「昨日の自分よりも成長し、目的を達成するための実践」

のひとつとして、図書から学んだことを実践していこう

 

 

本日は10月25日

理念と経営2026年10月号より
 

 

 TODAY'S
 
自信過剰なうぬぼれ屋か処世に長けた合理主義者か

豊臣秀長に出会うまで、なかなか主君に恵まれなかったのが藤堂高虎だ。そんな彼は最後、三十二万石の大名として生を終える。高虎が栄達したその理由は、彼の素直さと人を見る目にあった。

P78抜粋

 

師に学び、弟子を育てる!

―豊臣秀長の師弟関係― 第10陣

自分の価値を決めるのは、誰なのだろうか。

――藤堂高虎に学ぶ、評価される場所と成長する勇気

長年仕事をしていると、自分の得意なことや苦手なことが、ある程度分かってきます。

経験を重ねるほど、自分なりの仕事の進め方も身につきます。

しかし、それが新しい挑戦を妨げることもあるのではないでしょうか。

最近、伊勢型紙の職人たちと新しい商品づくりを進める中で、そんなことを考えています。

私は不動産の仕事を長く続けてきましたが、伝統工芸の商品開発や販売については、まだ学ぶことばかりです。

これまでの経験を生かせる部分もあれば、一から学び直さなければならない部分もあります。

そんな今、戦国武将・藤堂高虎の記事を読みました。

高虎は、豊臣秀長に仕えるまで何度も主君を変えた人物として知られています。

武勇に優れ、戦場で功績を挙げながらも、なかなか自分を評価してくれる主君に恵まれませんでした。

転機となったのが、豊臣秀長との出会いです。

秀長は高虎の能力を高く評価し、重要な役割を任せました。

しかし、興味深いのは、その後の育て方です。

戦場で槍を振るうことを得意としていた高虎に、鉄砲隊の指揮や兵站管理、算術など、それまでとは異なる仕事を任せたのです。

武勇を誇る人物にとっては、面白くない仕事だったかもしれません。

ところが高虎は、新しい仕事を前向きに受け止め、学び始めました。

やがて築城や水軍の指揮にも能力を発揮し、武将としての可能性を広げていきます。

私は、この話に二つの重要なことがあると思いました。

一つは、自分を評価してくれる人や環境との出会いが、人生を変えること。

もう一つは、評価された能力に満足せず、未知の分野を学び続けること。

高虎が武勇だけにこだわっていたら、その後の活躍は違ったものになっていたかもしれません。

これは現代の経営にも通じる話です。

会社では、営業が得意な人には営業を、技術が得意な人には技術の仕事を任せることが多いでしょう。

もちろん、それぞれの強みを生かすことは大切です。

しかし、その人の能力を現在の仕事だけで判断してしまえば、まだ発揮されていない可能性を見逃すことになります。

正しい評価とは、今できることを認めるだけでなく、これからできるようになることにも目を向けることではないでしょうか。

伊勢型紙の職人たちとの取り組みでも、同じことを考えています。

職人には、それぞれ得意な技法や表現があります。

その違いを尊重することはもちろんですが、これまで経験したことのない商品や用途にも挑戦できる環境をつくりたいと思っています。

一方で、私自身も企画や販売の役割だけにとどまらず、制作工程や素材の特性を理解する努力が必要です。

互いに新しいことを学びながら、それぞれの可能性を広げていく。

そんなチームが理想です。

そして、高虎の晩年の言葉にも考えさせられました。

国を治めるには、人を知ることが大切であり、その長所と短所を見極めたうえで、任せたら信じるべきだという考え方です。

経営者は、どうしても自分の判断を優先しがちです。

経験があるからこそ、相手の仕事に口を出したくなることもあります。

しかし、任せた仕事に細かく介入し続ければ、相手は自分で考えなくなるかもしれません。

信頼することと、何も確認しないことは違います。

目的や責任を共有し、必要な時には相談しながら、実行する方法は本人に任せる。

そのような関係が、人を育てるのだと思います。

ただ、高虎の生き方を単純に「評価されなければ転職すればよい」と受け取るのは違う気がします。

環境を変えるだけで成長できるわけではありません。

高虎は、自分を認めてくれる主君に出会った後、それまでの経験に安住せず、新しい能力を磨き続けました。

つまり、人を見る目と、学び続ける姿勢の両方が必要だったのでしょう。

私自身もこれからの10年をどう過ごすか考えています。

長年続けてきた不動産の仕事から、伊勢型紙の商品開発、さらには宿泊事業へ。

これまでの経験を生かしながらも、新しい分野では初心者として学ぶ必要があります。

年齢を重ねると、知らないことを認めるのが難しくなる場合もあります。

しかし、過去の経験だけでこれからの可能性を決めてしまうのは、もったいないことです。

自分の価値は、これまで何をしてきたかだけでは決まらない。これから何を学び、誰と何を生み出すかによっても変わっていく。

藤堂高虎の生き方から、そんなことを感じました。


今回のキーワード

適材適所:一人ひとりの能力や特性を理解し、それを生かせる役割を任せること。

学び直し:これまでの経験にとらわれず、新しい知識や技能を身につけること。

信頼と権限委譲:目的を共有したうえで、相手の判断と行動を尊重すること。

自社の哲学と照らして

今回、特に重なるのは「正しい評価」「多様性」「イノベーション」です。

正しい評価とは、目に見える実績だけでなく、その人の可能性や成長する姿勢も評価すること。

多様性とは、異なる能力や経験を持つ人たちが、それぞれの強みを生かしながら協力すること。

そしてイノベーションとは、新しい技術や商品を生み出すだけでなく、自分自身の役割や考え方を変えることでもあります。

経営者として、相手の可能性を見つけるだけでなく、その可能性が発揮できる環境をつくることを大切にしたいと思います。