「昨日の自分よりも成長し、目的を達成するための実践」
のひとつとして、図書から学んだことを実践していこう
本日8月14日
理念と経営2026年8月号より

解体業は未来をつくるヒーロー
宗重商店は住宅やビルの解体業者として八七年の歴史を持つ。三代目の宗守重泰社長は解体業のサービス業化を図り、事業領域も不要品のリユースやリサイクルなどに広げ、地域の問題を解決する企業へと進化させてきた。
P42抜粋
ポイント
最大のポイントは、宗守重泰社長が解体技術そのものではなく、「解体業とは何か」を変えたことです。
宗重商店は、廃棄物の不適正処理問題によって約4億円もの負の資産を抱え、事業清算さえ視野に入る危機に直面しました。そこで家業に入った宗守社長が持ち込んだのが、デパート勤務で身につけた「サービス業」という異業種の発想でした。
解体業だから、
「技術さえあればいい」
「職人だから無愛想でもいい」
「汚れる仕事だから現場もそれなりでいい」
とは考えなかった。
挨拶、服装、ヘルメット、言葉遣い、近隣住民への説明、現場の清掃まで変えていきました。
結果として、これまで建設会社などからの下請けが中心だった仕事に、施主から直接依頼が来るようになった。
つまり、サービス向上が単なるイメージアップではなく、商流そのものを変えたわけです。
水平思考で見ると
ここがこの事例で最も学ぶべきところでしょう。
宗守社長は、
「どうすれば他社より上手に解体できるか」
だけを考えなかった。
むしろ、
「デパートなら、お客様にどう接するだろう?」
という、まったく違う業界の常識を解体業へ持ち込みました。
これは典型的な水平思考です。
そして興味深いのは、イノベーションに高度な技術を必要としていないことです。
挨拶する。
制服を着る。
ヘルメットをかぶる。
近隣へ説明する。
ゴミを残さない。
一つひとつは誰でもできることです。
しかし、業界の誰も本気でやっていなければ、それ自体がイノベーションになる。
ここは非常に重要だと思います。
量子的に考える ―「壊す」と「つくる」は同時に存在する
さらに一段深く考えると、宗重商店は「解体」という言葉の意味そのものを反転させています。
普通なら、
解体=破壊
です。
しかし、
古い建物を壊す
→ 土地が空く
→ 新しい建物ができる
→ 街が更新される
と考えれば、
解体=未来をつくる最初の工程
になります。
だから宗守社長のいう「解体業は未来をつくるヒーロー」という言葉には、単なるキャッチコピー以上の意味があります。
「壊す会社」と「つくる会社」は対立しているようで、実は同時に成立する。
さらに創業時に行っていた「生かし解体」も、現在のリユース・リサイクルという考え方から見ると、非常に現代的です。
過去へ戻ったように見えて、実は未来へ進んでいる。
ここにも面白さがあります。
結論
この会社の本当の強さは、多角化そのものではないと思います。
「自分たちは何屋なのか」を固定しなかったことです。
解体屋
↓
サービス業
↓
環境・リサイクル企業
↓
地域課題を解決する会社
と、自社の存在意義を上位概念へ引き上げています。
だから不要品回収などの新しい事業へも自然につながる。
「解体会社がなぜそんなことをするのか」ではなく、
「地域の困りごとを解決する会社なら、やって当然」
になるわけです。
事業多角化を考える際の非常に重要なヒントです。
自社への活用方法
宗重商店から自社へ持ち帰りたいのは、私は次の3点だと思います。
① 業種ではなく「解決している問題」で自社を定義する
「賃貸管理会社だからここまで」と決めてしまえば、事業領域は広がりません。
「住まい」「地域」「空き家」「外国人」「文化」「情報発信」など、自社が持っている能力を「何の問題を解決できるのか」で再整理すると、新しい事業が見えてきます。
② 当たり前の徹底もイノベーションになる
AIや新技術だけがイノベーションではありません。
問い合わせへの返信、説明の分かりやすさ、現場の清潔さ、写真、SNS、契約書、退去対応など、古い業界ほど「普通のことを非常に高い水準で行う」だけで差別化できます。
これは不動産・賃貸業でも同じでしょう。
③ 評価基準を言語化する
私はここを高く評価します。
宗重商店は理念を掲げるだけでなく、人事評価基準を社員手帳に明記しました。
つまり、
理念 → 行動規範 → 評価
までつながっています。
理念を額に飾るのではなく、社員が「何をすれば評価されるのか」まで落とし込む。
これは組織を大きくするほど重要になります。
自社の哲学と照らし合わせる
宗重商店の考え方は、自社が重視する「イノベーション・当事者意識・正しい評価・多様性・シンプル」とかなり重なります。
特に「正しい評価」との一致が強い。
宗守社長の、
「評価は恣意的ではなく、不動の価値観による」
という考え方は重要です。
社長に気に入られた人が評価されるのではなく、会社が何を大切にしているのかを明確にし、それに基づいて評価する。
そしてもう一つは**「仕掛け人」**という考え方です。
解体業界そのものが変わるのを待つのではなく、自分たちから「解体業はサービス業である」と仕掛けた。
私はここに宗重商店の本質があると思います。
環境が変わったから自分たちも変わったのではない。
自分たちが先に変わることで、周囲からの見られ方まで変えてしまった。
これは自社にも取り入れる価値があります。
今回の四字熟語
温故知新(おんこちしん)
故きを温ねて新しきを知る。
今回の宗重商店には、この言葉がよく合います。
創業時の「生かし解体」は、柱や梁を捨てず次の建物へ生かす仕事でした。それが時代の変化によって廃れながら、現代ではリユース・リサイクルという新しい価値として再び意味を持っています。
新しいものは、必ずしもゼロから生み出す必要はない。
自社の歴史、過去の経験、昔は当たり前だった仕事の中に、次の事業の種が眠っていることがあります。
宗重商店の事例から自社へ持ち帰るなら、
「新しいことを探す前に、今まで自分たちがやってきたことを