「昨日の自分よりも成長し、目的を達成するための実践」
のひとつとして、図書から学んだことを実践していこう
本日は9月7日
理念と経営2026年9月号より
「特集1」
株式会社えんぷれあ
代表取締役
稲垣亘佑(いながきこうすけ)

仏壇リメイクがもたらす新たなる希望
父からは「継ぐな」と言われていた仏壇修理の事業。それでも、なんとか継続したいと検索した結果、画期的なサービスが生まれた。一つの突破口が開いたことで、社会課題の解決など意外な。広がりを見せている。
P20抜粋
株式会社えんぶれあ
代表取締役 稲垣亘佑氏
仏壇リメイクがもたらす新たなる希望
今回の記事は、単なる「伝統産業の再生」ではありません。
仏壇業界が縮小する中で、
「仏壇をどう売るか」ではなく、「仏壇に込められた想いをどう残すか」
と問い直したところから、新しい事業が生まれています。
そこからさらに、
職人の復職。
空き家対策。
障がい者支援。
終活。
相続。
墓じまい。
へと事業が広がっていく。
今回の事例で最も重要なのは、
一つの小さな顧客課題を深く掘った結果、その奥に複数の社会課題がつながっていた
という点だと思います。
ポイント① 衰退しているのは「需要」ではなく、従来の形かもしれない
仏壇産業はこの30年で大きく縮小しています。
核家族化。
住宅の洋式化。
マンション生活。
実家を離れて暮らす家族。
こうした変化を考えれば、大型仏壇の需要が減るのは当然です。
しかし、
亡くなった家族を思う気持ち。
手を合わせたいという気持ち。
家族の歴史を残したいという気持ち。
までなくなったのでしょうか。
おそらく違います。
つまり縮小したのは、
「仏壇という価値」ではなく、「大型仏壇という提供形態」
なのかもしれません。
ここを見誤ると、
「仏壇業界は衰退産業だから仕方がない」
となります。
しかし提供形態を変えれば、
価値そのものは残せる。
これは他の成熟産業にも通じる重要な視点です。
ポイント② 商品を小さくしたのではなく、「意味」を残した
「結壇」は、大きな仏壇を小さな仏壇へ作り直します。
一見すると、
大型商品を小型化したサービス
に見えます。
しかし本質は違うと思います。
お客様が残したかったものは、
木材でも金具でもありません。
そこにある、
家族との思い出。
亡くなった人との関係。
自分が手を合わせてきた時間。
です。
つまり、
仏壇そのものを保存するのではなく、仏壇が持っていた意味を保存している。
ここが、このサービスの強さです。
水平思考――「捨てるか残すか」の二択を壊した
従来、仏壇の処遇には大きく二つの選択肢しかありませんでした。
残す。
処分する。
しかし現代の住宅事情では、残したくても残せない。
一方で、処分すると罪悪感がある。
つまり顧客は、
「残したい」と「手放したい」の間で困っていた。
そこで生まれた第三の選択肢が、
「形を変えて残す」
です。
これは非常に典型的なイノベーションだと思います。
AかBかで悩んでいる顧客に、
Cをつくる。
商品開発で重要なのは、
新しい技術を使うことだけではありません。
顧客が諦めていた第三の選択肢をつくることも、イノベーションです。
ポイント③ 一つの商品から家族関係まで変えた
さらに面白いのが、
一つの仏壇から複数のミニ仏壇を作れることです。
従来は長男が仏壇を受け継ぐことが一般的でした。
しかし兄弟が実家を離れて暮らす時代では、
一人だけが継承する仕組みそのものが現代の家族構成と合わなくなっています。
そこで、
「仏壇を分ける」
という発想が出てくる。
これは単なる小型化ではなく、
家族の継承方法そのものを再設計している
とも考えられます。
「長男が継ぐ」から、
「家族みんなで想いを分けて持つ」へ。
社会構造の変化に、商品側を適応させています。
量子的に考える――仏壇を小さくすると、事業は大きくなった
今回の記事で最も面白い逆説はここです。
仏壇という商品は、
小さくなった。
しかし事業領域は、
大きくなった。
仏壇リメイク
↓
職人復職
↓
空き家問題
↓
遺品整理
↓
墓じまい
↓
相続
↓
終活
↓
障がい者支援
というように広がっています。
つまり、
商品を広げたから事業が広がったのではなく、一つの顧客課題を深く掘ったから事業が広がった。
これは非常に重要です。
事業拡大というと、
新商品を増やす。
別業界へ進出する。
店舗を増やす。
と考えます。
しかし、
一人の顧客が抱える問題を最後まで追いかけることでも、新しい市場は生まれる。
これは中小企業にとって非常に参考になる考え方です。
ポイント④ 社会課題は「遠く」にあるとは限らない
空き家問題。
職人不足。
高齢化。
終活。
障がい者就労。
いずれも大きな社会課題です。
しかし、稲垣氏は最初から、
「社会課題を解決する会社をつくろう」
としたわけではありません。
スタートは、
「仏壇をどうしたらいいか困っている人がいる」
という極めて小さな問題でした。
そこを解決すると、
空き家の問題につながった。
職人の雇用につながった。
家族関係につながった。
つまり、
社会課題とは巨大なテーマから探すものではなく、目の前の小さな不便の奥に隠れていることがある。
これは非常に重要な視点です。
ポイント⑤ 「継ぐな」と言われた事業を、形を変えて継いだ
父親からは、
「継ぐな」
と言われていた。
これは事業承継として興味深い話です。
おそらく父親は、
今までと同じ仏壇修理業では将来が厳しい。
だから息子には継がせたくない。
と考えていたのでしょう。
しかし息子は、
その事業をそのまま継いだわけではありません。
父親の技術。
職人。
仏壇文化。
これらを残しながら、
事業モデルだけを変えた。
つまり、
会社を継承したのではなく、
会社が持っていた価値を継承した。
これは以前取り上げた「不易流行」にも近い考え方です。
結論――衰退産業の中にも「消えていない需要」がある
今回の記事から最も学びたいのは、
市場が縮小している時に、
「この商品はもう売れない」だけで終わらせないこと
だと思います。
なぜ昔は必要だったのか。
顧客は本当は何を求めていたのか。
その価値は今も残っているのか。
もし残っているなら、
現代に合う形へ変えられないか。
仏壇の場合、
「大きな仏壇を持つ」
という行為は減った。
しかし、
「大切な人に手を合わせたい」
という需要は残っていた。
だから新しい市場が生まれた。
衰退産業だから撤退するのではなく、
「何が衰退して、何が残っているのか」を分けて考える。
これが今回の核心だと思います。
自社への活用方法
これは自社にもかなり重要な考え方です。
特に不動産と相続は近い領域です。
例えば空き家を所有している人が、
「売りたいのに売れない」
理由は価格だけとは限りません。
仏壇。
遺品。
家族の思い出。
相続人間の感情。
畑や墓。
近所との関係。
こうした非経済的な理由が意思決定を止めていることがあります。
そう考えると、
単純に、
「物件を売る」
だけではなく、
「手放せない理由を一緒に解決する」
ところまでサービスを広げる余地があります。
不用品整理。
仏壇。
墓。
相続。
家財処分。
土地活用。
売却。
これらを一つの流れとして設計できれば、
不動産会社というより、
「人生の整理を支援する会社」
へ変わる可能性があります。
これは、今後増える空き家・高齢者・相続問題ともかなり相性が良いと思います。
自社の哲学と照らし合わせる
今回の記事は、自社の哲学の中では特に、
イノベーション・当事者意識・多様性
につながります。
イノベーション
新技術を開発したわけではありません。
既存の職人技を使って、
「仏壇を小さくする」
という組み合わせを変えた。
これも立派なイノベーションです。
当事者意識
「業界が縮小しているから仕方ない」
ではなく、
「何とか残す方法はないか」
と自分で考えた。
ここから事業が始まっています。
多様性
従来の、
「長男が仏壇を継ぐ」
という一つの形だけではなく、
兄弟それぞれが持つ。
写真立てにする。
供養して処分する。
複数の選択肢を用意する。
現代の家族の多様化に合わせています。
そしてもう一つ、自社の「仕掛け人」という考え方にも非常に近い。
目の前の問題を一つ解決したら、その先に別の問題が見える。
その問題同士をつないで、新しい仕組みをつくる。
これこそ仕掛け人の仕事だと思います。
今回の一言
温故創新(おんこそうしん)
「温故知新」を踏まえた言葉で、
古いものの価値を理解し、それを現代に合う新しい形へ創り直す
という意味で捉えたいと思います。
今回の事例は、
古いものを捨てたわけではありません。
そのまま残したわけでもありません。
意味を残し、形を変えた。
仏壇を守るのではなく、
手を合わせる文化を守る。
職人の仕事を守るのではなく、
職人の技術が必要とされる場所をつくる。
伝統とは、昔と同じ形を残すことではない。
時代に合わせて形を変えながら、本質を未来へ渡すこと。
そこに、衰退産業から新しい市場を生み出すヒントがあると思います。
#温故創新 #事業再定義 #社会課題解決