れになりつつあるという問題もあります。超人気講師がマイクを持って、大教室にすし詰めになった生徒に話をしていくスタイルは、生徒達が受け身になってしまい、ただノートを機械的に取るだけになってしまうという欠点があります。このような大教室型の授業の対極にあるのが、先生一人に対して生徒二人から三人で授業を行うという個別指導システムです。こちらは数字の面から見ても明らかに「面倒を見てもらえる」という安心感があります。予備校が持つ圧倒的な受験情報力には欠けますが、生徒に対する細やかなフォローがあり、人対人のふれあいがある。そんなイメージを持つかもしれません。
しかし、個別指導もよいことばかりではありません。問題を一言で言えば「先生の質」。これに尽きます。生徒が一人ならば授業はやりやすい。一般にそう思われるかもしれませんが、実は結構やりづらいのです。


生徒が「授業」から学べるものは二つあります。まずはあたりまえですが、「授業内容」ですね。微分の授業を受ければ、微分の問題の解き方を学べます。これは講師から生徒へと伝達されていくもの。


そしてもう一つは「他の生徒の様子」です。自分はできないけど、他の生徒はできている。あるいはその逆の状況に気付くことで、生徒は競争心を刺激されます。また、自分からはまったく生まれてこない発想を他の生徒が持っていた場合、それを自分の中に取り込むことが出来ます。活性化した授業においては、例えば講師一人に生徒が二十人のクラスは、講師が二十一人いるのと同じ効果をもたらすのです。実はこれは、「授業内容」よりも強い影響を生徒に与えることになります。しかし、個別指導には生徒と「同列の他者」がいません。ですから、個別指導において集団授業と同じ効果を上げようと思うならば、講師が「他の生徒」役もしてやらなければなりません。様々な考え方、解き方を生徒に見せ、刺激し、考えさせるためには膨大な学識と授業スキルを必要とするのです。


近代以前の世界においては、教育は「個別指導」でなされるものでした。貴族は子弟を学校に通わせず、専属の家庭教師を雇って教育させます。この歴史を考慮すれば、現代の個別指導流行りは近代マス教育以前の「古き良き」教育スタイルへの回帰を示しているように見えます。しかし、この二者には決定的な違いが存在します。それは「講師の質」です。貴族の専属家庭教師となったのは、学問の歴史に大なり小なり名を残すレベルの学者が多いのです。それは逆を言えば、一対一で効果的な学力をつけるためにはかなり高度な学力(この場合は知識だけではなく、思考力や議論の能力を含みますが)を必要とするということでしょう。


時代遅れの大人数授業からきめ細やかな個別指導へ。これはとても分かりやすい図式ですが、実態はそれほど簡単なものではありません。思い込みを排して、子供にフィットするスタイルの塾を選ぶことが必要になってきています。

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『夫婦のための子育て法』

…母親のための教育講演、父親のための教育講演に続く教育講演会第3弾!

今回の講演では「夫婦のあり方が子どもの成長に大きく響く」という理論をもとに史上初めて「夫婦のタイプ別教育法」を公開し皆様の子育てに貢献したいと考えています。
是非ご夫婦でご参加下さい。シングルマザーの方にも参考になりますのでふるってご参加下さい。

日時:2014年9月21日(日)
   午後2時~4時(1時30分開場)

場所:ザ・クレストホテル柏 クレストルーム
講演者:管野 淳一 他

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